三里塚・新やぐら裁判 やぐら・看板収去の反動判決 「最後まで徹底的に争う」

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週刊『前進』04頁(3159号02面01)(2020/08/31)


三里塚・新やぐら裁判
 やぐら・看板収去の反動判決
 「最後まで徹底的に争う」

(写真 反動判決の翌日、反対同盟が改めて農地死守を決意【8月25日 成田市天神峰市東孝雄さん宅前】)

(写真 決意を述べる萩原富夫さん【左】)

抗議の声が法廷をうめる

 8月24日、千葉地裁民事第2部に係属する新やぐら裁判で、内田博久裁判長は極悪の反動判決を下した。成田空港会社(NAA)の不当極まりない主張を丸ごと認め、三里塚芝山連合空港反対同盟に対し、市東孝雄さんの農地に立つやぐら・看板など四つの物件の収去とそれらが建つ土地部分の明け渡しを命じたのだ。
 内田は4月1日で千葉地裁から東京高裁に異動になりながら、「職務代行」という異例の形でこの裁判にしがみついてきた。反対同盟顧問弁護団は前回7月の弁論を前に裁判官忌避を申し立てたが、内田はそれを自ら引き取って却下した。そして「双方の意見は聞いた」と言い張り、傍聴者3人に退廷命令を出しながら「弁論終結」を宣言した。手続き的にもでたらめであり、内田に判決を言い渡す資格などまったくない。
 反対同盟と支援連絡会議は、開廷前に、千葉地裁前で内田裁判長を徹底的に弾劾する情宣活動を行った。
 開廷予定の午後2時を前に、法廷は怒りで充満していた。被告席には東峰の萩原富夫さんと弁護団が並ぶが、原告NAAの代理人は全員が逃亡を決め込んだ。

内田ら3人の裁判官が現れるやいなや、傍聴席から弾劾の声が飛んだ。

 内田は着席し、早口かつことさら力んだ声で判決要旨を読み始めたが、抗議の声でまったく聞き取れない。紙を持つ手は緊張で震え、読み終えると脱兎のごとく逃げ去った。この間わずか1分足らずだ。
 弁護団が判決文全文を入手し、その反動的全容が明らかになった。
 ①市東家の耕作地について、空港公団(NAAの前身)が具体的な転用目的もなく、めども立たずに旧地主から「取得」した(農地法5条違反)ことを、「転用目的で取得したこと自体を否定できない」と免罪。
 ②成田空港建設のためだけにつくられた農地法施行規則の違憲性を否定し、「成田空港の公益性、公共性からすると、農地の権利移転に県知事の許可は要らない。小作権者(市東家)の同意も要らない」と強弁。
 ③機動隊による暴力と流血の強制代執行の歴史をふまえ、公団が「あらゆる意味で強制的手段を用いない」と社会的に公言したことについては、「訴訟手続きまで放棄したと認められない」として、権利濫用、信義則違反を否定。
 など、NAAの主張を全面的に受け入れ、違法脱法をことごとく免罪した上で、最後に「仮執行宣言は相当でないからこれを付さない」とした。

空港を一層追い詰め闘う

 閉廷後に近くの会場で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
 最初に決戦本部長の太郎良陽一さんが反対同盟の「弾劾声明」を読み上げ、「千葉地裁とNAAが一体となった理不尽極まりない不当判決を絶対に許さない」「やぐら・看板強奪の強制執行阻止闘争に総決起する」と宣言した。
 続いて弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が立ち、「極めて不当な判決だ。かつての農地法裁判一審の千葉地裁・多見谷判決の悪質な引き写しだ」と断罪して批判の重要ポイントを指摘した。そして「仮執行宣言を付けさせなかったことは闘いの成果」と強調し、直ちに控訴の手続きを行ったことを報告した。
 さらに弁護団全員が立ち、結審からわずか1カ月余りでの、はじめから結論ありきのデタラメな判決を全面的に解剖し批判した。新聞・テレビなど約10社の取材記者が熱心に質問を出し、質疑応答が行われた。
 最後に、萩原さんがまとめのあいさつを行った。「この新やぐら裁判を、控訴審、上告審と何年かかろうと最後まで徹底的に争う。新型コロナ状況のもと、普通の会社だったらNAAは倒産だ。こんな中で市東さんの農地、やぐらや看板を取れるのか。取れるものなら取ってみろ、絶対に許さない。そういう気概で、危機でガタガタの空港を一層追い詰め意気軒高と闘っていく」
 そして9・2請求異議控訴審(東京高裁)、9・14耕作権裁判(千葉地裁)の裁判日程を確認し、9・27全国総決起集会(成田市赤坂公園)への大結集を訴え、この日の闘いを締めくくった。

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