ILWUが西海岸の港湾封鎖 アメリカ‒カナダ 6・19奴隷解放記念日に
ILWUが西海岸の港湾封鎖
アメリカ‒カナダ
6・19奴隷解放記念日に
「構造的な人種差別を終わらせる時だ!」「警察のテロルを止めろ!」
6月19日、ILWU(国際港湾倉庫労働組合)がアメリカ西海岸の全29港を8時間にわたり封鎖した。ILWUカナダも連帯して六つの港を封鎖したため、サンディエゴからバンクーバーまでの港がすべて業務を停止するという歴史的な事態となった。また、ワシントンやニューヨークなど全米で数百万人規模の労働者民衆が行動に立った。
英語の日付を省略して「ジューンティーンス」と呼ばれる6月19日は、黒人にとって特別な記念日だ。1863年に当時の大統領リンカーンが奴隷解放宣言を発したが、南部では依然として黒人が奴隷状態を強制されていた。しかし65年の同日、最後まで奴隷制が存続していたテキサス州でそれが撤廃されたのだ。以来毎年、黒人たちは各地で自らの歴史や文化を共有し、この日を祝ってきた。
当日、オークランド港は青年労働者をはじめ膨大な数の労働者民衆で埋め尽くされ、各支部の活動家や警察による犠牲者の遺族が次々と発言に立った。37年前に自らの兄を警察の暴力によって失ったローカル10のトレント・ウィリス委員長は、「今に至るまで多くの黒人が逮捕され、起訴され、投獄され、殺されている」と弾劾。労働者の力で構造的な人種差別を粉砕しようと訴えかけた。
集会後の市内デモは色とりどりの横断幕やボードを掲げて港を出発。オークランド警察署前で怒りの声を上げ、市役所前まで4時間にわたって闘いぬかれた。数百台の自動車やバイクのキャラバンも共に進んだ。
決定的なのは、設立当初から「差別はボスの武器」を掲げて人種差別と闘ってきたILWUだけでなく、広範な労働組合や市民団体が行動に立ち上がったことだ。警察の予算削減と学校からの排除を求めて闘うUTLA(ロサンゼルス統一教組)やミネアポリス市教組も先頭に立った。
さらに有色人種や移民が組合員の多数を占めるUNITE―HERE(縫製・繊維・ホテル・レストラン労組)、UPTE(大学専門職・技術職労組)、交通関係の労組、看護師労組、学生、先住民団体も合流。ムミア・アブ=ジャマル氏をはじめとする黒人政治犯の解放を求める声も上がった。SEIU(サービス従業員国際労働組合)などの既成労組も含めた巨大な共同行動が実現した。
一方で大統領トランプは当初、あろうことか1921年にアメリカ史上最悪の黒人集団虐殺事件が起こったオクラホマ州タルサで19日に選挙戦キックオフ集会を開催しようとした(非難が殺到し20日に変更)。白人至上主義者らにデモ隊への襲撃をけしかける行為であり、絶対に許すことができない。同市では前日から夜間外出禁止令が出され、州兵が配備された。
しかし、帝国主義の支配を覆す米労働者民衆の闘いの拡大は必至だ。
シアトル「解放区」に新たな社会の芽
ワシントン州シアトルのキャピトル・ヒルでは、警察を締め出し人民の手で解放区が運営されている。トランプは「国内テロ」だと叫んで連邦軍を投入すると脅すが、今まで暴力的にデモ隊を弾圧してきた州知事や市長さえ、今や解放区を事実上容認するしかない力関係になっている。トランプや警察権力こそが住民の命と生活を脅かしてきた事実は誰にも否定できない。
解放区内では食料やマスクなどの無料配布が行われ診療所や小さな図書館もある。各地から多くの人々が訪れて観光地のような雰囲気にもなる一方、「何のためにここにいるのかを忘れてはならない」と、黒人メンバーによる教育プログラムも行われている。
新たな価値観や文化も生み出されている。ライブに加えて人種差別やLGBTQを扱う映画の上映が行われ、黒人と同様に差別と闘ってきたた先住民ラコタ族・ヤカマ族の人々も訪問して楽器の演奏を行った。
警察機構の解体が全人民のスローガンとなり、労働者民衆自身の共同性に基づいた新たな社会のあり方を模索する挑戦が始まっている。この闘いと連帯し日本でも行動を起こそう。