医療福祉職場に闘う労働運動を コロナ再爆発下の病院民営化阻止へ 革共同医療福祉労働者委員会
週刊『前進』04頁(3150号02面03)(2020/07/20)
医療福祉職場に闘う労働運動を
コロナ再爆発下の病院民営化阻止へ
革共同医療福祉労働者委員会
(写真 「アベ退陣!新宿デモ」前のアピールで都立病院独法化反対を訴える医療福祉労働者【6月14日】)
新型コロナウイルス感染症の「再爆発」情勢が進行している。医療・福祉に対する攻撃は、支配階級の矛盾の極限的な集約点である。都立病院の独立行政法人化、全国440の公立・公的病院の再編・統合をはじめ、医療・福祉を民営化し、人々の命も当たり前の暮らしもそのすべてを資本の価値増殖の草刈り場に変えてしまう攻撃が、コロナ「再爆発」情勢の今だからこそ強行されようとしている。その攻撃の激しさと同時に、これと表裏一体の絶望的な危機性を、われわれははっきりつかんでおかなければならない。
一時金減額にストで闘おう
コロナ情勢において、われわれは医療・介護・福祉産別における階級的労働運動の組織化に勝負をかける。激しく噴き出しつつある労働者人民の底深い怒りと現状変革へのエネルギーの先頭に、闘う医療・福祉労働運動の旗を立てる。全国の医療機関の3割で「感染症対応による経営悪化」を口実に夏季一時金減額が強行されるという。
東京女子医大病院では、経営側からの一時金ゼロ通告に対して、400人を超える看護師が退職の意向を示しているという。ところが経営側は、組合との団体交渉で「400人がやめてもなんとか回る」「足りなければ補充すれば良いことだ」と言い放ち、実際にも来年度330人もの大量の採用方針を明らかにした。しかも募集要項には恥知らずにも「2019年度賞与実績4・45か月」と記載しているのだ。「何が『医療従事者に感謝』だ」「ふざけるな!」と怒りの声が湧き起こっている。これに呼応して全国の病院・医療機関で闘いが起こり、大きく広がっている。
コロナ感染症の拡大によって手術件数の減少や受診自体を控える動きが広がり、感染症指定病院であるかどうかを問わず、医療機関全体の経営が悪化しているから、資本家・支配層は夏季一時金など出せないという。だがその責任を労働者が取らなければならないいわれなど一切ない。実際には、東京女子医大をはじめとして、新自由主義的経営のツケを労働者に回し賃下げを強行する病院資本の本性が、コロナ情勢によって暴かれているのだ。
医療・福祉をはじめとした労働者がいなければこの社会は成り立たないということが、「エッセンシャルワーカー(必須労働者)」という呼び名で、新型コロナ情勢下で改めて鮮明になった。だがそれは、「医療従事者に感謝を」キャンペーンとして、医療・福祉労働者をあたかも自己犠牲的に働く「聖職」であるかのようにみなすイデオロギー攻撃とも表裏一体だった。
「医療・福祉労働者は身を削って働け」「自分や家族の安全、賃上げや一時金を要求するなど、『聖職』としての自らの労働を汚すものだ」とでも言わんばかりの攻撃に対して、われわれの回答はただ一つ、労働者と資本家・支配層とは1ミリも相いれるところはないことをはっきりさせ、ストライキで闘うことだ。
「闘えば経営が立ち行かなくなる」「病院が倒産してもいいのか」という恫喝による経営の一時金減額攻撃に対して、全国で非和解の攻防が闘われてきた。「経営など倒産しても構わない。労働者、地域住民の命と健康はわれわれ団結した医療・福祉労働者自身が守る。そうしてこそはじめて守ることができる」と。八尾北医療センター労組は、まさにその闘いを先進的に切り開いてきた。そしてコロナ情勢下での「保健所増やせ」のデモなどを通して、病院労組が軸になって医療崩壊・社会崩壊に対する地域の怒りを組織する闘いを展開している。
「コロナ危機を革命へ」のスローガンの核心はここにある。労働者と患者・高齢者の命を守るために欠かすことのできないマスクやガウンさえも金もうけの対象にするほど腐りきった資本主義・新自由主義に対して、医療・介護・福祉の労働組合が中軸に座り、プロレタリア独裁に向かって地域まるごとを束ね本来の医療福祉を取り戻す闘いを組織していくのだ。
日本共産党の小池晃は参議院厚生労働委員会で、自民党医療系議員団による「第2次補正予算試算案」(総額7兆5213億円)について、「いい提案だ。このような〝医療版持続化給付金〟が必要だ」「自民党の医系議員も共産党の私も『いい』といっているのだから、怖いことなど何もない」と述べたという(「赤旗」7月3日)。医療・福祉を金もうけの道具にする自民党、資本家・支配層と同じ立場に立って、労働者の決起をたたきつぶそうとする日本共産党スターリン主義との党派闘争を、現場の獲得戦としてやり抜き、医労連傘下の労働者と結びつき、闘う医療福祉労働運動の潮流を今こそ登場させよう。
「稼ぐ東京」掲げ病院独法化
新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢は、帝国主義最末期の延命形態である新自由主義がどれほどまでに社会をズタズタに引き裂き、人間が当たり前に生きていくことすらできない状態にたたき込んできたかを、すべて白日のもとにさらした。医療・介護・福祉、社会保障、教育、地方自治体、鉄道……さらに官僚機構や企業組織まで、崩壊と腐敗の極みにある。その最たるものが、コロナ「再爆発」情勢のもとでなお強行しようとしている都立病院独立行政法人化=医療の民営化と営利化攻撃にほかならない。「都民の命を守ると同時に、経済をよみがえらせ『稼ぐ』東京を実現する」と小池都知事はあからさまに宣言する。だが命もカネも……などということは絶対に成り立たない。結局「命よりカネ」ということだ。「現行の経営形態では……、人事面・財務面での制度的な限界があり、最も柔軟で都立病院にふさわしい経営形態として、一般地方独立行政法人への移行を検討すべきである」(「新たな病院運営改革ビジョン」東京都)という。ここでいう「人事・財務面での限界」とは、「柔軟」な首切り自由の雇用や民間資金の導入、つまり資本への売り渡しなどが自由にできないということを意味している。これを突破するのが、都立病院の独法化であり、公立・公的440病院の再編・統合の狙いだ。
440病院の統合に反乱を
医療者や物資を集中的に投入しなければ成り立たない急性期医療のような「もうからない」部分であっても、社会を社会として成り立たせるためには切り捨てることができない領域を公的病院が担ってきた。そして同時にそれは、「命」や「生存」にかかわる人民の怒りを革命に結びつけないための予防反革命政策でもあった。だが、感染症病床が世界的にも桁違いの最低水準である日本の医療の現実が暴かれたコロナ情勢の中で、最後に残された「岩盤規制」と言える医療福祉分野をも、全面的に民営化し資本の食い物にするというのだ。すなわち、「医療・福祉」はプロレタリア革命の問題そのものだ。
コロナ「再爆発」情勢下で公立・公的440病院の再編・統合を強行することに地方自治体からの反乱が起きている。それによって、6月25日に行われた全世代型社会保障検討会議での第2次中間報告案では、「更に検討を進め、本年末の最終報告において取りまとめる」と延期を表明せざるを得なかった。
しかしなおかつそれを突破しようとしている要として、都立病院独法化攻撃がある。
だからこそ、都立病院独法化阻止をわれわれ医療・福祉労働者全体の課題にして闘おう。このコロナ情勢下でなぜ都立病院をつぶし公的病院を統廃合するのか。怒りの先頭に立とう。医療を守る、命を守るという地域住民の当たり前の声を、闘う医療福祉労働運動のもとに大きく組織し、その先頭で闘うのだ。
国鉄分割・民営化と闘い抜いてきた動労千葉の反合理化・運転保安闘争に学び、医療福祉の職場でこそ「民営化絶対反対」「闘いなくして安全なし」の闘いを組織していこう。
7・26国鉄闘争全国運動集会に全国から結集し、夏・秋に向けて「労働者の中へ」の挑戦を開始しよう。