強制送還を拒むことが罪なのか 難民と仮放免者の命を奪う入管法改悪を絶対阻止する

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週刊『前進』04頁(3165号03面01)(2020/10/12)


強制送還を拒むことが罪なのか
 難民と仮放免者の命を奪う入管法改悪を絶対阻止する


 難民認定率0・4%という「難民鎖国」日本で菅政権は、「退去強制拒否罪」、「仮放免逃亡罪」を新設し、さらに厳罰化を進めようと入管法改悪を狙っている。その中身を9月22日、読売新聞が「滞留外国人 社会生活容認」「人道配慮『準難民』新設」という見出しで報じた。この入管法改悪は、改憲攻撃と直結する外国人治安管理体制の強化であり、絶対に阻止しなければならない。

「私たちは人間だ」

 読売新聞によると、「出入国在留管理庁は、6カ月以上の収容が見込まれる難民申請中や訴訟中の外国人らについて、社会内での生活を認める『監理措置』(仮称)制度」を新設、さらに「難民認定には至らないものの、母国が紛争中で帰国できない外国人らを『準難民』(仮称)と認定し、在留を認めて保護対象とする」というのだ。
 昨年、入管収容施設での長期収容に抗議し、仮放免を求める被収容者のハンガーストライキが激発、長崎県・大村入国管理センターではナイジェリア人男性が飢餓死する事件に至った。
 対応を迫られた法務省は、「収容・送還に関する専門部会」を設置、今年6月に「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」がまとめられた。
 2020東京五輪に向けた国内治安管理強化の一環として、入管は「退去強制令書」を受けて入管施設に収容されている外国人の「仮放免」を極端に抑制。その結果、長期収容者が激増した。仮放免不許可の理由もわからず、収容と収容継続は入管の意のまま、収容期間の上限もない。さらに医療放置、家族との分離など、被収容者は口々に「私たちは動物ではない、私たちは人間だ!」という怒りの声を上げている。
 しかし「提言」は、「退去強制拒否罪」創設とともに、現在はできないことになっている難民申請中の強制送還に例外規定を設け、難民申請を2回までとし、以後申請を繰り返す者に対しては、強制送還を可能にするというのだ。
 収容についても「迅速な送還、仮放免の適切な運用、収容代替措置の制度化等により、長期化を防止する」としながら、「収容に上限や司法審査を設けない」というのが結論だ。
 ここでいう「収容代替措置の制度化」が今回、明らかになった「監理措置」だ。入管が認めた支援団体や弁護士らに、対象者の生活状況などを把握して入管庁へ定期的に報告する義務を課し収容施設外での生活を認めるのだという。
 日本の過酷な現実の中、難民申請者や仮放免者にとって弁護士や支援団体のサポートは生きる糧であり、心の支えだ。その友人・家族を入管サイドに立たせようというのが、この「監理制度」だ。「仮放免逃亡罪」も合わせて、支援者・支援団体、弁護士が「共犯」として罰せられる可能性もある。難民支援を呼びかける活動を委縮させ、分断し、外国人を追い詰める狙いが見えてくる。
 「準難民」などという前に難民を難民とし受け入れることが先決だ。命の危険があって帰国できない人々、家族と共に日本で暮らしたい人々、日本で生まれ育った子どもたちにまで悪意ある「送還忌避者」というレッテルを貼って追い出すのか! 強制送還を拒むことが「罪」なのか!

大阪入管での闘い

 日本で難民申請したが認められず、長期収容された外国人男性2人の通報に対し、国連人権理事会の恣意(しい)的拘禁作業部会が「期限を定めない収容は国際人権規約に違反する」として今年8月、日本政府に法改正や対応の見直しを求める意見を採択した。菅政権は、この意見書に法的拘束力はなく、「収容は国内法に基づき適正に行われている」と居直った。
 さらに大阪入管職員による暴行で右腕を骨折したトルコ人男性が起こした国賠裁判で、大阪入管が、事態を重く受け止め謝罪し、人権を尊重した適正な処遇に努めることを確認し、300万円を支払うとした条件を受け入れ、9月29日に和解が成立した。
 大阪入管では同様の事件が5件も続いている。10月1日に記者会見した原告のトルコ人男性は、「みんな、問題があるから国へ帰ることできない。大阪入管にいる外国人に暴力をしないでください」と訴えた。
 新自由主義が生み出した難民・仮放免者、外国人労働者の闘いが、この国の根幹を揺るがしている。あらゆる分断を超えた労働者の団結で新自由主義を打ち破り、世界を変えよう!
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