「送還忌避者」に刑事罰提言 外国人をどこまで虐げるのか!
週刊『前進』04頁(3142号04面01)(2020/06/22)
「送還忌避者」に刑事罰提言
外国人をどこまで虐げるのか!
6月15日、「収容・送還に関する専門部会」(法務大臣の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」のもとに設置)がまとめた「提言」が発表された。
退去命令を拒否する外国人(「送還忌避者」)に刑事罰を創設すること、「送還を回避するために難民認定申請を繰り返している」と判断した場合、難民申請中であろうと強制送還を可能とすること、仮放免中に逃亡した人にも罰則を科すことなどが盛り込まれた。
他方、長期化が大問題となっている収容期間について、「収容継続の要否を吟味する仕組みの創設を検討すること」とはあるが、「司法審査を要することは問題が大きい」から反対だと表明している。収容期間の上限を設けることも提言されなかった。
収容の決定から継続の要否もすべての権限は、法務省・出入国在留管理庁が握っている。悪名高い戦前の治安維持法による予防拘禁でさえ、検事の請求に基づいて裁判所が決定し、その期間も原則2年とされた。「収容継続の要否を吟味する仕組み」というなら、なぜ司法による審査を排除するのか。
この「提言」に対し、15日午後、記者会見を行った「収容・送還問題を考える弁護士の会」は、新たな罰則の提案に対し「外国人長期被収容者らだけでなく、彼らをサポートするボランティアや弁護士なども、ほう助や教唆などの罪に問われかねない」と強い懸念を表明。また、難民認定の再申請中に送還される可能性があることについて「事実上、難民条約からの離脱に等しい」と弾劾した。
昨年、日本で難民認定を申請した外国人は1万375人。そのうち難民認定は44人(0・42%)、難民とは認めなかったが「人道的配慮」で在留を認めた37人を加えてもわずか81人(0・78%)だ。世界から「日本は難民鎖国だ」と批判されるほどの水準だ。戦争や紛争から命がけで逃れてたどり着いた日本で、帰れと言われても帰れず、粘りに粘って生き抜くことが、刑事罰の対象だというのか!
2020東京オリンピックの治安管理強化で入管収容施設での仮放免許可が激減し、被収容者の長期収容が激増した。昨年5月以降、長期収容に抗議する被収容者のハンガーストライキが全国で広がった。
東日本入国管理センター(牛久入管)は、ハンストで衰弱し命が危ぶまれる被収容者について、ハンスト中止を条件に仮放免許可を出したが、2週間後には再収容するという残酷なやり方を考え出し、実行した。怒りは燃え上がり、一時ハンストは100人を超えた。
この最中、長崎の大村入国管理センター(大村入管)では昨年6月24日、ハンストを行っていたナイジェリア人男性が飢餓死!
今、コロナ対策として「3密」の入管施設からの仮放免が推進されているが、なお全国で500人を超える外国人が収容されている。仮放免者も今後どうなるか、いつまた再収容されるかもしれない不安と恐怖の中にいる。しかも、仮放免者は働くことを禁止され、10万円の給付からも排除され、困窮している。
「提言」に基づき法務省・入管庁は、早急に入管法改悪案を準備しようとしている。どこまで外国人を虐げるのか! 労働者階級の正面課題として入管闘争を闘い、改憲と戦争の安倍を打倒しよう!