「デジタル化」その正体(10) SNSで抗議デモが拡大 資本主義の没落と労働者の決起は不可避だ
週刊『前進』04頁(3178号02面05)(2021/01/18)
「デジタル化」その正体(10)
SNSで抗議デモが拡大
資本主義の没落と労働者の決起は不可避だ
フランスで昨年11月28日、議会で審議されている治安関連法案に対する抗議デモが闘われ、全国で約50万人が参加した。デモ隊は警官隊と衝突し46人が逮捕された。フランス政府は法案を一部修正したが、デモは今も続いている。
抗議が拡大している背景には、同月25日に白人警官3人が黒人に人種差別的な言葉を浴びせ、殴る様子をとらえた映像がSNSで拡散されたことがある。
大恐慌情勢の中で階級対立が極限化
SNSは確かに資本の金もうけのために存在するサービスだ。しかし資本の欲求の際限ない拡大によって今や世界の半数以上の人民がスマートフォンやSNSを活用している(昨年時点で世界人口は約78億人、スマートフォンユーザー数は約51億人、SNSユーザー数は約40億人)。こうした状況の中、「SNSを使った抗議活動」がここ数年で急拡大しているのだ(図参照)。逆にトランプなど支配階級もSNSを活用しており、今やSNSは一つの「戦場」となっている。もちろん抗議の拡大は単にSNSが要因というわけではなく、大恐慌情勢の中での国家・資本に対する階級的な怒りの爆発であり、何よりその中心に闘う労働組合の存在があるからだ。
またBLM運動などではデモ隊がSNSを使って、警官隊がどこに多く配置されているか、どこが安全なエリアかを情報共有している。警官の側もSNSを監視しているが、デモ隊の方が圧倒的に早い対応ができている。
新自由主義に対し青年の怒りが爆発
世界中で拡大する抗議デモの中心には、新自由主義の下で非正規・貧困を強制されてきた青年が立っている。イギリスでは昨年夏、学生による「くたばれアルゴリズム」というスローガンの運動が行われた。大学入試の代わりにAI・アルゴリズムによる成績予測評価が取り入れられたが、マイノリティーや労働者階級に不利な評価を下すことがわかり、怒りが爆発したのだ。AI・アルゴリズムは社会に存在する差別をそのまま反映し、不平等を固定化するシステムだ。例えば借金などによってクレジット(信用)スコアが低いものは銀行口座やクレジットカードが作れない。そして近年では、企業がクレジットスコアの低いものを雇わないようにしているという。まさに「貧困のループ」である。解雇や貧困の強制は殺人である。アルゴリズムは人生そのものを何のためらいもなく奪うのだ(まさに資本の本質そのものだ)。アルゴリズムで使われる数学(微積、線形代数、確率統計など)は自然科学だが、それを経済に適用しようというのが今の新自由主義である。つまり人間社会に対する自然科学の適用であり、データの背後にいる人間をモノのように扱うのがアルゴリズムだ。だからこそ「くたばれアルゴリズム」のスローガンは、青年世代の「人間らしく生きさせろ」という根源的要求に他ならない。
デジタル化粉砕し資本主義打倒を!
昨年の世界に流れた情報データ量は約59ゼタ(10の21乗)バイトと言われている。世界中に存在する砂浜の砂と同数とのことだ。これらは我々の生活に深く浸透しており、それを解析したいわゆる「ビッグデータ経済」が到来している。しかしこれまで見たように、ビッグデータは「貧しい者や虐げられている者を罰し、豊かな者をより豊かにする」ものでしかない。コロナ情勢との相乗効果で資本主義が完全に行き詰まる中、菅政権は改憲・戦争と「デジタル化」に突き進んでいる。それ自体が資本主義の破綻をより一層進めるものでしかないが、重要なのは労働者階級は必ず立ち上がるということだ。SNSを使った抗議の拡大は、「資本主義の墓掘り人」たる労働者階級が、資本の生み出した「武器」をとって闘っている一例に他ならない。
今こそ階級的労働運動を甦らせ、「デジタル化」を粉砕し資本主義を終わらせよう!
(シリーズ終わり)