フランス 医療・介護労働者がスト 命懸けの労働に賃上げを
フランス
医療・介護労働者がスト
命懸けの労働に賃上げを
フランスで5月25日、病院や高齢者介護施設の労働者がストライキを含む全国統一行動に立ち、賃上げと一時金支給、医療・介護施設・人員の削減停止などの実施を要求した。
全国統一行動は、SUD(団結・統一・民主)の社会的保健連盟を先頭にCGT(労働総同盟)、FO(労働者の力)の3労組全国組織が呼びかけた。ストライキは6月16日まで各地で断続的に行われる。
パリではSUDの社会的保健連盟が保健省に向かってデモ行進し、同省前で集会を開いた。保健省で開かれた医療改革に関する政労使の協議会の第1回会合に合わせた行動だ。
協議会にはSUDを含め諸労組も招かれた。参加者は総勢300人。労働者や利用者は政府が選んだ15人のみ。しかも労組の発言は労使協調のCFDT(フランス民主労働総同盟)の1人だけ。発言のほとんどは経営者と医師で占められた。圧倒的に政府主導だ。
SUDは協議会参加の前提条件として3大要求の実現を挙げている。①全医療・介護労働者の月300ユーロ(約3万7千円)の賃上げ、②公的医療機関・人員・器具・ベッド削減の停止、③公的医療機関における臨時職員全員の雇用契約あるいはインターンシップだ。医療制度改革論議より3大要求の実現が優先だということだ。
1500ユーロ支給の回答かちとる
3月初め以来の新型コロナウイルス感染症による死者2万9千人の半分が高齢者介護施設の入居者だという。介護労働者も多数が命を落とした。介護労働者にとってボーナス1500ユーロの即時支給と月300ユーロの賃上げは切実だ。
北東部のマルヌ県でコリアンが経営する高齢者介護施設の労働者は、25日正午から午後3時まで持ち場を離れ、施設前で集会を開いた。コリアンの経営陣は当初585ユーロを支払うと言っていたが、その日の終わりには要求どおり1500ユーロ支払うと回答した。コリアンは全国7500の高齢者介護施設のうち308を運営する大手だ。1500ユーロが全体に波及する可能性が高まった。
救急医療改革を求めて病院スト
医療・介護労働者の闘いはコロナ危機の前に始まっていた。昨年3月、「黄色いベスト」運動に呼応してパリのサンタントワーヌ病院で「公立病院資金不足の解消と看護師の待遇改善」を要求してストライキが行われた。当局の回答は「産休要員補充と人員増、看護師への250ユーロの手当」だった。労組は「手当ではなく賃上げ、人員増」を要求し闘い続けた。
6月、ストライキはパリ25病院、全国80病院に広がった。同月、全国的「共闘組織」が生まれ、200人の看護師が保健省までデモ行進した。
毎週土曜日の黄色いベスト運動など地方の住民運動が全国の病院労働者をつなげ、「病院労働者統一行動」に発展した。最大の焦点は救急部門になった。
9月9日、200以上の救急病院がストライキに突入した。「ストライキによる救急治療室閉鎖」は法律で禁止されている。しかし、救急治療室に要員を残すなどしてストライキを決行・継続した。この実力行動に対してフランス国民の80〜90%が支持した。
9月13日には「看護師は疲れ、患者は危険にさらされている」「救急患者を待たせるな」のスローガンで救急車のサイレンを鳴らしながら看護師のデモ隊列が保健省に向かって進んだ。統一要求は、①月300ユーロの賃上げ②救急要員1万人増③ベッド不足解消だ。政府は「救急医療従事者に一時金100ユーロを支給する」「医療に7千万ユーロを追加投入する」と回答したが、労働者はこれを不服として病院ストを継続・拡大した。
11月20日、首相と保健相は公立病院の危機を打開するために「3年間でさらに15億ユーロ投入する」「看護師・専門看護師に賃金を補助する」と回答した。闘いは12月5日からの年金改悪粉砕ゼネストと完全に一体化し、年を越した。そこにコロナ危機が発生したが、階級闘争はより激しく闘われている。全世界が内乱状態だ。国際連帯で闘おう。