焦点 CSIS報告書 日米安保の質的転換・強化を要求
週刊『前進』04頁(3175号03面04)(2020/12/21)
焦点
CSIS報告書
日米安保の質的転換・強化を要求
11月のアメリカ大統領選でトランプが打倒され、バイデン新政権への移行準備が進む中、歴代米政権の軍事・外交政策に大きな影響を与えてきた最有力シンクタンクの一つである「CSIS(戦略国際問題研究所)」が、日米同盟に関連する二つの重要なレポートを立て続けに発表した。
辺野古は「実現困難」
その一つは、CSIS国際安全保障プログラム上級顧問のマーク・カンチアンが11月に出した報告書で、沖縄・名護市辺野古の新基地建設に関して「完成する可能性が低そうだ」と論じ、米軍再編計画全体についても「地域政治や地域の緊張、大規模な建設事業に伴う問題がある現実世界で実行することは困難」と述べた。すでに辺野古新基地計画は、不屈に継続される頑強な反対闘争に阻まれ、「マヨネーズ状」と呼ばれる海底の軟弱地盤も見つかり、完全な破綻に直面。加えて中国との衝突を想定して軍事力の再編・強化を急ぐ米軍には、辺野古の完成を待っている余裕もない。
今や米軍は、破綻した辺野古に代わる戦略転換を迫られているのだ。それを象徴するように、11月24日、米空軍嘉手納基地で「海兵航空嘉手納連絡隊」の新施設と格納庫を披露する式典が行われた。戦闘機F35Bのインド太平洋地域への展開を想定し、嘉手納基地を拠点に陸海空軍との連携を強化するという。普天間基地や他の海兵隊施設との一体運用も進めると見られ、沖縄全域で海兵隊の訓練が激化することは不可避だ。
「対等な日米同盟を」
今一つは、リチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョセフ・ナイ元国防次官補らがまとめた日米同盟についての報告書である。2000年、07年、12年、18年に続く5回目のレポートで、1995年のナイによる「東アジア戦略報告」も含めれば、1990年代以来のアメリカの対日政策および日米同盟・日米安保戦略の基本的内容を形成してきたものだ。第5次アーミテージ・ナイレポートの特徴は、第4次レポートでも強調した「中国の台頭」という現実を念頭に、「日米はこれまで以上に双方を必要としている」として「対等な日米同盟」への転換を要求していることだ。日米安保は「相互運用」から進んで「相互依存」のレベルまで高めるよう提言し、さらにアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国でつくる機密情報共有の枠組みである「ファイブ・アイズ」に日本を加えることを強く求めた。安倍前政権が15年に強行した、集団的自衛権行使も含めた自衛隊の武力行使を可能とする安保関連法についても、アーミテージは「日米協力の障害はなくなり、違憲の恐れはなく連携できる」とコメントした。
彼らの言う「対等な日米同盟」とは、これまで米軍が担ってきたあらゆる軍事行動を自衛隊が肩代わりし、あるいは「違憲の恐れ」など意に介さず米軍と並んで最前線で血を流して戦う、そのような「血の同盟」への日米安保の転換を要求するものだ。菅政権が狙う「敵基地攻撃能力」の保有は、このような日米安保の転換と改憲の先取りにほかならない。
米中対立と軍事的緊張の高まりの中、米軍・自衛隊の一体運用が進み、訓練の激化による基地周辺住民の被害も深刻化している。沖縄をはじめ基地被害に抗議して闘う住民と連帯し、改憲・戦争阻止の闘いを全国で押し広げよう。