安倍政権の7年8カ月 アベノミクスで危機拡大 「継承」叫ぶ菅政権で大破局へ

週刊『前進』04頁(3163号03面02)(2020/09/28)


安倍政権の7年8カ月
 アベノミクスで危機拡大
 「継承」叫ぶ菅政権で大破局へ


 「自助」と「規制改革」「デジタル化」を叫ぶ菅政権は、新自由主義攻撃を強硬に押し貫くことで、労働者人民の生活をさらに破壊しようとしている。菅はまた「アベノミクスの継承」を掲げた。アベノミクスとは、労働者への強搾取の上に、大資本と富裕層だけを富ませるものだった。安倍は日銀や年金の膨大な資金を株式市場につぎ込んで株高を演出した。それを受け継ぐ菅政権は、資本主義の破局に向けて走り始めたのだ。
 安倍政権は「2%のインフレターゲット」を掲げ、そのために「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」と言って登場した。日銀総裁に黒田東彦を据えて「異次元の金融緩和策」を行わせた。だが、経済は一向にインフレには転じなかった。
 その根底には過剰資本・過剰生産力状態がある。その中で資本は、労働者を非正規職化して賃金を切り下げ、低価格競争を展開することに延命の道を求めた。それは労働者の消費支出を減少させ、モノは一層売れなくなった。
 労働規制をなくして雇用を柔軟化する安倍の政策は、この状態をさらに促進した。これではインフレになるわけがない。アベノミクスは、もともと根本的に矛盾した政策だった。
 金融緩和で日銀が供給した膨大な資金は、生産の拡大ではなく株式や証券の投機に向かった。しかも、株高自体が安倍政権によって演出されたものだった。

日銀による株購入は一層の危機招く

 黒田日銀は毎年、何兆円もの上場投資信託(ETF)の買い入れを続けてきた。ETFとは、いわば個々の株式を束にして値段をつけたもののことだ。
 日銀が保有するETFの総額は34兆円を超えた。これは、東京証券取引所1部上場企業が発行する全株式の時価総額の約5%に当たると言われる。
 さらに、本来は労働者人民の資産である年金積立金も株式市場につぎ込まれた。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理する資金のうち、40兆円が国内の株式購入に充てられた(さらに45兆円を外国株の購入に使用)。
 GPIFや日銀は、今や日本で最大の株主だ。株高は、こうした操作で意図的につくられたのだ。
 この政策は、一度始めたらやめることができない。GPIFや日銀が、保有している大量の株を売りに出せば、株価は直ちに暴落する。株の買い入れを停止しただけでも、株価が崩れる可能性は高い。日銀やGPIFはいつまでも株を買い続けざるを得ないのだ。
 政府による株価操作が利かなくなって株が暴落すれば、日銀やGPIFは大損失を被る。日銀券は信用を失って紙くずとなり、年金は支給できなくなる。アベノミクスの継承とは、こうした大破局に向かって突き進むということだ。

大資本の救済費で財政赤字は急拡大

 異次元金融緩和で日銀が供給した資金は、巨額の国家財政赤字を補塡(ほてん)することにも使われた。今年3月末時点で、発行残高1032兆円の長期国債のうち、約半分の487兆円が日銀によって保有されている。安倍政権発足直後の13年3月時点では、日銀が保有していた国債はその発行残高の13・2%だった。安倍政権下で実質的な国債の日銀引き受けは急速に進んだ(図)。
 昨年10月の消費税率10%への引き上げをきっかけに、日本の株価は下落に転じ、アベノミクスによる株高の演出は崩れつつあった。コロナはその状況を一変させた。前例のない額の資本救済費の支出がコロナを口実に正当化され、大資本は空前の富を手に入れた。生産が止まり労働者が大量に解雇される一方、株価はバブル的に膨れ上がっては急落する異常な状態が続いている。
 巨大な資本救済費の支出は財政赤字を急拡大した。6月に成立した2020年度第2次補正予算で、今年度の国債新規発行額は90兆円を超えることになった。今年度末の国と地方の長期債務残高は1182兆円に達し、GDP(国内総生産)比で250%にもなる。そのつけは労働者人民に押し付けられるのだ。
 大増税を狙う菅政権を倒してこそ、労働者人民の未来は開ける。
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