「デジタル」その正体(9) 巨額利権 国家資金に群がる資本と政治家
「デジタル」その正体(9)
巨額利権
国家資金に群がる資本と政治家
菅政権はデジタル庁を創設し1兆円規模のデジタル化予算を組もうとしている。その全てが巨大な「金のなる木」だ。労働者人民の命にかかわるコロナ感染対策と社会保障に総力を注ぐべき重大時に、菅とその取り巻きはデジタル化にかこつけて途方もない巨利をわが物とすることをもくろんでいる。
デジタル化だけで1兆円もの予算が
菅は12月4日、「成長の源泉はグリーン(環境投資)とデジタルだ」と言い切って、「脱炭素」の研究・開発支援基金に2兆円、官民のデジタル化促進に1兆円規模を確保すると表明した。
その額は巨大すぎて実感できるレベルではない。しかし全てが労働者人民のなけなしの賃金・収入から搾り取った税金だ。その税金を「温暖化ガスゼロ化だ、デジタルだ」と騒いで注ぎ込み、新たな巨大利権としようとしている。
菅は人々が生きていく上で必要な医療や社会保障に金を使おうとしない。防衛費を拡大し東京五輪の延期費用は出す一方、児童手当縮小―共働き世帯の年収基準底上げ、低所得高齢者の医療負担増、生活保護費の削減、公的病院の統廃合・「経営効率化」をあくまで迫る。すべては金であり収奪の強化だ。菅は4日、冷酷にも「多くの人が少しずつでも負担して安心安全の社会保障制度を作る」と言い放った。どこが「安心安全」なのか。自らの私腹は肥やしても人の命のために使う金はないということだ。
菅政権は資本家階級のための政権だ。デジタル化利権は野党も含めた政治家と資本、御用学者やマスコミ幹部、御用組合幹部にもわたり、労働者支配の強化のために使われる。この一点でも許してはならない。
デジタル庁創設で巨大な「情報利権」
すでに省庁のデジタル化予算は年間8千億円。さらに1兆円規模に膨れあがる金を、菅が直轄するデジタル庁が握ることになる。
各省の人事・給与管理や補助金申請などのシステムの所管はデジタル庁に移る。出入国管理システムや財務省の予算、国税管理も集約。自治体のシステム統一を進め、マイナンバーカード発行や住民基本台帳のシステム運営を担う地方公共団体情報システム機構(J―LIS)を独立行政法人化してデジタル庁が監督できるようにする。デジタル庁は省への格上げまで言われる。マイナンバーによる全住民情報の一元監理、AI(人工知能)監視システムで、戦前の内務省以上に強大な権力機関になろうとしている。
すでに来年度予算概算要求で、文部科学省は教科書のデジタル化に約50億円を計上。厚生労働省はマイナンバーカードを健康保険証として使える医療機関を増やすために、導入に必要なシステム改修を行う病院への補助金を倍増。さらに都市住民の全データを国と資本が共有する国家戦略特区・スマートシティに巨額の補助金を出す。これら全てが利権となる。
そして巨大な「情報利権」が生まれる。デジタル庁は定員500人超のうち100〜150人を民間出身の技術者や管理者で構成。国家公務員一般職より年収を高くし、デジタル庁と自治体、民間企業を行き来する「リボルビング・ドア(回転扉)」の体制を構築。職員は重大な情報を握って異動を繰り返す。こうして官民の癒着は限度を超え膨大な金と情報利権の山となる。民営化の新たな段階だ。全てが企業と政治家・取り巻きに流れ込むことになる。
名を連ねうごめく竹中と甘利、電通
デジタル庁の報道には、広告代理店・電通出身のデジタル改革相・平井卓也と人材派遣パソナグループ会長の竹中平蔵、自民党税制調査会長でデジタル社会推進本部座長の甘利明が頻繁に登場する。
竹中は安倍の産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議で利益誘導を行い、コロナの持続化給付金事業でも電通のトンネル法人に関係して多くの業務をパソナに受注させた。「感染防止と経済回復のためにデジタル庁を」と主張した意図は露骨だ。甘利は2016年、金銭授受問題で経済再生相を辞任し、後にアベノミクスの司令塔を務めた汚職まみれの人物である。電通はマイナポイント事業でも140億円が流れ込む仕組みを作り、6月の中間連結決算で2年ぶりの黒字を達成。官公庁・団体の売上高を前年比873億1400万円も伸ばした。こうした利権構造の頂点に菅がいるのだ。
そして許しがたいことに、連合は11月、消費税の減税を否定し、マイナンバーの全預貯金口座とのひも付け、将来的な消費税増税まで求めた。まさに資本主義の危機下で労働者を国と資本に差し出す御用組合であり、国と資本に買収された姿そのものだ。
しかし労働者は黙っていない。医療労働者を先頭に懸命のストライキ決起が続いている。限りない「停滞と腐朽」(レーニン『帝国主義論』)を深める菅政権と資本、御用組合幹部をぶっ飛ばす闘いを労働現場からつくりだそう。
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全てが利権
・省庁システム予算だけで年間8千億円
・全病院・学校・自治体の資材経費を補助
・情報持つ職員の行政・企業間異動可能に