リニア新幹線は大破産 JR体制の崩壊が始まった
週刊『前進』02頁(3145号02面03)(2020/07/02)
リニア新幹線は大破産
JR体制の崩壊が始まった
JR東海が2027年度の品川―名古屋間開業を目指して進めるリニア中央新幹線の建設は破綻しつつある。JR東海自身、「2027年開業は難しい」と言わざるを得ない状況だ。
南アルプスをトンネルでぶち抜くリニアの工事が行われれば、大井川の水量は減る。静岡県は、水量を減らさない対策を示すようJR東海に求め、それがなされていないとして、今も着工を認可していない。
JR東海の見積もりでは、工事は最低でも6年半かかる。2027年度開業なら、今年6月には工事を始めなければならない。
大井川の水問題で工事は認可されず
JR東海の金子慎社長は6月26日、静岡県の川勝平太知事と会談し、ヤード(作業基地)の整備工事だけは認めてほしいと要請した。しかし、川勝知事は「ヤード工事は本体工事と一体なので認められない」とそれを拒んだ。これを受け、マスコミは「リニア開業延期」と一斉に報じた。JR東海は18年10月、「トンネル内の湧水を全量、大井川に戻す」と静岡県に約束した。しかしその後、「工事期間中は全量戻せない」と述べたり、「全量戻さなくても大井川の水量は減らない」と根拠なく主張したりした。この横柄な態度は、大井川流域の住民の怒りを買った。「リニア自体には反対しない」と言う川勝知事や、流域自治体が、JR東海と対立を深めたのはそのためだ。
資本家や権力者たちは今、改めてリニアの早期着工を叫んでいる。リニア沿線9都府県がつくる建設促進期成同盟会の会長で愛知県知事の大村秀章は、「リニアは国策事業。日本経済を引っ張る数少ない巨大プロジェクト。27年度開業は必ず達成してもらわないといけない」と述べた。
リニアを造っても乗る人などいない
緊急事態宣言が解除された後の6月も、東海道新幹線の乗客数はコロナ前の33%以下だ。ましてリニアを造っても、乗る人などいない。ところが大村知事は、「在宅勤務やリモートでのビジネス活動は定着すると思うが、人が高速移動で直接コミュニケーションをしながら仕事をする重要度は変わらない」と言う。経団連を先頭に資本家たちは、解雇を自由にするために、あらゆる労働がテレワークに変わるかのように言い立ててきた。だが、リニアが問題になると、一転してそれを否定するのだ。
品川―名古屋間のリニア建設には9兆円の巨費を要する。JR東海は、「国による3兆円の融資があるから問題ない」と言うが、残りの6兆円分は東海道新幹線の収益を充てる計画だ。そのプランも崩れている。
にもかかわらずJR東海と安倍政権は、リニア建設にのめりこむ以外にない。コロナ恐慌への対策として、資本には超巨大な建設事業が必要だからだ。
国策としてのリニア建設と、JR東海という個別資本の延命策は、これまでは重なっていた。だが、コロナ危機下でのリニア建設は、JR東海の経営破産に直結する。JR体制=国鉄分割・民営化自体が大崩壊しようとしているのだ。