高線量地の除染放棄許すな 福島 避難解除で住民に被曝強制

週刊『前進』02頁(3143号02面03)(2020/06/25)


高線量地の除染放棄許すな
 福島 避難解除で住民に被曝強制


 東京電力福島第一原発事故による「帰還困難区域」(地図)について、安倍政権は一部地域の除染を行わず避難指示を解除しようとしている。今夏にも原子力災害対策本部(本部長・安倍首相)を開き、解除要件を見直すという。

政府と東電には除染の責任ある

 2011年の福島第一原発事故により福島と東日本・そして海洋を高濃度に放射能汚染させた責任は、原発を推進してきた歴代自民党政権と東京電力にある。最低でもすべて除染する責任がある。にもかかわらず、除染を放棄することなど絶対に許されない。
 政府は原発事故後、一定の地域に避難指示を出し、「年間追加被曝線量が20㍉シーベルト以上の地域を段階的かつ迅速に縮小すること」「20㍉シーベルト未満の地域では、長期的に年間1㍉シーベルト以下になること」を目安に除染事業を行ってきた。
 そもそも「20㍉シーベルト」を除染と帰還の基準とすること自体、まったく非人道的で無謀・違法なことである。原発事故前、法律で定められた一般市民の被曝限度は「年1㍉シーベルト」(これさえ本当は許されない)であり、病院のレントゲン室などの放射線管理区域は、年にすると5・2㍉シーベルトである。放射線管理区域は一般の人たちの立ち入りが禁止され、許された人でも飲食などはもちろん禁止されている。原発などの労働者がガンや白血病で死亡した場合の労災認定基準は、年5㍉シーベルト以上だ。
 ところが国は福島原発事故で「原子力緊急事態宣言」を発令し、例外的に福島県にだけ20㍉シーベルトというとんでもない基準を押しつけているのである。福島県民には法律で決まった被曝限度の基準を適用しないということだ。
 国はこの不当な20㍉基準で除染事業を行い、帰還困難区域を除く地域で「除染は終了」と宣言し、18年までに避難指示を強引に解除した。その結果、現在も避難指示が続くのは帰還困難区域だけであり、国は、そのうちの特定の地域だけを「特定復興再生拠点」に指定し、23年までに避難指示を解除するとしている。

「古里を元の姿に戻せ」が住民の声

 今回問題になっているのはそれ以外の帰還困難区域であり、除染をしなくても、自然減衰などで線量が20㍉以下になった地域は、▽住民や作業員らが将来も住まない、▽未除染でも早期の解除を地元が求めている——などの要件を満たせば避難指示を解除する、というのである。
 安倍政権は、飯舘村長が未除染でも避難指示解除を要望していることを押し出し、これを〝渡りに舟〟とばかりに除染の放棄を策動しているのだ。だが、大熊町長が「拠点外でも国の責任で除染して解除を」と語っているように、帰還困難区域がある他の自治体はこれに反対の声を上げているのだ。
 6月3日付朝日新聞によると、安倍政権幹部は、飯舘村だけでなく帰還困難区域の除染そのものについて、「住民の帰還が少ないのに、お金はかかる。除染の意味は年々薄れている」と開き直り、「他の町村でも……未除染による早期解除を求める意向が出てくるはずだ」と得手勝手な見通しを語っている。
 この発言に安倍政権の狙いが明瞭に示されている。全域で除染の放棄を狙っているのだ。これに対し周辺の自治体と住民からは、「除染して元の古里の姿に戻してほしいという地域住民の思いとかけ離れている。国はこれまで通り責任をもって対応すべきだ」(葛尾村長)など強い怒りの声が上がっている。
 これまで除染にかかった費用は約3兆円。清水建設など大手ゼネコンが除染事業を受注し、1次2次と下請けに出し、その都度各段階で資本家どもが大もうけし、労働者を危険・過酷な労働条件で酷使し、被曝労働を強制してきた。
 安倍政権はその上であとの責任を放り投げ、高放射能汚染地帯を放置し、避難指示の解除までもくろんでいるのだ。さらに、この夏までに放射能汚染水の海洋放出まで決定しようと策している。「福島原発事故はもう終わった」とし、原発推進と核武装に突き進むためだ。
 福島の労働者人民に被曝を強制し、生活・生命を踏みにじる暴挙を絶対に許してはならない。
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