焦点 菅・成長戦略の核心 「生産性向上」掲げ大リストラ
焦点
菅・成長戦略の核心
「生産性向上」掲げ大リストラ
菅政権がコロナ下でごり押しする成長戦略の核心が明らかになった。経済財政政策の「司令塔」とされる経済財政諮問会議、新たに作った成長戦略会議などで「生産性向上」を掲げたおぞましい議論が重ねられ、菅の10月26日の所信表明演説もその線で行われた。
菅・成長戦略の柱は、①国家強権による「官民のデジタル化」と②「生産性の低い」中小企業の再編・淘汰(とうた)を唱えて大企業をも対象とする社会全体の大リストラであり、③それがもたらす大量解雇・総非正規職化のための「規制緩和」である。
■竹中らが成長戦略会議に参加
発足した成長戦略会議は、人材派遣大手パソナ会長の学者政商・竹中平蔵、米巨大金融資本ゴールドマン・サックス元幹部のデービッド・アトキンソン、IT関連企業会長・金丸恭文らが名を連ねる新自由主義の巣窟だ。
菅は16日、第1回成長戦略会議で「企業の事業の再構築(リストラ)、生産性の向上、労働移動の円滑化......新しい働き方の実現、足腰の強い中小企業の構築」を提示。23日の経済財政諮問会議では「官民のデジタル化をてこに成長への突破口を開く」「デジタル庁が国、自治体、民間のデジタル化のための権限を持てるよう」にすると明言。所信表明で「(各省庁や自治体の)縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進める」と述べた。
■国家強権によるデジタル化
官民のデジタル化とは国家強権による大合理化であり、社会の根幹に関わる規制を全廃しようとするものだ。自治体の大リストラ、職員半減が目指され、それを社会全体に広げようとしている。
菅は規制改革推進会議、国家戦略特区諮問会議を再開。マイナンバーカードの普及やオンライン診療・教育、雇用・労働時間改革、都市全体を監視するスーパーシティの議論を進めている。個人情報保護法を大改悪し自治体ごとの保護規定を破壊、全住民情報を国が一元的に掌握し企業が自由に使えるようにすることを狙う。
■「中小企業は消えてもらう」
デービッド・アトキンソンは、雑誌「プレジデント」5月29日号で「中小企業は消えてもらう」と放言。4月刊『日本企業の勝算』(東洋経済新報社)では従業員が20人以下の小規模事業者は全体の84・9%、従業員数は1044万人弱とする中小企業白書を引用。「生産性の低い」「最先端技術を使いこなせない」中小零細は「邪魔な存在でしかない」から淘汰し「国の政策に沿う企業」を優遇して大企業・中堅企業中心の産業構造への転換を求めた。新自由主義の加速と政治の一層の私物化だ。町の個人商店・小経営が潰されるなら地域はいよいよ衰退する。
■大量解雇・賃下げに総反撃を
菅らの言う「最低賃金の引き上げ」も大リストラのためだ。前掲書は「企業規模を拡大するための促進策という『飴(あめ)』と、最低賃金という『鞭(むち)』を中核とした政策に切り替える、これが日本を救う」と述べている。「労働移動の円滑化」「解雇・労働市場規制の緩和」と一体であり解雇の自由化で労働者の大半を非正規職化し最賃水準に引き下げる観点から言われているのだ。
しかしどう強弁しようと菅・成長戦略に展望などない。大破綻した新自由主義を一層破滅的に進める強搾取と貧困の攻撃に対して、「しかたがない」というあきらめを乗り越えたスト決起が始まっている。労働組合の団結をよみがえらせて総反撃に立とう。