コロナ便乗攻撃許すな 「税収危機」叫び大リストラ 自治体予算の大幅カットを通達
週刊『前進』04頁(3163号02面01)(2020/09/28)
コロナ便乗攻撃許すな
「税収危機」叫び大リストラ
自治体予算の大幅カットを通達
コロナ危機に乗じて、東京・全国の自治体当局が大リストラを言い出した。「税収危機」を叫んで来年度予算を今年度比で1~2割削減することを求める通達が次々と出されている。医療・保健衛生をはじめ公的事業の必要性が明らかになっている時に、人員削減と民営化、大幅賃下げ、労組破壊を迫る大攻撃だ。
来年度1〜2割削減求め
コロナ下でコロナに乗じた自治体大合理化との重大な闘いが始まった。8月28日、小池百合子都知事は各局長、公営企業管理者などに対して、「都の行う全ての施策及びその実施体制」を厳しく吟味し、特に経常的・定型的な事業について、来年度予算を今年度に比べ10%減らす見積書を出すことなどを求める副知事名の通達(依命通達)を発した。
通達は、今後の景気動向は不透明で都税収入と財政環境が一層厳しくなると強調。東京五輪への対応、東京の「稼ぐ力」に磨きをかけデジタル化を加速するとともに、コロナ後を見据えた「構造改革」で「無駄」をなくすためにあらゆる施策の見直しを求めた。
都に続いて東京各区や横浜市なども軒並み、今後の厳しい減収を叫んで「歳出2割削減」「全事業のゼロベースでの見直し」「職員定数削減に向けた検討」を言い出した。
事業廃止・縮小、外注・非正規化
各自治体で既存事業の廃止・縮小と効率向上、正規職から会計年度任用職員や任期付職員への置き換え、さらに「これまで職員以外では対応できないとされてきた専門的業務」についてもアウトソーシング(外注化)や指定管理者制度(民間委託)の導入を検討することが公言されている。全てが労組破壊に直結する。どうして「職員以外では対応できない」業務まで外注化・民間委託するというのか。そうした業務などどうなってもいい、資本の食い物にさせると言っているに等しい。菅政権による公的責任を放棄した自己責任に基づく「自助」の強調、「構造改革」「規制緩和」「デジタル化」を自治体が先取りする動きだ。
コロナ×大恐慌情勢に乗じ、「赤字」を口実にJR東日本も1500億円の経費削減を打ち出し、公共交通の責務を投げ捨て私的商業的利益の追求に走っている。自治体でも保健師・看護師など常勤職員の不足が大問題となり、それを逆手に取った会計年度職員・臨時職員の採用、民間委託・派遣労働者の導入が一気に進められている。自治体予算の大幅削減、大リストラと外注・非正規職化を最先端に、全労働者に同様の攻撃がしかけられている。
税収問題にすり替えるな
当局は火事場泥棒のように、これまで労働者・労働組合の闘いゆえに進まなかった攻撃を一気にごり押ししようとしている。コロナは新自由主義がいかに社会を崩壊させてきたかを白日の下にさらした。そうした攻撃の一層の激化を許すなら労働組合の団結は解体され、労働者の雇用と生活、地域、社会全体は根こそぎ破壊されることになる。雇用・生活・地域を一層破壊する
これまで規制の撤廃と公的予算の削減が年々強行されてきた。医療・福祉、保健衛生、保育、教育、清掃、水道、交通、橋や河川などの防災・インフラ整備をはじめ住民が生きていく上で不可欠の予算が削りに削られてきた。市町村合併で役場とあらゆる公共施設を統合・縮小した「平成の大合併」、地域医療の中核の公立・公的病院の統合・再編・廃止と病床削減、保健所の半減化などはその最たるものだった。それをコロナ下の「税収危機」を口実に予算を一層削り、事業廃止と民営化、人員削減を進めるなら、誰も住めなくなってしまう。行政のデジタル合理化はそれをさらに加速する。
小池都政は数千億円をかけて築地市場をつぶし豊洲への移転を強行した。都立の全病院の2022年度までの独立行政法人化(民営化)をあくまで進めようとしている。数兆円に上る東京五輪経費、そして横浜・大阪のカジノ構想には借金をして数千億円規模の予算(税金)を投入し巨大利権を生み出す一方、「税収危機だから」として労働者住民の命と生活にかかわる公的事業とそのための職員をさらに削ろうとしている。国と自治体の全事業は大資本と為政者の「金もうけ」のためのものなのか。それが「稼ぐ力」「構造改革」の正体なのだ。「財政危機」を叫んで労働者・労働組合への攻撃にすり替えることは絶対に許されない。
さらに保育や医療・介護施設、行政職・現業職など自治体のあらゆる職場で、青年労働者の離職やメンタル障害が年々増加している。公務員試験に受かって正規職で採用されても低賃金で過酷な労働が強いられる状況がコロナ下でいよいよ深刻になっている。労働条件と職場環境の改善、賃上げと正規職の増員、施設・人員体制の拡充が直ちに必要だ。
その重大な時に、正規職を削減し1年雇用の会計年度任用職員や民間の派遣労働者、個人請負に置き換えるなら、職務の遂行や経験の継承、若手職員の育成も破綻的になることは明らかだ。
職場で闘い11月大結集へ
自治体の大リストラ・労組破壊は大幅賃下げ・賃金破壊に連動する。労働組合の絶対反対の闘いが求められている。人員削減と大幅賃下げをめぐる攻防はこれからが本番だ。いよいよ労働組合の力で職場から総反撃に立つ時が来ている。一律賃上げ求め20秋闘を闘おう
地方公務員賃金についての人事委員会勧告(人勧)は、東京などでは民間企業の賃金水準の調査の遅れを理由に10月末以降にまず一時金について出され、次に12月前後に基本給について出されるという。すでに民間企業の業績悪化と夏季一時金・賃金の大幅カットが大々的に宣伝されており、公務員についても「民間準拠」と称した大幅賃下げ勧告が言われている。「都政新報」は、08年リーマンショックを受けた09年の一時金・基本給のマイナス勧告の例を出して、今年度の大幅賃下げ勧告を予想している。しかし一時金も基本給も全て生活のために必要な生活給だ。これまでの賃下げ・定期昇給の減額と諸手当のカットの上にさらに賃下げをすることなど許されない。ましてコロナ下で、医療・福祉施設、保健所、保育所、学童クラブ、学校職場などで労働者はすさまじい緊張と多忙を強いられている。役所でも特別定額給付金の支給事務、マイナンバーカード関連事務など、かつてない激務の中で懸命に働いている。そうした状況下での賃下げなどありえない。賃上げこそ当たり前のことだ。
国・当局と資本によるコロナに乗じた全労働者への賃下げと大量解雇の攻撃に対して、公務員労働者・労働組合が先頭で闘うことが求められている。
そのための20秋季賃金闘争だ。労働者の分断を許さず、正規・非正規職の一律大幅賃上げを求め闘おう。基本給の1〜2割カットという大幅賃下げ攻撃を粉砕した東京・特区連の18秋闘29分スト配置の闘いに続き、労働者の荒々しい実力闘争を復権しよう。越年闘争を辞さない秋闘が、自治体大リストラ攻撃を打ち砕く力となる。コロナ下の困難を乗り越え、職場を基礎に労働組合の団結を打ち固めて闘おう。大阪都構想粉砕の10・25集会を全国の力で闘い、11・1全国労働者総決起集会(日比谷野音)に大結集しよう。
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都の通達
・景気は不透明、税収は一層厳しくなる
・無駄をなくし事業再構築で予算10%減を
・デジタル・会計年度職員活用し人員削減
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東京・区職現場労働者の声
コロナ・多忙化で賃上げ当然
「今年の人勧は厳しい」「コロナ情勢で大幅な賃下げになるのでは?」——不安に思っている人が多いためでしょうか、今年の特区連の署名は、昨年を超える数が集まりました。
でも、おかしいとは思いませんか? コロナ禍の中、保健所は超激務になり、特定定額給付金の支給事務、付随して「マイナンバーカード」申請の増加、学校休学で学童クラブは長時間の実施、他にも新型コロナの影響で多忙化した職場は多々あります。なのに賃下げ? 納得できません。
支配者側は、苦境に立たされた労働者に公務員バッシングをあおり、その際、賃金を「労働者同士を分断する道具」として使うはずです。だから今、社会に必要不可欠で、しかも労働組合に組織された労働者として、私たちこそが、全労働者を代表する立場で賃上げ要求をすべきではないでしょうか。
7月、船橋にある病院の労働組合が、一時金カットに抗して「社会の虚偽を撃つ」ストライキを行い、大きな反響を呼びました。一時金不支給だった東京女子医大病院が、このストのあと支給に転じたそうで、社会に与えた影響ははかり知れません。「労働組合というものが力強くなればものすごい影響力持つのだけど、日本ではそれがどんどん奪われてきて組合が機能してない。本質的に医療は社会になくてはならないもの。だから、経営を気にしながらやらなきゃいけないことそのものがどう考えてもおかしい。医者として(経営者側から)『ベッドを埋めろ』と言われるが、私たちはそうではなく、ベッドにいる患者さんたちを退院させたい」(記者会見での労組書記長発言より)
住民の命とくらしを守るのが、私たち自治体労働者の責務です。その誇りにかけて、各区職労に結集し、社会のあり方を変えるような賃金闘争に起ち上がろう。ストライキ、越年闘争も辞さず、コロナ情勢に負けずに闘い抜こう!
(労組交流センター自治体労働者部会のビラから)