医療より経済優先の補正予算 コロナ危機下で改憲ねらう安倍
週刊『前進』02頁(3131号01面03)(2020/05/14)
医療より経済優先の補正予算
コロナ危機下で改憲ねらう安倍
安倍政権は緊急事態宣言を5月末まで延長し、補償なき「自粛」の強要を継続。今年度予算では病床削減に644億円、補正予算でも医療対策より経済・IT投資を優先した。コロナ危機下でも「命より利潤」だ。さらにコロナに乗じて規制撤廃を一気に進め、戦争と独裁のための改憲・緊急事態条項導入を狙う。
「コロナ後」の経済振興
安倍政権は4月30日成立の補正予算で、一刻を争う医療対策より「コロナ後」の経済振興やITインフラ整備を重視した。全国の基幹病院で院内感染が続発、医療崩壊の危機が深刻化している。この重大時に、資本の利潤のために予算を大幅に上積みしたのだ。図を見てほしい。補正予算は、ウイルス対策として1兆8097億円を計上した。しかしこのうち現場の検査機器や人工呼吸器の整備、医療機関へのマスク配布、学校や介護施設の感染防止、治療薬・ワクチンの研究開発費などは4千億円弱。一部業者が得をするだけの「アベノマスク」分も含む。さらに地方への臨時交付金1兆円は休業協力金に転用でき、医療向けはもっと減る。
他方、「コロナ収束後に実施する」観光・飲食などの消費喚起策に1兆8482億円、ITインフラ整備などに9172億円を注ぎ込んだ。これには「収束後の予算を今、付けている場合か」「医療現場にマスクや防護服を回せ」という批判が巻き起こった。
そもそも安倍政権は医療費削減を目的に「地域医療構想」で「病床のダウンサイジング(削減)」を掲げた。昨年9月には全国424の公立・公的病院を名指し(その後440病院に拡大)し、統合・再編を迫った。3月末成立の今年度予算には統廃合や病床削減の報奨金として84億円、地域医療構想のための施設整備に560億円、計644億円が盛り込まれた。これにより2025年度までに全国の急性期病床を約20万床減らすという。
とんでもないことだ。コロナの感染拡大で病床不足が深刻化。医療体制の強化、医療従事者の人手不足の解消といった抜本的な改革が必要な時に病床を減らすなんてありえない。しかし「644億円もかけてダウンサイジングか。コロナ対策に使ったほうがいい」という批判に対し、安倍晋三首相や加藤勝信厚生労働相は4月28日、衆院予算委員会で「財源をより効率的に使っていこうということで、常にやっていかなきゃいけない」「地域に合った医療のあり方、より効率的な提供のための予算だ」と開き直った。ここに政権の本質が示されている。
デジタル合理化で非正規職化を推進
安倍はコロナ危機に乗じて、規制の撤廃とデジタル合理化、民間委託と非正規職の拡大を一気に進めようとしている。4月15日、衆院地方創生特別委員会で国家戦略特区法改悪案が強行採決された。AI(人工知能)・顔認証技術による「スーパーシティ」構想、既存の規制を前提としない「地域限定型サンドボックス制度」の導入が画策されている。住民の生活に必要な自治体業務を切り縮め、デジタル化による職員半減、丸ごと民営化・非正規職化と監視社会化を狙う。これ自体が改憲の先取りだ。
27日、経済財政諮問会議で経団連会長・中西宏明らはオンライン診療の拡大、行政のデジタル化に向けた「規制の総ざらい」、1人10万円給付をも使ったマイナンバーカードの普及促進、個人番号の銀行口座とのひも付けを求めた。
さらに5月1日、総務省は「コロナ対策の業務体制確保のため」として、保健所などに他の部署の正規職員が応援に入ることの穴埋めに会計年度任用職員を使うことを求めた。保健所、ハローワーク、役所の休業一時金受付窓口などで派遣労働者を拡大するために、労働者派遣法の緩和も狙われている。業務の総非正規職化が狙いだ。
「自粛警察」あおり分断
コロナ危機が突き出したのは、新自由主義が医療を破壊し社会をずたずたにしてきたということだ。しかし安倍や小池百合子東京都知事、吉村洋文大阪府知事・維新の会らは自らの犯罪をほおかむりしたまま、「自粛のお願いではなく強権が必要だ」として、9条改憲・緊急事態条項導入の突破口にしようとしている。休業補償がない中で店を開かざるをえない業者をやり玉に挙げてヘイト(憎悪)をあおる。子どもが公園で遊ぶことやコロナ感染者まで「犯罪者」「社会の敵」扱いして労働者を分断。権力の威を借りて「正義」を振りかざす「自粛警察」「コロナ自警団」を横行させている。
本当に許しがたい。だからこそ労働者の闘う団結が力となる。人々の命を奪ってまで延命しようとする資本主義に終止符を打とう。生きるために労働組合を先頭に闘い、安倍を倒そう。