新自由主義への反乱始まる トランプと安倍を共に倒す時が来た 労働運動の復権で新たな時代を

週刊『前進』04頁(3140号01面01)(2020/06/15)


新自由主義への反乱始まる
 トランプと安倍を共に倒す時が来た
 労働運動の復権で新たな時代を


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 米ミネソタ州ミネアポリスで発生した警官による黒人男性虐殺事件への抗議デモは、またたく間に全米・全世界に波及し、今も各地で続いている。地球上のあらゆる場所で、あらゆる差別と国家暴力に抗議し、搾取と貧困のはびこる社会の根底的変革を求めて闘いが燃え広がっている。誰かが「デモをやろう」とSNSで発信すればたちまち数万の人が決起するということが、世界中の都市で起こっている。始まったのは新自由主義への歴史的大反乱だ。時代は大きく動きだした。これに続く闘いを日本でも巻き起こそう!

米帝の存立揺るがすデモ

 全米で広がるデモは、黒人に対する差別と日常的暴力に支えられてきたアメリカ帝国主義の存立そのものを根底から揺るがしている。1964年の公民権法制定後もなくならず、米国社会の中に深々と組み込まれてきた人種差別は、権力者や資本家が労働者階級を分断するための最も凶悪な武器となってきた。だが今や事態は逆転し、黒人虐殺事件への抗議デモを通じて壮大な階級的団結がよみがえろうとしている。
 誰もが口にしているのは「社会の変革」だ。首都ワシントンDCでデモに参加した黒人女性は、「悲劇が何度も繰り返される社会を今こそ変えなければならない」と訴える。多くの人々がジョージ・フロイド氏の虐殺事件を「ラスト・ストロー(我慢の限界を超える出来事)」と感じ取り、決起している。今年3月には、ケンタッキー州ルイビルの自宅で就寝していた黒人女性ブレオナ・テイラー氏が、「麻薬捜査」を理由に踏み込んできた警察に銃撃され虐殺された。救命救急士として感染症対策の最前線に立っていたテイラー氏の虐殺事件は、米国社会で日常化した黒人に対する国家暴力の残忍さを象徴する事件として、フロイド氏の事件と共に多くの人々を立ち上がらせている。
 トランプはデモを「国内テロ」と罵倒(ばとう)し、各地で激化する暴動や略奪に対して連邦軍投入をちらつかせて恫喝した。だが、そもそも黒人を殺害しても罪に問われず、日常的に暴力をほしいままにし、今もデモの現場で催涙弾やガス銃を使い、丸腰のデモ参加者や報道関係者を警棒でめった打ちにしているのは警察権力の方だ。この暴力装置に守られて搾取・収奪の限りを尽くしているのが、トランプを頭目とする米帝ブルジョアジーだ。
 「女性たちの行進」運動のリーダーの黒人女性は、ミネアポリスの集会で訴えた。「暴動を止めたいなら方法は簡単だ。ミネソタ州だけではなく、黒人が殺害されているすべての州ですべての警官を逮捕し起訴すればいい。略奪が悪いことだなんて私たちに説教するな。略奪者はあなたたちだ。アメリカは黒人から略奪してきた。開拓者たちはこの土地に来たとき先住民から略奪した。私たちに略奪と暴力を教えたのはあなたたちだ!」

全労働者の団結と反撃を

 米国内の新型コロナウイルス感染者は190万人、死者は11万人を超えていずれも世界最多となり、失業保険申請者数は4千万人を突破した。感染症の被害も失業も、黒人やヒスパニックが最も深刻だ。米議会予算局によると、米国の全労働者のうち黒人は約12%だが、看護、介護、バス運行や運送業など感染リスクの高い職種では黒人労働者の割合が20%を超える。
 もともとアメリカにおける新自由主義は、1960〜70年代にベトナム反戦闘争と一体で高揚した黒人解放闘争(キング牧師が「暴動は声なき者たちの言語だ」と言ったように、激しい都市暴動が闘われた)に対する徹底的な弾圧をもって始まった。それは黒人や移民の労働者を貧困の最底辺へ突き落し、労働者階級の中に深々と分断のくさびを打ち込んだ。だがコロナ危機ではっきりしたのは、その最も差別・抑圧された最貧困層の人々こそ、社会に最も必要な労働を担ってきたという事実だ。
 「日刊動労千葉」8799号は次のように訴えている。「コロナ感染症が拡大する中で、医療・介護や、鉄道・運輸、清掃などで働く現場労働者の存在、その仕事の重要性が注目されている。最近では『エッセンシャルワーカー』などとも呼ばれている。エッセンシャルとは『本質的な』とか『必須の』という意味だ。〝本質的な仕事をする労働者〟〝必須の労働者〟----そのとおりだ。だが、JRはその必須の労働者をどれほど軽んじてきたのか。どれほど酷(ひど)い扱いをしてきたのか。鉄道を感染源にしないためにも、それこそが見直されなければならない」
 AI(人工知能)などでは代替できない、社会に必須とされるあらゆる業務を担っているのは現場労働者だ。その労働者が低賃金・無権利状態で働かされ、資本の都合でいつでも解雇される。こんな転倒したあり方をこれ以上許すわけにはいかない。今こそ労働組合のもとに団結して闘おう。
 在日クルド人青年への警察の暴行や入管収容所での虐待、女性への暴行は、米国で起きていることと同じだ。6・20難民デー行動に集まろう(要項4面)。

大量解雇攻撃はね返そう

 安倍政権は今、コロナ危機下での相次ぐ失策、東京高検検事長・黒川弘務の辞職に加え、中小企業への持続化給付金の業務委託をめぐる巨額の不正(記事3面)を暴かれて窮地に陥っている。経済産業省が769億円で業務委託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」なる実体のない幽霊会社を通じて、大手広告代理店の電通や竹中平蔵が会長を務める人材派遣会社・パソナに何百億円もの税金が流れる仕組みがつくられていた。安倍がここまで電通に便宜をはかるのは、国民投票も含めた改憲へのプロセスにおいて、日本のメディアを牛耳る電通を自民党の宣伝機関として使いきることが不可欠だからだ。この事業を盛り込んだ第2次補正予算案が6月10日、衆院本会議を通過した。
 他方で、労働者とその家族には大量解雇が襲いかかろうとしている。厚生労働省は9日、コロナ危機に伴う非正規労働者の解雇や雇い止めが5日時点で4943人となり、この1週間で倍増したと発表した。都道府県の労働局やハローワークへの相談件数などから集計したもので、実態はこの数字をはるかに上回る。
 こうした中、経団連会長・中西宏明は報道各社のインタビューに答え、いつでも解雇可能な「ジョブ型雇用」への転換やテレワークの推進、新卒一括採用の廃止、原発再稼働などをこの機に進めるべきだと主張した(6月2日付朝日新聞)。中西の言う「デジタル化をてこにした成長戦略」とは労働者の総非正規職化と解雇自由化だ。
 だが安倍や中西には何の展望も勝算もない。今や反撃の時だ! あらゆる職場で闘いを巻き起こし、あふれる怒りの声を7・26国鉄闘争全国集会に集めよう。

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