8・6ヒロシマ・アピール

週刊『前進』04頁(3155号01面02)(2020/08/17)


8・6ヒロシマ・アピール


 いま、世界は変わろうとしています。韓国で、フランスで、香港で、イタリアで、アメリカ全土で、民衆の決起が続いています。差別と分断と搾取をのりこえ、すべての人間が人間らしく生きられる社会を作りたいと願うひとびとの声が、世界にあふれ出しているのです。
 アメリカのトランプ大統領は、小型の「使える核」を実戦配備し、核実験の再開を検討しています。7月16日には、75年前のトリニティ実験場での世界初の核実験を「素晴らしい偉業」と称賛しました。破産寸前の資本主義社会をリセットするための新たな核戦争が現実味を帯びているいま、核兵器禁止条約を求める民衆の声はこれまでになく高まっていますが、アメリカも日本も条約に背を向け続けています。
 トリニティから3週間後の1945年8月6日、広島のひとびとは一発の原子爆弾の熱線と爆風と放射能によって無差別に惨殺されました。生き残ったひとびとも、子や孫の代まで続く健康不安を背負わされ、激しい差別にさらされました。
 第2次世界大戦が終わり、資本主義社会は新たな支配体制を必要としました。原爆の被害を隠し、「原子力の平和利用=原発」で核保有を正当化し、IAEA(国際原子力機関)やNPT(核不拡散条約)といったいまに至る核支配体制を作り、この75年間、核実験、核兵器、原発によってあらたな被曝者を生み出し続けてきました。
 しかしそういった支配体制に日本の労働者民衆が黙って呑(の)み込まれてきたわけではありません。朝鮮戦争が始まると、広島の被爆者たちは在日朝鮮人たちとともに、核兵器使用阻止を訴えてゲリラ集会を決行しました。ビキニ事件を契機に原水禁運動が高まり、被団協が結成されました。声をあげ、立ち上がった被爆者と労働者民衆が日本の反戦反核運動を作ってきたのです。
 「黒い雨」訴訟もそのひとつです。7月29日、広島地裁は原告84人全員を被爆者として認定し、黒い雨による内部被曝の存在を認めるという判決を出しました。国の都合による補償の線引きで分断された被害者たちがたたかい続けてきたことは、いま福島で起きているたたかいと力強くつながっていくはずです。
 だからこそ支配者たちは、8月6日の広島で民衆の怒りの声があがるのを封じ込めようとしてきました。
 改憲にしがみつく安倍政権は、松井市長と右翼議員らに共謀させて、式典から反核の声を排除しようとデモ規制を画策し、それがかなわないとわかると、今度はコロナを理由に今年の式典は「慰霊に目的を絞る」と言い始めました。一般市民を締め出し、被爆者や遺族たちの出席さえ制限する一方で、核武装をもくろむ安倍首相や汚職議員らを平然と招待していることには、全世界があきれ返るでしょう。
 戦争と核兵器と原発の責任を問う被爆地ヒロシマの声を「慰霊」でねじ伏せてきた式典のありかたは、核支配体制を裏打ちしてきました。戦争と核のない未来を求める労働者民衆は、そんな式典のありかたをゆるすわけにいかないのです。
 「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」
 そう刻まれた広島の原爆慰霊碑の前に立ち、むごたらしく殺された数十万人の民衆の声に耳をかたむけるならば、ひとは核廃絶を誓わずにいられないはずです。核戦争の準備をする者をそこに立たせ、うわっつらの慰霊をしようとすることに怒りをおぼえるのが、当たり前の人間の姿ではありませんか。
 核廃絶の誓いを果たすため行動する労働者民衆の手で、平和記念式典を核廃絶の道しるべにしていきましょう! 新たな核戦争と憲法改悪をとめよう! 核廃絶の声をもっと大きく! 広島から声をあげましょう!
2020年8月6日
原爆ドーム前集会参加者一同
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