実戦に向けて強まる日米軍事同盟 サイバー・電磁波でも対中対決

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週刊『前進』02頁(3141号02面03)(2020/06/18)


実戦に向けて強まる日米軍事同盟
 サイバー・電磁波でも対中対決


 日米安保同盟が、中国に対する戦争同盟としての性格を一層強めている。そして、日米軍事同盟強化の重要な分野として今日、サイバー・電磁波・宇宙の領域で重大な動きが進んでいる。航空自衛隊に5月、宇宙作戦隊が創設された(本紙5月28日号参照)。米宇宙軍と連携して宇宙空間の監視任務を担うとしているが、その狙いは情報収集衛星(偵察衛星)を運用して日米で情報を共有し、中国・北朝鮮に対する先制攻撃体制を構築しようとするものである。
 さらに、サイバー分野で日米同盟が進んでいる。サイバーとはインターネットが作り出す情報空間のことだ。現在では軍隊も民間もさまざまなシステムにインターネットを使っている。だからここにウイルスを送り込んで情報を盗んだり、偽情報を送ったり、電力・通信・水道その他の重要インフラを攻撃することができる。米・中・ロシアを先頭に、サイバー戦の研究・開発競争が激化している。

軍や都市機能破壊

 米軍のサイバー軍は133部隊6200人超で運用されている。軍のネットワークを守るだけでなく、サイバー戦で敵を攻撃する「戦闘任務部隊」もある。一方、自衛隊は14年に「サイバー防衛隊」を創設した。現時点で規模は220人だ。政府は「サイバー空間でも専守防衛が前提」(河野太郎防衛相)と言っているが、9条改憲でこの制約を突破しようと狙っている。
 地上戦闘とサイバー戦を組み合わせた「多次元戦闘」はすでに実戦が行われている(表参照)。07年にイスラエル軍は、シリアの核施設を空爆で破壊したがこの時、シリア軍の防空システムを無力化するサイバー兵器(米軍が開発したと見られる)が使われた。昨年9月には、米軍と自衛隊が「多次元戦闘」の演習を共同で実施した。
 また、中国は軍隊が通信会社職員や個人と連携し、「サイバー民兵が数十万人いる」と言われている。昨年夏には、台湾の発電所などの重要インフラをサイバー攻撃で破壊する模擬訓練を実施した。

武力攻撃と見なす

 昨年4月の日米・外務防衛担当会合(2プラス2)で日米は、サイバー攻撃が一定の状況で日米安保条約第5条を発動する「武力攻撃」と見なしうると確認した。つまり、日本の施政権下で日米どちらか一方がサイバー攻撃を受ければ、武力攻撃と見なして共同対処するというのである。これは日米安保同盟の重大なエスカレートである。ネット空間の事件(でっち上げもあり得る)が大規模な戦争の引き金となりかねない。しかも、サイバー戦では平時と戦時の境目がなくなり、戦時体制の恒常化のような事態になっている。

電磁波めぐる戦争

 さらに、電磁波をめぐっても攻防が激化している。電磁波は、部隊間の無線通信、全地球測位システム(GPS)、航空電子機器、ミサイル攻撃、レーダーなど、軍事行動に不可欠だ。安倍政権は18年末策定の「防衛大綱」に「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力の強化」を盛り込んだ。防衛省はF15戦闘機に電子戦装置を搭載することを計画している。
 重大なのは、電磁パルス(EMP)爆弾だ。電磁パルス爆弾とは、高空で瞬間的な高電流、高電圧を発生させ、航空機や艦艇、宇宙システムなどの機能を広範囲に破壊するものである。さらに都市に大規模停電を起こし、電子機器や交通網、通信等のインフラを破壊する。
 米トランプ大統領は昨年3月、EMPに関する研究を、同盟国と連携して強化するよう指示した。自衛隊も調査・研究を進めている。EMP爆弾は、核爆弾を高高度で爆発させる方法が有力であり、米日の研究がこうした方向に進む危険性がある。
 日帝と米帝は、日米安保同盟のもとでこのように対中国・北朝鮮の戦争体制づくりを進めている。また、サイバー・電磁波・宇宙などの領域での兵器開発は、三菱電機・三菱重工業などの大資本の危機を救済し延命させるものである。安倍の9条改憲策動は、米・日帝の中国・北朝鮮侵略戦争の動きを一層進めるものだ。階級的労働運動の力で絶対に阻止しよう。

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国家が関与したとみられるサイバー攻撃の例
07年9月 イスラエルがシリアの核施設空爆で、防空システムを無力化
08年8月 ジョージア政府がロシアからとみられるサイバー攻撃を受けた。並行してロシア軍とジョージア軍は砲撃戦を展開
10年10月 イランのウラン濃縮施設の遠心分離機破壊。米とイスラエルが仕掛けたとみられる
17年4月 北朝鮮の弾道ミサイル発射実験が相次ぎ失敗。米のサイバー攻撃の可能性を米メディアが報道
19年6月 イランによる米軍偵察機撃墜の報復で、米がイランのミサイル発射機を制御するシステムを無力化
20年1月 三菱電機が中国系ハッカーに攻撃され防衛省が研究する「極超音速滑空ミサイル」の性能情報が漏洩したと発表

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