職場からの通信 介護職場に闘う労組を コロナ「疑い」で自宅待機に 安全守るには職場の団結が必要 関東 介護労働者 高木 響

週刊『前進』04頁(3134号03面01)(2020/05/25)


職場からの通信
 介護職場に闘う労組を
 コロナ「疑い」で自宅待機に
 安全守るには職場の団結が必要
 関東 介護労働者 高木 響


 私はケアマネジャーとして働いています。普段は利用者宅に相談に伺うことが主であり、身体的接触は少ない業務です。
 ところが先日、一人暮らしの利用者が発熱し、ヘルパーも訪問看護職員も感染リスクから訪問してくれず、私がマスク一つで訪問して身体介助を行うということが起こりました。そして、その利用者がコロナ感染の疑いとなり、私も自宅待機となったのです。
 「自分も感染して、家族にも感染させてしまったら、どうしよう……」と不安でいっぱいでした。しかし、「自分が緊急対応しなければその利用者はどうなっていたのか」とも思い、「自分と同じようなことが訪問系で働く同僚たちにあってはならない」と強く思いました。介護労働者や医療従事者は命や生活を守る職業だからこそ、自分の命は自分で守ろう!と強く思うのかもしれません。

直ちに防護服支給を要求

 幸いなことに、その利用者のPCR検査結果は陰性だったため、私も数日で仕事に復帰することができました。
 しかし、直ちに所属する組合として「新型コロナウイルス問題に関する緊急申し入れ」を行いました。すると、すぐにN95マスク、手袋、ガウンなど防護服が職場に運ばれてきました。それくらい、私の自宅待機は職場に衝撃を与えたのです。
 しかし、防護服があれば私たちの命と健康が守られるということではありません。防護服の着脱の仕方を間違えばたちまち命取りになることは、今の医療現場のクラスター感染を見ても明らかですが、介護労働者のほとんどが、感染対策についての知識と経験がありません。また、利用者がどういう状況の時に防護服を着るのかの基準・判断は難しいのです。
 会社は防護服着脱のレクチャーもマニュアル化もしないため、職場の同僚で自主的に防護服の着方を練習したり、話し合いが始まったりしています。
 資本には現場のことはわからない。安全を守るのは組合を軸にした職場の論議と団結だと、強く感じています。

感染リスクと背中合わせ

 ケアマネジャーである自分が自宅待機となった経験を通して、あらためてヘルパーの状況と仕事内容を見直してみました。
 訪問介護という仕事は、自宅から利用者宅、そして利用者宅から自宅へ帰るという「直行直帰」のスタイルがほとんどで、一つの訪問介護事業所では食べていくことができず、多くのヘルパーは二つ、三つの事業所を掛け持ちして仕事をしています。
 話を聞くと「A事業所はマスクを2枚支給されたけど、B事業所はまったくくれない。足りないから自分で調達するしかない」といいます。介護保険事業所で、特に身体的援助を多く扱うヘルパーという仕事において物資が圧倒的に不足し、労働安全が守られていないことは明白です。
 あるヘルパーは、担当利用者の介助をしていた別の事業所のヘルパーが新型コロナに感染したため、濃厚接触者として5日間の自宅待機となりました。このように、常に感染リスクと背中合わせです。

安全などないに等しい!

 厚生労働省の通達では、「利用者が新型コロナウイルスに感染した場合、十分な感染対策を取った上で、介護にあたること」となっていますが、実際の現場はそうはなっていません。訪問介護の事業所は母体が小規模事業所であり、感染対策など十分な物資調達はかなり難しく、ましてや個々のヘルパーに支給する余裕などないからです。
 医療現場にもマスクがまったく足りませんが、介護の民営化である介護保険制度のもとに置かれた現場では、安全に必要な物資も体制もまったく保障されていないのが現実です。
 ヘルパーが新型コロナウイルスに感染した場合、事業所の存続も危うくなります。他の利用者や家族に感染させてしまう可能性もあるからです。そのため、「37・5℃以上の発熱のご利用者様宅には訪問しない」と事前に通知してくる事業所もあります。利用者がただ風邪を引いて発熱しているだけだとしても、訪問介護が行われない状況になっているということです。新型コロナウイルスの影響で、在宅で暮らす高齢の利用者の生活自体が危ぶまれているのです。逆に、ほとんどのヘルパーはマスクもろくに保障されない中、不安にかられながら訪問介護を行っています。
 訪問介護のヘルパーという非正規職の労働者の命と健康が守られなければ、高齢者の命と健康など絶対に守られません。そのために、介護現場に労働組合が絶対に必要です。地域全体に労働組合を広げていきたいと思います。
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