焦点 軍隊慰安婦訴訟 日本政府に賠償命じる歴史的判決

週刊『前進』04頁(3178号03面04)(2021/01/18)


焦点
 軍隊慰安婦訴訟
 日本政府に賠償命じる歴史的判決


 日本軍軍隊慰安婦とされた被害者とその遺族ら12人が日本政府を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、韓国のソウル中央地裁は1月8日、原告の訴え通り1億㌆(約950万円)の慰謝料を支払うよう日本政府に命じた。軍隊慰安婦被害者に対する日本政府の損害賠償責任を初めて認めたものであり、元徴用工への賠償を日本企業に命じた2018年10月の大法院判決に続く歴史的判決だ。
 決定的なのは、国際法上の慣習として「主権国家の行為を他国が司法判断の対象とすることはできない」とされる「主権免除」論を退けたことだ。すなわち判決は、日本軍軍隊慰安婦制度は「日本帝国によって計画的かつ組織的に広範囲に行われた反人道的犯罪行為であり、国際強行規範〔=国際法上いかなる逸脱も許されない規範〕に違反したもので……国家免除(主権免除)を適用することはできない」と断じたのだ。
 「主権免除」を盾に被害者の訴えを踏みにじってきた日本政府は、今回の判決に衝撃を受けつつ居丈高にも「判決は受け入れられない」などと居直りを決め込んでいる。だが軍隊慰安婦制度が、日本政府が法的責任を負うべき「反人道的犯罪行為」であることはすでに国連人権委員会などでも認められており、ナチスの戦争犯罪についてドイツ側の「主権免除」を否定したイタリア憲法裁判所の例(14年)もあるように、今回のソウル中央地裁の司法判断は法論理的にもまったく正当である。

史上類例なき国家犯罪

 かつて日帝は、1931年9・18柳条湖事件に始まる「満州事変」以来足掛け15年にわたる中国侵略戦争およびアジア太平洋戦争の過程で、各地に大量の日本軍慰安所を設置し、朝鮮をはじめ支配下に置いた地域で若い女性(その大部分は十代の少女)を暴力や甘言を用いて狩り集め、1日数十人もの日本軍兵士の性的はけ口とした。慰安所は沖縄、台湾、アジア・太平洋全域に及び、軍のほかに外務省、内務省、朝鮮総督府などがその管理・統制にあたった。監禁された女性たちは十分な食事も与えられず、日常的に暴行を受け、日本軍の敗退と同時に置き去りにされるかまたは殺された。
 帝国主義の侵略戦争で真っ先に、最も残忍なやり方で蹂躙(じゅうりん)されるのは女性の尊厳と命である。日本軍軍隊慰安婦制度はそうした「戦時性暴力」の最たるものであるばかりでなく、天皇制国家による朝鮮民族の「浄化と抹殺」を意図したものであり、他の帝国主義軍隊のもとでも例を見ない悪逆非道の国家犯罪だ。

ベルリン「少女像」守る

 謝罪も賠償も拒否し、これらの事実そのものを歴史から抹消しようとする日帝・菅政権を断じて許すことはできない。
 だが重要なことは、すでに日本軍軍隊慰安婦の事実は全世界に知れ渡り、それを消し去ろうとする日帝や極右勢力の策動に対して世界中の労働者民衆が激しく抗議し闘っていることだ。ドイツ・ベルリンのミッテ区に設置された「平和の少女像」は、日本政府の卑劣なロビー活動の影響で区当局による撤去命令が出されたが、韓独民衆の抗議闘争で命令は撤回され、昨年12月には「永久設置」の決議が区議会で可決された。追い詰められているのは日帝の方だ。
 日本政府はただちに被害者に謝罪・賠償しろ! この声を日本と世界の人民の間に大きく広げ、改憲・戦争を狙う菅を打倒しよう。
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