タイで反政府デモ拡大 公然と王室批判を開始

週刊『前進』04頁(3160号04面03)(2020/09/07)


タイで反政府デモ拡大
 公然と王室批判を開始

(写真 スマートフォンのライトをかざして抗議行動への支援を表明する学生たち【8月19日 バンコク】)

 タイで現在、青年・学生を先頭とする反政府デモが警察の弾圧をはね返して激しく闘われている。2014年の軍事クーデターで実権を掌握した元陸軍司令官の首相プラユット・チャンオチャ退陣と議会解散、新憲法制定を求めるものだ。
 今年2月に憲法裁判所が青年の支持を集めていた野党に対する解散命令を出すと、学生が先頭に立ち抗議行動を開始。新型コロナを理由に大学などが閉鎖されるなかでも、SNSを駆使した組織化は続いた。
 そして7月に緊急事態宣言が出されると、反政府運動は全国へと拡大。各地で連日デモが行われ、首都バンコクで8月16日に行われたデモには1万人以上が参加した。政治行動に初めて加わる人も多い。中学生・高校生も合流して教育改革を訴えるなど、全社会を巻き込んで発展しつつある。
 タイは新型コロナの大流行を免れたものの、経済の落ち込みにより数百万人の労働者が職を失った。今回の闘いの背景に、生きていけない労働者民衆の怒りがあることは明らかだ。
 その上で決定的に重要なのは、抗議行動参加者が公然と王室批判を開始したことだ。これは歴史的な動きである。今なお不敬罪が存在するタイにおいて王室は絶対的な権威をもつだけでなく、日本の天皇家と同様に莫大(ばくだい)な資産を保有し、国王ラーマ10世は世界で最も裕福な王族の一人といわれる。
 こうした王室の支配を支えるのは軍隊だ。近年、王室を批判し近隣国に亡命した活動家が次々殺されていることも判明している。
 ラーマ10世は2016年に即位すると新憲法を施行し、自らに強力な緊急権を付与。さらに抗議行動が盛り上がるなか、バンコクに駐在する全軍隊の指揮権を持つとも宣言した。
 タイの青年・学生の決起はコロナ情勢下で全世界で巻き起こる闘いの一環であり、社会の根本的な変革を求めるものだ。日本でも連帯して闘おう。
このエントリーをはてなブックマークに追加