資本救済の第2次補正予算 人民の生活より企業の延命優先

週刊『前進』02頁(3137号01面03)(2020/06/04)


資本救済の第2次補正予算
 人民の生活より企業の延命優先


 安倍政権は5月27日、2020年度第2次補正予算を閣議決定した。4月30日に国会で成立したばかりの第1次補正予算に続き、政府が直ちに第2次補正予算の編成に着手せざるを得なかったことに、コロナ危機がもたらした恐慌情勢の深刻さが表れている。
 第2次補正予算の事業規模は、第1次補正予算と同様の117兆1千億円に膨らんだ。ただし、いわゆる「真水」と呼ばれる国の一般会計からの財政支出は31兆9114億円にとどまる。これに、財政投融資の39兆4258億円や地方自治体の支出を加え、さらに金融機関などの民間企業の事業も含めた総額が、117兆円という数字だ。

国による大企業への資本注入も

 安倍政権はこの補正予算で、労働者人民の生活が少しでもよくなるかのように言い張ろうとしている。そのために、医療や介護に従事する労働者に最大20万円を給付することや、雇用調整助成金の日額を8330円から1万5千円に引き上げることなどを、ことさらに押し出している。
 しかし、雇用調整助成金の増額に充てられるのは5千億円以下、医療や介護労働者への給付金も予算規模は1兆円に満たない。
 予算の大半を占めるのは、資本を救済するための支出だ。一般会計の支出分約32兆円のうち11兆6390億円が、「資金繰り対応の強化」という名で企業への融資に充てられる。
 第2次補正予算のこうした性格は、約39兆4千億円の財政投融資の内訳を見ると、さらに明らかだ。21兆9千億円が中小企業への融資、1兆3200億円が医療・福祉事業者への融資とされる一方、15兆円分が政府系金融機関による大企業への「劣後ローン」などに割り当てられる。「劣後ローン」は、返済を受ける優先順位が通常の債権より低く、実質的には株式に近い。つまり、日本政策投資銀行などの政府系金融機関を通して、国が企業に資本を注入するのだ。
 政府は、これを呼び水に民間の金融機関にも企業への融資を促し、「資金繰りに万全を期す」と言う。
 具体的に安倍政権がこうした形で救済しようとしているのは、航空機がほぼ全面運休して苦境にある全日空だ。だが、コロナ危機でなぎ倒されかねない大企業は、全日空だけではない。
 トヨタなどの自動車大手や鉄鋼、日本航空やJR各社、私鉄大手も、資金繰りに詰まって銀行からの借り入れや社債発行を拡大している。こうした状態にある大資本を救うことが、補正予算の最大の目的だ。
 他方、売り上げが減った企業に支給される「持続化給付金」の増額分1兆9400億円や、家賃支援給付金2兆242億円は、中小企業を維持するものとしては余りに少ない。
 さらに、今回の補正予算では、総額約32兆円の一般会計のうち、約3分の1の10兆円が、あらかじめ使い道を定めない予備費とされた。安倍政権は「事態に迅速に対応するため」と言い張るが、これは予算という概念を否定する異常な事態だ。財政面で全権委任を求めるに等しいこの暴挙は、緊急事態条項の新設を狙う安倍の改憲策動と一体だ。

「持続化給付金」で国家資金横領

 予算の執行過程そのものも、安倍を取り巻く資本家たちによる利権あさりの対象にされている。
 月の売り上げが50%以上減った企業に対し、最大200万円を補助する持続化給付金をめぐり、国家資金の横領とも言うべき事態が新たに発覚した。この業務を769億円で国から請け負った「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が、ほぼすべての業務を広告大手の電通に749億円で再委託していたのだ。差額の20億円は、まるまる同協議会の取り分になる。しかもこの協議会は電通や人材派遣大手のパソナを中心に立ち上げられたものだ。
 緊急事態宣言の発出に対して休業補償を求める声が沸き上がった際、安倍政権は最高でもわずか200万円の持続化給付金があることを理由に、それを拒んだ。持続化給付金は、安倍がその責任を逃れるためにつくられた制度だ。
 さらに持続化給付金の給付申請は、オンラインによるものしか認められていない。これによって安倍政権は行政のデジタル化を先行的に進めようとしている。
 第2次補正予算にも、「教育ITC環境整備」に502億円、「スマートライフ実現のためのAIシミュレーション事業」に14億円が盛り込まれた。安倍の関心事は資本をもうけさせることにしかない。
 補正予算の成立を阻み、安倍政権を今こそ倒そう。

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第2次補正予算
支出のほとんどは資本救済のため

企業の資金繰り対応強化 11兆6390億円
売り上げが減った企業への家賃補助 2兆242億円
売り上げが減った企業への「持続化給付金」の増額 1兆9400億円
地方創生臨時交付金の拡充(主な使途は緊急事態宣言で休業した事業所への給付金) 2兆円
医療提供体制の強化(医療・介護従事者への給付金を含む) 2兆9892億円
雇用調整助成金の拡充 4519億円
低所得ひとり親世帯の拡充 4519億円
予備費 10兆円

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