「敵基地攻撃能力保有」許すな 米トランプの戦争策動と一体

週刊『前進』04頁(3146号03面02)(2020/07/06)


「敵基地攻撃能力保有」許すな
 米トランプの戦争策動と一体

憲法9条を解体し先制攻撃を可能に

 河野太郎防衛相は6月25日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、24日に開催した国家安全保障会議(NSC)で、山口、秋田両県への配備断念を決定したことを明らかにした。
 それを受けて自民党は30日、北朝鮮のミサイル技術向上などを口実に「敵基地攻撃能力」保有に関する議論をスタートさせた。2013年に策定した国家安全保障戦略(NSS)を初改定するという。〝ミサイル防衛など生ぬるいことを言わず、敵の基地を先に攻撃して殲滅(せんめつ)してしまえばいい〟と言わんばかりだ。
 これまでペテン的とは言え、まがりなりにも建前とされてきた「専守防衛」を公然とかなぐり捨てる暴挙だ。米トランプ政権が進める北朝鮮や中国への戦争策動と一体化して、自衛隊も先制攻撃を行うという宣言である。断じて許すことはできない。
 コロナ危機と汚職・腐敗、何より生きるために闘いに立ち上がっている労働者人民の怒りによって安倍政権は追いつめられている。安倍はこの危機を改憲・戦争・排外主義で突破しようとあがいている。今こそ闘う労働運動を復権させ、安倍政権を打倒しよう。腐敗にまみれた安倍を監獄にたたき込もう。

自国防衛を名目に戦争突入を正当化

 敵基地攻撃能力とは何か。自民党のミサイル防衛に関する検討チーム座長・小野寺五典元防衛相はこう発言している。「相手国がミサイル攻撃をする時、防衛するのが最も易しいのは発射する前か発射した直後のブーストフェーズです。目的が把握しやすいですし、スピードも遅いですから。一方、防衛するのがいちばん難しいのは落下してくるターミナルフェーズ。速度が非常に速い……なので、発射する前、発射した直後に打ち落とすのが最も好ましいわけです。ただし、この段階のミサイルは相手国の領土内にあります。日本はこれまで相手国に達するようなミサイルをもって攻撃はしない、という方針できました。なので、しかたなく、ミッドコースやターミナルフェーズで迎撃する努力をしているわけです……。自国を守るために相手国の領土を攻撃することは憲法上許されると解釈されています」(18年11月20日付「日経ビジネス」)
 イージス・アショアによるミサイル防衛ではなく、「敵基地攻撃」にかじを切った理由がここであけすけに語られているが、まさに「柳条湖事件」をでっち上げ「自国(の権益)を守るため」と称して中国侵略戦争に突入した時と同じ論理が使えるということだ。
 また小野寺は「徴用工は解決済み」(19年2月)などと発言し、防衛相時代は翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事(当時)の辺野古の埋め立て承認撤回に対して、強権的に基地建設を進めてきた札付きの右翼だ。その狙いが戦争であることは明らかだ。

パククネ打倒した韓国に続く闘いを

 イージス・アショア配備撤回の理由は「ブースターの問題」と言われているが、それだけではない。
 この間の検察庁法改悪断念と黒川弘務元東京高検検事長の辞任、河井克行・案里夫妻の逮捕、何より地元住民を中心とした粘り強い配備反対の闘いが、イージス・アショア配備計画を断念に追い込んだのである。
 パククネ前韓国大統領は15年を前後し、民主労総をはじめ闘う労働組合を騒擾罪(そうじょうざい)などで次々と弾圧する一方、チェスンシル・ゲートなどで自身は腐敗を深めていた。そうした中で高高度迎撃ミサイル(THAAD=サード)配備や日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結などに突き進み、軍事を最優先させてきた。これに対する怒りが爆発し、「ろうそく革命」によってパククネは打倒され監獄にぶち込まれた。
 起こっている事態は韓国と同じである。安倍はイージス・アショア配備は撤回しても、沖縄・辺野古新基地建設については撤回しようとしない。改憲・戦争に突き進む安倍政権を、労働者階級の力で打倒しよう。
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