自衛隊が「宇宙作戦隊」新設 米軍と一体化し先制攻撃準備
週刊『前進』02頁(3135号02面03)(2020/05/28)
自衛隊が「宇宙作戦隊」新設
米軍と一体化し先制攻撃準備
検察庁法改悪案への猛抗議が安倍政権を直撃する中、防衛省は5月18日、航空自衛隊に新たに発足した宇宙専門部隊「宇宙作戦隊」の隊旗授与式を省内で行った。2018年に決定した防衛計画の大綱に基づくもので、当初は22年頃の発足を予定していた。だが昨年12月のアメリカ宇宙軍の発足を受けて、安倍政権は計画を2年前倒しし、コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発令から10日後の4月17日、同隊の設置を含む改定防衛省設置法を参院本会議で成立させた。当面は航空自衛隊府中基地(東京都府中市)を拠点に、米宇宙軍と連携して宇宙空間の監視任務を担うとしている。
宇宙の軍事利用へ全面的に踏み出す
防衛相・河野太郎は5月15日の記者会見で、隊員約20人で発足した空自宇宙作戦隊について、「小さく生んで大きく育てたい」とコメントし、今後は順次部隊を増員していく考えを示した。安倍は昨年9月に防衛省で開かれた自衛隊高級幹部会同で訓示した際に、「航空自衛隊に『宇宙作戦隊』を創設する。『航空宇宙自衛隊』への進化も夢物語ではない」と語った。サイバー部隊の強化を含め「従来の領域である陸海空と融合させ、領域横断的な自衛隊の運用を進める」と述べた。防衛大綱の線に沿って、宇宙・サイバー・電磁波といった領域での自衛隊の大幅増強が狙われているのは明らかだ。自衛隊が「宇宙の軍事利用」へと大きく踏み出す転機となったのは、2008年に当時の福田康夫政権のもとで、自民・公明と旧民主党との共同提案で国会に提出され、衆参あわせてわずか4時間の審議で成立した「宇宙基本法」だ。それ以前まで日本は、宇宙開発は「平和の目的に限る」とした1969年の国会決議に基づき、自衛隊による情報収集衛星の運用と軍事目的の衛星(偵察衛星)の保有を禁止。98年に内閣情報調査室の管轄下で情報収集衛星の打ち上げが始まってからも、その性能は一応「民生レベル」を基準に抑えられてきた。
だが、宇宙基本法の成立後はこの「歯止め」が外され、「事実上の偵察衛星」としての高性能化と打ち上げが加速。今年1月には地上の30㌢メートルの物体まで識別できる性能をもった「光学7号」が打ち上げられた。今回の宇宙作戦隊の発足は、このような情報収集衛星の管轄を内閣府から自衛隊へ移し、本格的に偵察衛星として利用するための下準備にほかならない。
南西諸島に基地局設置し戦争拠点化
日本がこのように「宇宙の軍事利用」へと乗り出したことは、東アジアの軍事的緊張を急激に高めている。情報収集衛星の高性能化(事実上の偵察衛星化)は、北朝鮮や中国の軍事動向を収集して米軍や韓国軍と共有するばかりでなく、自衛隊による敵基地への先制攻撃をも可能とする。とりわけ米空軍が運用する全地球測位システム(GPS)を補完するため、日本が18年11月に運用を開始した「日本版GPS」=準天頂衛星「みちびき」は、防衛省が開発を急ぐ先制攻撃兵器「高速滑空弾」や「極超音速ミサイル」を攻撃目標へと誘導するためにも不可欠とされるものだ。しかも準天頂衛星の基地局は石垣島、宮古島、久米島、種子島といった南西諸島に集中しており、これらの島々を最前線として中国に対する戦争の準備が着々と進められているのだ。
また18年には、米空軍宇宙コマンドが主催する宇宙空間での作戦を想定した多国間机上演習「シュリーバー・ウォーゲーム」に日本が初めて参加。防衛省・自衛隊だけでなく国家安全保障局、内閣府、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが職員を派遣した。2001年に始まった同演習は「極めて秘匿性が高いインナーサークル」(自衛隊幹部)などと言われ、これまでは主要に、第2次大戦の戦勝国を中心に軍事情報の収集・共有を行う「ファイブ・アイズ」(米、英、豪、カナダ、ニュージーランドの5カ国)で行われてきた。ここにかつての「敵国」であった日本が参加したのは戦後史を画する事態と言っていい。
集団的自衛権発動と核戦争に道開く
重大なことは、河野が4月16日の参院外交防衛委員会で、アメリカなどの人工衛星が攻撃を受けた場合、集団的自衛権を発動して自衛隊が武力行使に踏み切る可能性があると明言したことだ。だが宇宙空間で起きた事態の真相をどうやって確かめるのか。他国の攻撃によるものとどうやって認定するのか。宇宙空間の情報は政府が独占しており、武力行使に踏み切る口実を容易にでっち上げることが可能なのだ。その先にあるのは人類を破滅させる核戦争・世界戦争である。コロナ危機は米中対立を一層激化させ、戦争の危機を急激に切迫させている。改憲・戦争で延命を狙う安倍政権を打倒し、全世界労働者の国境を越えた団結で戦争を阻止しよう。