都立病院をつぶすな 医療破壊する独法化阻止 命を切り捨てる小池たおそう

週刊『前進』04頁(3142号02面01)(2020/06/22)


都立病院をつぶすな
 医療破壊する独法化阻止
 命を切り捨てる小池たおそう

(写真 アベ退陣!新宿デモの前のリレーアピールで一陽会労組の坪井静委員長が都立病院の独法化反対を訴えた【6月14日 新宿駅東口アルタ前】)

(写真 5月1日のメーデー闘争で、労働者が「都立病院なくすな」と書いたボードを持参し、首相官邸前で訴えた)


 小池百合子都知事は7月都知事選への立候補表明で「都民の命を守ると同時に、経済をよみがえらせ『稼ぐ』東京を実現する」と語った。しかし小池は「命を守る」どころか「稼ぐ」ことが全てだ。現に3月31日には、コロナ感染と最前線で闘う都立・公社14病院を営利化するために、地方独立行政法人化(独法化)する決定を行っている。絶対粉砕しよう。今こそ「都立病院つぶすな! 小池倒せ」の声を上げよう。

院内感染・医療体制崩壊させたのは安倍と小池だ

 小池は立候補表明と同時に、コロナ対策「東京アラート」の解除・終了、「ステップ3」への移行を宣言し、「『自粛』のお願いばかりをしてきたが、これからは自らを守る『自衛』の局面」と言い放った。一切の補償を拒否するのみならず、これまで以上にコロナ感染からの「自衛」すなわち自己責任にする。そして「稼ぐ東京」の核心が「2022年度内を目途に都立病院・公社病院を一体的に地方独立行政法人に移行する」ということだ。
 小池は安倍とともに五輪開催に執着したあげく、「都市の封鎖、ロックダウンなど強力な措置も」と脅しに転じ、自粛の名のもとに「ライブハウス」「夜の街」などと名指しして感染拡大の責任を押し付けてきた。「医療従事者へ感謝」と言う裏で、医療現場へのマスクなどの供給もまともに行ってこなかった。
 感染症指定病院である都立墨東病院では、2月末の段階で医療用マスクが枯渇し、使い回しを指示する文書が貼り出され、国会でも取り上げられた。3月29日には救急医療の受け入れを一時停止する事態にまで追い込まれた。ところがその深夜、病院経営本部は墨東病院へ乗り込み、受け入れ停止を強引に撤回させた。
 命を守る砦(とりで)である都立病院での院内感染と医療体制崩壊をもたらした全責任は都知事・小池にある。
 そうした中でもコロナ感染の第一波をしのげたのは、医療労働者が昼夜を徹して感染症病床をはじめ医療現場を守りぬいたからだ。なによりも、いくつかの病棟を閉鎖してでもコロナ感染症患者を受け入れることができる公立病院の体制があったからだ。
 現在、コロナ患者を受け入れた病院ほど赤字になっている。都立病院が独法化されたら、独立採算制のもとで、コロナ対応に必要な人員と物資を投入すればするほど人件費は削られる。そんな状況で、どうして安心感と誇りをもって働けるというのか!
 コロナ感染がさらけ出したのは、公立病院を民営化し、病床を削減してきた新自由主義医療の破産だ。コロナなど第2種感染症に対応できる病院は全国で475病院に過ぎず、その8割は公立病院や公的病院が占める(『世界』2020年7月号伊藤周平論文より)。それでも安倍政権は公立・公的440病院の再編・統合を進めようとしている。そしてその本丸に位置するのが小池による都立病院の独法化だ。

独法化は「儲ける医療」、民営化・労組破壊が核心

 「あとは野となれ山となれ」とばかりに「儲(もう)ける医療」=医療の営利化をとことん進める安倍・小池を打倒し、医療を取り戻すことが、コロナ時代を生きぬく唯一の道だ。
 東京都が3月31日に決定した「新たな病院運営改革ビジョン」(ビジョン)が打ち出した都立病院独法化の本質は何か。
 第一に、独立行政法人化とは民営化であり、都立病院つぶしだ。独法化によって都立病院職員約7千人が公務員身分を奪われる。地方公営企業法(一部適用)から地方独立行政法人法への規定に移ることで、「企業会計原則」(第33条)、「企業の経済性の発揮」(第81条)の営利優先が一切の原理となる。
 また都立・公社14病院を統合した「病院機構」は、これまでの都議会による制動がなくなり、都知事が任命した理事長のもとで役員・理事会が構成されることになる。都知事―理事長の独裁体制に転換し、病院の統廃合、完全な民営化も意のままになる。
 小池のいう「これまでどおり都立病院であることに変わりはありません」は大ウソだ。
 第二に、都立病院労働者の賃金と労働環境を根本から破壊する。
 ビジョンでは「人材の機動的な確保」「専門性をきめ細かく反映した評価制度や仕事の成果を処遇に反映した給与体系」などの言葉が並ぶ。すでに独法化された東京都健康長寿医療センターでは賃金カーブが低く抑えられ、50歳以上はほとんど賃金が上がらない。そして売り上げの50%以内に人件費率を抑え込むという基準が設定されている。
 第三に、独法化は都立病院に働く労働者の誇りと団結をズタズタにする。
 院内感染が起こる壮絶な現場においても自らと患者の命を守りぬいたのは、感染症病床に従事する医師・看護師の尽力、そしてゾーニング(区分け)を徹底しサポートする現場のチームプレーだ。民営化と成果主義による競争原理はこれを根本から阻害し破壊する。
 第四に、公的な医療を破壊し「儲ける医療」へ転換させる。
 都道府県立病院で初めて独法化された大阪府立病院では、がんセンターの個室代が独法化前の7500円から1万5千円、最高で約5万9千円にまでなったという。入院単価はほぼ2倍になった。
 第五に、最大の核心は国鉄分割・民営化、郵政民営化と同じく労働組合破壊にある。都労連―都庁職の中心部隊である病院支部・衛生局支部の解体を許してはならない。
 都立病院独法化の入札は国鉄、郵政の民営化に関わったあずさ監査法人が3月18日に落札した。持続化給付金の利権を電通などが独占しているのと同様、民営化の利権に群がる構造が露わとなっている。

コロナ下での新自由主義攻撃は絶対に粉砕できる

 都立病院独法化は絶対に粉砕できる。コロナ・パンデミックの中で、公立病院を潰し「儲ける医療」に全面転換する安倍・小池の策動はあまりにも不正義であり破産的だからだ。
 小池は都知事選立候補の会見で「コロナ対策が喫緊の課題」と掲げつつ、しかし都立病院独法化について一言も触れられない。1年前までマスコミをも使って吹聴されていた「都立病院は赤字」論は、現場の反撃とコロナ情勢によって吹き飛び、都病院経営本部はビジョンで「赤字論」を独法化の論拠にすることはできなかった。
 「行政的医療の安定的・継続的な提供」----これが小池と都病院経営本部の独法化論のキーワードだ。しかしこの「行政的医療」という用語は、石原都政時代に病院経営本部が都立病院民営化のためにでっち上げた造語なのだ。90年代まで都立病院の機能分類として言われた「高度医療」「専門医療」「行政医療」「一般医療」での「行政医療」とはまったく違うインチキな概念を持ち出し、ある時は感染症指定病院だった豊島病院、荏原病院を「行政的医療の機能が低い」と公社化(第三セクター化)し、またある時は「行政的医療の広域化」と称して三つの小児科病院の統廃合を合理化した。こうした詐欺的手法を使って元々の「行政医療」を全面的に切り捨て、「儲ける医療」への大転換をしようというのだ。
 しかし、コロナがもたらした主客両面に渡る階級情勢の大転換に、こんなインチキは通用しない。都立病院の現場で必死にコロナ感染と闘う労働者・労働組合が、小池らのペテン的手法に怒りをもって立ち上がった時に、独法化攻撃は絶対に粉砕できる。
 全国そして全世界の医療・介護労働者が「自分たちを守ることなしに患者の命も守れない」「医療・介護現場にマスク・防護具を」と叫び、公的医療の破壊や資本の合理化と不退転に闘っている。この階級的な団結をもって都立病院・公社病院で働く労働者・労組と共に闘い、独法化を粉砕しよう。5・1メーデーを闘った医療・介護・福祉労働者を先頭に、「都立病院独法化絶対反対」「公立・公的440病院再編・統合をやめろ」「それがコロナ感染から命を守る唯一の道だ」と訴え、都知事選過程で小池打倒のうねりをつくり出そう。7・26国鉄闘争全国集会に結集しよう。

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