北海道
　放射性廃棄物受け入れるな
　応募に動く２町村で怒り

　「高レベル放射性廃棄物」の最終処分場設置に向け、菅政権が北海道の２町村でうごめき始めた。高レベル放射性廃棄物は原発が発生させるものだ。最終処分場設置は再稼働を進め、あくまで原発・核政策を推進するために他ならない。東海第二原発や柏崎刈羽原発などの再稼働を許さず、最終処分場設置も阻もう。

巨額の交付金で自治体買収工作

　安倍政権は２０１５年から最終処分場の設置地点の選定に向けた動きを全国で活発化させてきた。多額の交付金の支給で誘う卑劣な手法で、とくに過疎地の自治体への働きかけを強めてきた。それを受け、北海道神恵内（かもえない）村が選定のための「文献調査」（２年、交付金は20億円）に応募しようとしている。同村議会の総務経済委員会が10月２日、村商工会が提出した請願を採択し、村長は本会議での正式採択を経て応募を表明する見通しだ。同じく北海道寿都（すっつ）町の町長も文献調査に応募する意向を明らかにしている。だが、地元住民からは「村のやり方に反対だ」と声が上がっている。
　「最終処分」とは原発を運転することで生まれる高放射線量の膨大な放射能の塊を地中に埋めてしまうことであり、「地層処分」と呼ばれる。しかしこれは深刻な放射能流出を生じ、未来の世代にまで甚大な被害・被曝をもたらす。絶対に許されないことだ。

原発は大量の核廃棄物生み出す

　原発は放射能で汚染された大量の「核廃棄物」を生み出す。燃料のウランを鉱山から掘り出す段階、ウランを濃縮、加工する過程で核廃棄物が出る。そのうえに原発を動かせば放射能で汚染された作業着などの大量の「低レベル放射性廃棄物」が生まれる。このそれぞれの過程で労働者の被曝は不可避であり、数多くの労働者が無残にも命を奪われ、健康と生活をズタズタに破壊されているのだ。
　さらに重大なのは、原発を動かせば大量の「使用済み核燃料」が生み出されることだ。高レベル放射性廃棄物とはこれを再処理し、ウランとプルトニウムを取り出した後に残ったもののことだ。これはさまざまな核物質を含んだ、きわめて強い放射能の液体である。液体のため非常に不安定であり、「安定」状態にするためにガラスの粉末と混合して高温で溶かしてキャニスターと呼ばれるステンレス製の容器に入れて固める。以上の工程を政府は青森県六ケ所村の再処理工場で行おうとしているが、完全に行き詰っている。（本紙３１５７号参照）
　キャニスター表面からは１時間当たり１万４千シーベルトもの桁外れの放射線が発せられ、近づけば人は即死する。またキャニスターは「崩壊熱」という熱を発し続ける。

未来の世代まで深刻な核被害が

　高レベル放射性廃棄物の地層処分とは、キャニスターを30〜50年保管して熱を下げた後、３００〜１千㍍の縦穴を掘り、さらに横穴を掘り進めて出来た巨大空間に並べ置き、穴を埋め戻して閉鎖してしまう方法だ。だがこれで「放射能を封じ込める」ことなど到底不可能だ。先述したように、キャニスターからは想像を絶する放射線が半永久的に放出され続ける。地層処分すれば、はるか未来の世代にまで深刻な放射能被害をもたらすのだ。
　ステンレスは鉄よりさびにくいというだけであり、とくに傷ついたり水分にさらされ続けるとすぐにさびが発生する。ステンレス製のキャニスターは、せいぜい数十年〜数百年でボロボロになる。そうなれば、ガラス固化体は地中の高い圧力で粉々に破壊され、大量の放射性物質が出てしまう。さらには地下水の流れに乗って地表にも移動し、人間の生活圏を汚染させ被曝させる。農作物にも取り込まれ、海洋を汚染して魚類にも蓄積される。それらを食することでも内部被曝させることになるのだ。
　加えて、日本は「地震大国」「火山大国」であり、無数に活断層が走り、全国に火山が存在する。巨大な地殻変動や火山活動によって膨大な放射能汚染物が地表にむき出しになる危険性が高い。地層処分は、将来の人類にまで過酷な被害・被曝をもたらすのだ。断じて許されない。

地元住民の闘いに応え反対を！

　今回、首長などが応募を狙っている神恵内村の人口は、かつては約２千人だったが現在は約８２０人、そのうち65歳以上が45％を占める。寿都町の人口は現在約２９００人で、ピーク時の３分の１以下、65歳以上の割合は40％。２町村とも新自由主義が観光も漁業も衰退させ、人口の激減に追い込んでしまったのだ。
　新自由主義による地方破壊こそ過疎地の自治体や商工会を最終処分場の誘致に引き寄せる原因なのだ。むしろ自民党政府と資本家階級は自分たちがつくり出した地方の困窮につけ込み、数十億の交付金で頬をたたいて地層処分地を押し付け、さらに犠牲にしようというのだ。菅政権は原発・核政策の面でも強権政治で臨み、改憲・戦争（核武装―核戦争）に突き進もうとしているのだ。何があっても許してはならない。
　ドイツのゴアレーベンのように闘えば阻止できる。寿都町では８００人以上の「反対署名」が集まり、町長リコールも含め、反対運動が始まっている。医療労働者を始めとする労働者のストライキ・闘いとつながった、新自由主義に立ち向かう核施設を許さない闘いだ。地元住民の必死の闘いを支持し全国から「反対！」の声を上げ、最終処分場設置を阻止しよう。