資本主義にしがみつく日本共産党 「新自由主義批判」のペテン 志位講演 労働者の立場とは無縁
週刊『前進』04頁(3163号03面01)(2020/09/28)
資本主義にしがみつく日本共産党
「新自由主義批判」のペテン
志位講演 労働者の立場とは無縁
7月15日、日本共産党の志位和夫委員長は、党創立98周年記念の講演を行い、そこで1月の第28回党大会で決定した改定綱領には一言も書かれていない「新自由主義の破たん」を突然言い始めた。新型コロナウイルスの世界的感染が世界大恐慌の引き金となり資本主義の崩壊を加速させ、アメリカにおけるBLM運動をはじめ全世界で労働者階級人民が立ち上がるなか、日本共産党は、「資本主義の枠内での改革」という基本路線をもって、日本の労働者階級・民衆の怒りと闘いを封じ込めようと躍起になっているのだ。
国鉄の分割・民営化、労組破壊攻撃に一切言及せず
新自由主義とは資本主義の末期的で凶暴な攻撃である。それゆえ、これとの闘いは、ブルジョアジーとの死活的闘いであり、真剣な階級闘争である。このことを綱領的に否定する日本共産党を徹底批判し、職場、学園、地域から新自由主義打倒、資本主義・帝国主義打倒の決起をかちとろう。志位は「コロナ危機をのりこえ、新しい日本と世界を―改定綱領を指針に」と題する講演の冒頭で、「新自由主義の破たんがすっかり明らかとなった」と語る。では志位の言う新自由主義とは何か。「すべてを市場原理にゆだね、あらゆる規制を取り払い、資本の目先の利潤を最大化していく。社会保障をはじめ公的サービスを切り捨て、自己責任を押しつける」「この『疫病』が、社会全体をもろく弱いものにしてしまった」と解説する。実に表面的な羅列的批判である。だが注意して欲しい。志位は、新自由主義攻撃の核心である民営化攻撃と労働組合破壊攻撃に言及していない。できないのだ。
志位は「1980年代以降、日本にも輸入された新自由主義の路線が、社会のあらゆる分野から『ゆとり』を奪い、脆弱(ぜいじゃく)にしてしまったことが、コロナ危機をつうじて痛感されています」「その起点は、日本で最初の新自由主義『改革』となった1980年代の『臨調行革』でした」とも言っている。
80年代の「臨調行革」とは何だったか。それは、中曽根政権による国鉄分割・民営化攻撃、国家の総力をあげた戦後最大の労働運動解体、組合つぶしの大攻撃である。20万人の国鉄労働者が職場を追われ、公労協、総評を解体、消滅させる大攻撃であった。これと対決し、階級的な立場を堅持してストライキに決起したのが動労千葉であった。中曽根の凶悪な先兵となった動労本部(カクマル松崎)の襲撃をはね返し、社民、共産党の屈服と裏切りをのりこえて動労千葉は新自由主義攻撃を打ち砕いて団結を守り抜いた。そして国鉄1047名解雇撤回闘争が生みだされた。日本労働運動は、動労千葉、関西生コン支部、港合同の3労組共闘を軸とする新自由主義と対決する闘いの戦線を形成し、今日のコロナ危機に対する階級的反撃の条件、反転攻勢の時を営々と切り開いてきたのである。
だが志位はこのことに全く言及しない。日本共産党は国鉄分割・民営化が日本で画期をなす新自由主義攻撃であったことを絶対に認めない。自らが民営化、外注化の攻撃に屈服し、加担してきたからだ。
「野党連合政権」で資本主義救済
志位がすがりつこうとしているのは、立憲民主党・枝野、小沢らとの「野党連合政権」の道だ。枝野は、かつて民主党政権時代に露骨な新自由主義路線を推進した張本人であったことを棚に上げて、9月の合流新党の代表選で「民進党までの綱領は、自己責任や自助を強調する新自由主義的な側面が残念ながら残っていた」などと言いだしている。志位はこの枝野を賞賛し、「そうした問題の土台で一致する方向性が共有されてきた」「新自由主義からの転換を野党共闘の旗印に」(9月11日付『赤旗』)とおもねっている。「新自由主義の破たん」にたいして日本共産党はどうするのか。志位講演では、「ケアに手厚い社会をつくる」「危機にゆとりをもって対応できる強い経済をつくる」などの「七つの提案」で、「希望をもって生きることができる新しい日本を、みんなの力でつくろう」と言っている。「もろく弱い社会」に「強い経済」を対置して、「強い資本主義をつくろう、資本主義をよみがえらせよう」と叫んでいるのだ。行き過ぎた規制緩和、大資本優先の政策を変えて、ルールある資本主義にすることこそが、資本主義を持続させる唯一の道だと主張しているのである。志位は、国連総会の決議などを持ち上げて、「持続する資本主義」こそが共産党の目標であると言って恥じない。共産党綱領と国連総会決議は同じ内容なのだ!
労働者の国際連帯無視し中国への排外主義あおる
さらに志位講演は、「中国は、人権侵害と覇権主義という体制的問題点が、パンデミックを通じてむき出しになりました」と中国を強く批判している。その意味は、米帝トランプの軍事的攻勢を含む米中対決の推進に賛成するということだ。重要なことは、香港問題に言及しても、香港労働者民衆の闘いへの支持や、中国本土の巨大な労働者階級の立ち上がりにまったく言及しないことだ。アメリカ、中国、世界の労働者民衆とともに闘う立場とはまったく無縁なのだ。志位は「新自由主義による労働法制の規制緩和が、多くの人々を危機に脆弱な立場に追いやっている」とし、「人間らしく働ける労働のルールをつくる」と呼びかける。「利潤の追求を第一としない資本主義」に変えようというのだ。
それではコロナ危機とは何か。世界で3千万の民衆が感染し、90万人以上が命を奪われている。それは決して自然現象ではない、資本主義の新自由主義的暴走が新型コロナウイルスを生みだした。中国経済に依存して帝国主義世界経済も成り立つというなかで感染が瞬く間に世界に広がった。
この世界的な新型コロナウイルス感染の拡大、コロナ・パンデミックこそが新自由主義攻撃だ。支配者どもは労働者民衆から医療と命を奪い、生活を破壊し、差別、分断を激化させ、あくまで民営化、非正規職化を推し進める。他方で資本家どもは巨大な富を独占している。しかし、コロナ危機は世界的な大恐慌のはじまりだ。コロナ恐慌のなかでの異常な株式市場の高騰にみられるように、国債や証券を大量にのみ込んだ中央銀行の破綻が現実化している。新自由主義社会(帝国主義とスターリン主義の現代世界)がすでに崩壊し、限界にきていることをコロナ危機は暴いたのだ。
菅打倒、新自由主義打倒の労働運動つくり出そう
新自由主義とは、第2次世界大戦後の資本主義の延命策としてあった予防反革命的・労働者保護的なあり方が成り立たなくなり、資本主義の本性がむき出しに表れてきたものだ。その意味で暴力的であり、末期的なのである。新自由主義の暴走のもとでは労働者人民が生きられないとするなら、どうすれば資本主義を廃止できるか、そこを明確にしなければならない。新自由主義を終わらせる力は労働者階級自身にある。新自由主義の破綻は、プロレタリア革命の現実性なのだ。そのためには、労働者階級の階級的団結の復権、階級闘争の復権がなによりも大事だ。医療労働者のストライキ、「地域医療・介護を守ろう」「社会保障を取り戻そう」という訴えが全国の医療・福祉労働者の強い共感を呼び、世界にも発信された。労働者階級の団結と実力闘争、ストライキを復権させたときに新自由主義を倒す展望が必ず開ける。
菅政権は「コロナ感染拡大防止を最優先」と叫びながら、「デジタル化」などの合理化、民営化、生活破壊の新自由主義攻撃を徹底的に推し進めようとしている。動労千葉、関生支部、港合同の3労組が呼びかける11・1労働者集会に総結集し、菅政権打倒、新自由主義打倒の労働運動をつくりだそう。
〔岡崎康史〕