焦点 巨大経済圏RCEP 侵略激化させ世界再分割戦を加速

週刊『前進』04頁(3173号03面03)(2020/12/07)


焦点
 巨大経済圏RCEP
 侵略激化させ世界再分割戦を加速


 11月15日、日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の計15カ国が「地域的な包括的経済連携(RCEP=アールセップ)」に合意し、協定に署名した。関税削減・撤廃や統一的なルールにより自由貿易を推進する。日本にとって貿易額が1位の中国、3位の韓国(2位は米国)が含まれる初の経済連携協定(EPA)だ。参加国全体での関税撤廃率は品目ベースで91%だ。国内総生産(GDP)と人口がそれぞれ合計で世界の約3割を占める最大級の経済圏となる。環太平洋経済連携協定(TPP11)や欧州連合(EU)を上回る。

コロナショックに対処

 日帝はTPP11に続いて米帝抜きの経済圏づくりを進めている。そうせざるをえないのはRCEPに中国が参加しているからだ。中国、韓国を抜きにして日本経済は成り立たない。日本は中国に対して巨大市場の一層の開放を求めつつも、中国の経済力・金融力・技術力・軍事力に脅威を感じている。中国はTPP11にも参加すると表明している。
 RCEPの合意が急がれたのは、日本などでコロナショックでサプライチェーン(部品供給網)が切れ、国内に閉じこもり、収縮した経済から脱却するためである。日本は中国を牽制(けんせい)するためにインドの交渉復帰を促したが、失敗。見切り発車した。

中国の影響力が増大

 交渉は8年続き、秘密に行われた。各国支配者と資本の利害がむきだしの協議内容だったからだ。内容が漏れ、労働者人民の怒りが爆発するのを恐れたのだ。
 RCEPの交渉は2012年に中国の提唱によって始まった。中国はRCEPを新たな輸出入先の開拓とサプライチェーンの構築の足掛かりにしようとしてきた。近年は米帝トランプによる中国製品に対する関税の引き上げ、対中経済制裁、対中包囲網によって、米国や先進諸国の市場から締め出されつつあるため、RCEPを一層重要視するようになった。
 一方インドは最初からRCEPの交渉に参加していたが、2019年11月に離脱し、そのまま最終的に合意・署名を見送った。インドも巨大国家・巨大市場だが、まだまだ開発途上で、中国製品のさらなる流入が国内市場に致命的な打撃となることを恐れた。またRCEP交渉に参加していない米国に配慮せざるをえなかった。

環境・労働保護規定なし

 RCEPは、TPP11よりも関税の自由化率が低く、守るべきルールも少ない。日本からの輸入品の関税撤廃率は、中国が86%、韓国が83%だ。しかもこれらを達成するまで10〜20年かかる。国際的なレベルで自由貿易協定(FTA)といえるのは関税撤廃率が90%を超える場合だ。TPP11はそれが99%だ。RCEPにはTPP11に盛り込まれた資本の国家に対する紛争解決(ISDS)条項もない。TPP11に規定された申し訳程度の環境保護や労働者保護の規定もない。
 結局、RCEPは帝国主義・大国とその資本にとってやりたい放題の侵略と勢力圏構築のための協定だ。
 日帝は米中との協調と対抗のはざまで矛盾と危機を深め、侵略と戦争で突破しようとしている。アジア人民と連帯し、日帝国家・資本と対決し、打倒しよう。
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