新型コロナと大恐慌の時代を生きる 〈寄稿〉ふくしま共同診療所院長 布施幸彦 新自由主義の圧政に抗して全世界の人々と共に闘おう 闘いが未来を切り開く
週刊『前進』04頁(3146号04面01)(2020/07/06)
新型コロナと大恐慌の時代を生きる
〈寄稿〉ふくしま共同診療所院長 布施幸彦
新自由主義の圧政に抗して全世界の人々と共に闘おう
闘いが未来を切り開く
新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るっています。7月2日時点で世界の感染者数1047万6012人、死者数51万1253人、死亡率4・9%。同日午前0時時点の日本の感染者数1万9608人、死者数989人、死亡率5・0%。インフルエンザの死亡率0・1%に比べて格段に高い致死率です。
人類の歴史は感染症との闘いの歴史。100年前には1918年から20年までで少なくとも4千万人の命を奪ったスペイン風邪がありました。
日本の過去100年間を見ても、1899年から1950年までは感染症が死因の1位。抗生物質の発見により感染症の脅威はなくなったかのように思われていましたが、「感染症の時代は終わっていない」と、新型コロナウイルスが登場したのです。
階級が生死分かつ
アメリカの感染者数は世界の3分の1を占めています。医療先進国アメリカでは階級が生死を分けています。皆保険制度のないアメリカは無保険者が約7千万人(このうち「不法移民」とされている非正規滞在の人々が2千万人)。こうした人々は新型コロナウイルスに感染しても、医療費が高額なため受診することさえできません。路上生活者などの多くは受診しないまま死亡しているため、コロナ感染死としてカウントされません。
患者は圧倒的に黒人かヒスパニック系。医療サービスが貧弱な地域に黒人が住むケースが多く、黒人に感染が急拡大しています。ニューヨークでは、テレワークが可能な人の職場が集中するマンハッタンの感染率が激減する一方、在宅勤務が不可能な人が多く住む地区の感染率が増加しています。
在宅勤務が可能な仕事は「弱者」の低賃金労働者に支えられているのです。新型コロナウイルス感染症は単なる自然災害ではなく、貧困と格差、階級の問題なのです。これは日本を含め全世界共通です。
安倍が感染を拡大
安倍政権は、日本で最初に感染者が見つかってから、空港や港などで「水際作戦」を行いました、しかし、クルーズ船で多数の感染者が発生し、さらにクルーズ船とは無関係の感染者が日本各地で発生しました。このなかで安倍首相は3月2日から春休みまでの「全国の小中高校の休校およびイベントの自粛」を要請しました。3月13日に新型インフルエンザ等特措法を改悪し、3月24日に東京オリンピックの1年程度の延期を決めました。安倍首相と小池都知事が「復興オリンピック」開催のために2カ月以上、新型コロナ感染症対策を行わず、事態を放置したため、全国に感染が拡大しました。
4月7日から5月24日まで緊急事態宣言のもと、自粛が要請されていました。宣言が解除され自粛が終わると、新規感染者数が増えています。コロナ危機の収束どころか第2波、第3波のパンデミックが危ぶまれます。
コロナの中で闘う
米国ミネソタ州で黒人男性が白人警察官に暴行され死亡した事件で、全米だけでなく全世界で抗議デモが起こっています。香港では6月4日、当局の規制を打ち破って、1万人の労働者・市民が天安門事件の犠牲者を追悼する集会を行いました。
新型コロナウイルス感染症で殺され、権力に殺される時代において、全世界の人々がマスクをし、ソーシャルディスタンスを保ち、抗議の声を上げています。
日本でも、検察庁法改正案をめぐって、芸能人を含む有名人が次々と声を上げ、1千万件のツイッター投稿「#検察庁法改正案に抗議します」で法案を葬りました。
新型コロナ禍のなか、全世界で闘いが始まっています。多くの労働者が新型コロナのために首を切られ、貧困へと落とされる時代。彼らを守り支え、共に闘いましょう。
「パンドラの箱」だ
新型コロナウイルス感染症は世界を大恐慌の危機にたたき込んでいます。生産の縮小、低迷は長期にわたります。新型コロナウイルスがたとえ終息したとしても、経済や価値観も含めて今までとは全く違う世界となります。今後、1930年代と同じように世界経済が分裂し、全世界に大恐慌と大失業と貧困の嵐が吹き荒れることは必至です。これとの対決は不可避です。100年前のスペイン風邪の後、世界は大恐慌にたたき込まれ、階級闘争が激発・高揚しましたが、敗北に終わり、第2次世界大戦という破局に至りました。30年代の敗北と世界戦争を繰り返すわけにはいきません。
新型コロナは「パンドラの箱」です。だから希望もあります。それは、新自由主義の圧政に抗して、感染者や労働者の命と生活を守るために新型コロナ禍と闘っている日本を含む世界の人々です。彼らの存在と闘いが未来を決めます。彼らを信じて彼らと共に未来を切り開きましょう。
なお、紙面の都合上、日本の医療体制、福島原発事故、改憲などに対する新型コロナの影響に関しては割愛しました。詳しくは、「ふくしま共同診療所」のホームページに記してあります。参考にして下さい。