コロナ・大失業と闘うアメリカ教育労働者 地域を組織するUTLA
コロナ・大失業と闘うアメリカ教育労働者
地域を組織するUTLA
アメリカで確認された新型コロナウイルスの感染者は180万人、死者は10万人を超えた。この感染爆発とロックダウンのもと、特にサービス部門が打撃を受けている。アメリカでは非農業部門被雇用者の71%がサービス部門だ。
感染拡大の始まりから5月26日までで失業手当申請者は4千万人以上になった。レストラン・ホテルなどの労働者を組織する労組UNITE―HERE組合員の98%が失業状態だ。
ロサンゼルスのUNITE―HEREローカル11(第11支部、3万人)は、ロサンゼルス統一教組(UTLA、3万5千人)の組合員にとっては、生徒たちの保護者であり、また昨年1月の学校ストライキの時、ピケットやスト集会に大部隊で登場した仲間だ。
地域の生活を守る闘いと一体で
3月12日、UTLAは「学校の先制的休校を求める声明」を出し、学区当局に休校を認めさせた。だが、学校閉鎖は地域の生活を守る闘いと一体でなければならない。実際、昨年1月の学校ストライキでは給食の代わりとなる食料配布体制をUNITE―HEREなどとともにつくり上げてきた。
声明では、「数十万人のホテル労働者......が失業の危機にある現在......もっとも影響を受ける生徒や家族への支援資金を直ちに出す」、地域の全労働者への「有給の病休」、休校で昼間も子どもの世話をしなければならない保護者への財政支援、食料の配布などが強調された。
しかし、地域を組織するためにも、UTLA組合員自身を改めて組織する必要がある。
オンライン授業化に対して反撃
休校時の生徒の学習保障のためにオンライン授業が必要と言われる。だが、タブレットやパソコンもネット接続もない生徒が多い。オンライン化は生徒切り捨てになりかねない。
また、監視と個人情報収集という重大問題がある。1974年に成立したFERPA(家庭教育及びプライバシー法)を、オバマ政権が改悪し、学校の個人情報管理の外注化、企業のデータ収集の合法化が行われた。2014年にロサンゼルスで導入されかけたiPad授業は、アップルと結託した教育・出版の巨大企業であるピアソン社の教育支配を許すものであった。教員の授業の一挙手一投足を監視する体制づくり―労組破壊に使われるとともに、生徒の個人情報を使って莫大(ばくだい)な利潤をあげるのだ。日本のベネッセ事件を引くまでもなく、インターネットを通じての第三者への情報流出の危険も大きい。UTLAは、このiPad導入と全力で闘い、勝利した経験を持っている。
UTLAは、オンライン授業の開始に際して、市内各地域・各学校で組合員のZoom(オンラインビデオ会議アプリ)討論を組織した。そして、当局と団体交渉し、休校中の教育スケジュールは教員が決定できること、ビデオ授業をする義務はないこと、オンライン授業をした所でも休校解除の後に必ず元に戻すことを確約させた。特に大きな成果は、職員会議に実際に出席する権利があると認めさせたことだ。
組織拡大し解雇攻撃を迎え撃つ
全米各地で学校予算削減・解雇攻撃が始まっている。UTLAは、それに先制的に反撃している。
まず、コロケーション反対闘争を行った。「コロケーション」とは、公立学校の施設内にチャータースクール(公設民営校)を同居させることだ。ソーシャルディスタンスが叫ばれる状況であるにもかかわらず、別の学校職員・別の生徒を同じ場所に入れるというのだ。コロケーション反対闘争で作り出した現場の力関係は、PERB(州公務員雇用関係委員会)を動かした。アライアンスというチャータースクールグループの全5校の教職員をUTLA組合員に組織したことが全面的に承認された。
また、5月25日にミネソタ州ミネアポリスで警察が黒人男性のジョージ・フロイド氏を虐殺した事件に対して、直ちに抗議行動を行い、組合内の団結、地域内の団結を強化している。
集まること自体に工夫が必要な情勢下でも、爆発的な規模で闘いが組織されている。