焦点 学者政商・竹中平蔵 ベーシックインカムで福祉全廃
週刊『前進』04頁(3166号03面04)(2020/10/19)
焦点
学者政商・竹中平蔵
ベーシックインカムで福祉全廃
菅政権のブレーンとして、人材派遣大手・パソナグループ会長で東洋大学教授の竹中平蔵が再び政治の前面に出てきた。マイナンバーを使って国民に毎月7万円を支給する「ベーシックインカム(BI)」と引き換えに、生活保護や年金給付、社会保障の廃止を言い出した。コロナ危機に乗じたデジタル大合理化、雇用・賃金破壊と一体で、生存権すら否定する究極の自己責任論の主張である。
■7万円では暮らせない!
竹中平蔵は9月23日放送のBS―TBS「報道1930」で「毎月7万円のベーシックインカム」を導入すれば「生活保護が不要になり、年金もいらなくなる。それらを(BIの)財源にする」と発言した。これに対し「7万円ではとても暮らせない」「家賃で消えてしまう」と怒りが噴出。追いつめられた竹中は10月10日、ネットサイトで「7万円で生活できると言ったことはない。7万円レベルなら財政的に大きな負担にならないと申し上げた」と居直った。
現在の単身世帯の生活保護費支給額は住宅扶助を含め月額10〜13万円ほど。それですら憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しているとはいえない。それを「7万円」と引き換えに生活保護や年金などを廃止し、後は「自己責任」としてしまうなら、貧困は深刻化し「生存権」さえも奪うものとなる。
■雇用・賃金破壊と一体だ
こうした社会保障の解体は労働者の雇用・賃金破壊と一体だ。
竹中は8月刊『ポストコロナの「日本改造計画」/デジタル資本主義で強者となるビジョン』(PHP研究所)で「デジタル資本主義の社会のもとでは今とは桁違いの格差が生じざるを得ない」と言い放ってBIに言及。「毎月20万円もらえるとなれば働かない人も増えるでしょう。これが月に7万円なら不足分を働いて補おうとなります。このようにして極めて公平な社会保険制度(社会保障制度ではない)を新たに作り上げていくべきです」「生産性の低い人の給料は下がらざるを得ない……その分をある程度、ベーシックインカムで保証する」と述べた。
デジタル大合理化による「桁違いの格差」=一層の低賃金・貧困化の上に、さらに徹底的に労働に駆り出そうというのだ。コロナに乗じたむき出しの新自由主義の労働政策として、BIと社会保障解体が主張されている。
■パソナに露骨な利益誘導
竹中は小泉政権の「構造改革」「官から民へ」を主導し、製造業派遣などの解禁、郵政民営化でワーキングプア社会をつくり出してきた。さらにパソナ会長に就任。解雇規制緩和を主張し、15年元日のテレビ朝日「朝まで生テレビ」で「正社員はなくせばいい」と発言。安倍の産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議でパソナや加計学園に露骨な利益誘導を図った。
雑誌「プレジデント」2019年10月4日号では「100歳まで生きるとすると90歳くらいまでは働くことになる」「今までのように100%面倒見てくれない苦しい時代」「専門性が身に付いていない人は生き残れない」と公言。資本の利益のためには労働者が生きている限り搾取し続けることを隠そうともしない。
■労働者の闘いで引きずり倒そう
しかしこんな資本主義は終わりだ。腐りきった政商・資本家がこれ以上のさばり続けることなどありえない。コロナ下で労働者階級の巨大な怒りと決起が始まっている。労働者・労働組合の闘いで菅と竹中を引きずり倒そう。