焦点 労働法制解体攻撃 資本が先行し、規制を全面破壊

週刊『前進』04頁(3172号03面04)(2020/11/30)


焦点
 労働法制解体攻撃
 資本が先行し、規制を全面破壊


 菅政権と資本は労働法制の解体に突進している。その柱は、コロナ下の「解雇自由」・総非正規職化であり、低賃金・長時間労働を強いる雇用・労働時間規制の全面的破壊である。
 9月の完全失業者は前年同月比42万人増の210万人。「隠れ失業者」を加えれば500万人に迫る。膨大な数の休業者を含め社会全体の困窮はいよいよ深刻だ。
 すでに資本による非正規職大量雇い止めと正規職の一時金・基本給の大幅削減、退職・出向強要が横行している。労働者を犠牲にして延命し、利潤と株主への配当を確保しようとしているのだ。
 もはや資本主義のもとで労働者は生きていけない。労働組合の絶対反対の闘いが待ったなしだ。

「労働移動の円滑化」?

 10月23日の経済財政諮問会議は支配階級の意図を露骨に示した。
 資本家と御用学者は「新しい人の流れの創出で経済に活力を」と唱えて、「20歳代からの兼業・副業」(一生続く低賃金・細切れ就労制度)と「40歳でのキャリア棚卸し」(40歳定年制!)、「テレワークの定着・拡充に向けた就業ルール、労働時間規制の見直し」を提案した。河野太郎行政・規制改革担当相は「金銭補償による雇用流動化」に言及。菅は田村憲久厚生労働相に「新たな働き方に対応した就労ルール」の年内検討を指示した。
 11月13日の成長戦略会議は、リストラのための「労働移動の円滑化」として①「トライアル雇用」支援、②在職出向の促進、③テレワークに対応した時間管理、④フリーランス(個人請負)のガイドライン策定などを列挙。16日、厚労省・有識者検討会は⑤「解雇の金銭解決」制度の検討を再開した。これら全てが許しがたい。
 ①トライアル雇用支援とは、試用期間を設けて被解雇者を期限付きで雇うことを支援するというもの。地方自治体の会計年度任用職員制度に続く、国による非正規職化の公然たる推進である。
 ②在職出向はJRに続きANA(全日空)、JAL(日本航空)などが一斉に始めた。ANAは非正規職の雇い止めに加え、正規職の年収3割カットと3500人削減、客室乗務員(CA)など400人以上を家電販売や自治体など他業種へ出向させる。解雇撤回の闘いが続くJALも約500人を派遣・出向させている。CAは乗務手当の比率が高く、大幅賃下げは必至だ。戻れる保証もない。「雇用を守るため」と称して退職に追い込もうとしている。

過労死の責任逃れまで

 ③テレワークの導入を機に労働時間規制の解体が進んでいる。厚労省調査では6割の企業が時間外労働、4割が深夜労働を認め、労働者の4割が深夜労働の禁止を求めている。ウェブ会議やメールでのパワハラも横行している。
 ④個人請負の拡大へ、広告代理店最大手・電通(6万6千人超)が名乗りを上げた。電通は来年から40代以上の「希望者」を個人事業主とする制度を始める。40歳定年制の開始であり、過重労働・長時間労働で「過労死」に追いやっても個人の責任にして法的追及から逃れようとするものだ。
 さらに⑤「解雇の金銭解決」制度は、労働組合つぶしの不当労働行為を合法化し、解雇撤回の闘い自体を封殺することを狙う。絶対に許してはならない。
 しかし医療労働者を先頭にスト決起が始まった。闘う労働組合を再生し現場から総反撃しよう。
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