緊急事態宣言の狙いは改憲だ 感染拡大利用し戦争国家化に拍車
週刊『前進』04頁(3126号03面02)(2020/04/20)
緊急事態宣言の狙いは改憲だ
感染拡大利用し戦争国家化に拍車
(写真 イタリアでは、銃を構えた軍警察の兵士が街頭に立って検問を行っている【ミラノ大聖堂前】)
「自民党、改憲論議を『強行』」「緊急事態の対応めぐり推進本部会合」——共同通信はこのように見出しを付けた4月10日付の記事で、自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)の会合を報じた。コロナウイルス感染症の拡大により党の会合のほとんどが取りやめとなる中で、改憲に向けた会合だけは「強行」したということだ。
7日の衆院議員運営委員会では、安倍が「緊急事態宣言」の発令を前に「新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会で活発な議論が展開されるのを期待したい」と発言した。現時点では野党は国会での憲法議論に応じていないが、緊急事態宣言発令後も感染者が増え続けた場合、政府・与党が「より強力な措置をとれるように憲法に緊急事態条項を明記すべきではないか」と言って野党に屈服を迫るのは目に見えている。
「自衛隊」と「自衛の措置」を憲法に明記することで「戦争放棄」をうたった現行憲法9条を死文化し、緊急事態条項の導入によって憲法そのものの停止=戒厳令の発令すらも可能とすることを狙う安倍・自民党の改憲策動は、コロナショックの真っただ中でも後退しないばかりか、むしろこの情勢下でクーデター的に推進されようとしている。圧倒的多数の人々が明日の生活のために要求する最低限の補償も給付金支給も満足に行わず、「1世帯にマスク2枚」で我慢しろ、自粛しろと言いながら、このコロナ危機に乗じて改憲だけは何としても強行しようとあがいているのだ。断じて許すことはできない。
そもそも安倍が4月7日に発令した緊急事態宣言は、国会の承認もなく政府による報道機関への介入や土地・家屋の強制使用、公共施設の利用制限などを可能とするものだ。さらには、緊急事態を口実に労働基準法26条で定める「休業補償」を資本が支払わなくなる恐れも指摘されている。そのいずれもが、戦後的法体系を転覆する事実上の改憲攻撃にほかならない。実際にそのような動きが緊急事態宣言下でどんどん進んでいる。
むき身の警棒もち警官が人民を威圧
補償も給付も医療体制の整備・拡充も満足にやろうとしない政府への怒りの声は、今や尋常ならざる広さと深さで日本中に広がっている。安倍が自宅で犬を抱いて「優雅に」くつろぐ動画をSNSで投稿したことに怒りの声が殺到し、「安倍は貴族か」「他国なら革命が起こる」(4月13日付日刊スポーツ)とまで報じられたのもその表れだ。安倍はこうした怒りの爆発を国家暴力で抑え込もうと必死になっている。7日の記者会見で、安倍は外出自粛を徹底するため「何らかの形で」警察に協力を求めると発言した。これを受け、警視庁はただちに警官による巡回などを強化し、歌舞伎町や新橋、銀座などでは特殊警棒を伸ばした状態で手に持った警官が3人1組で路上にいる人に片っ端から「声かけ」をするなど、平時には考えられない威圧行為が行われている。緊急事態宣言下といえど、人の外出・移動を警察の強制力で規制することは法律上許されていない。また警棒は警視庁の取扱規定でも「必要性があるとき」以外は革帯に着装して携行するのが原則であり、「むき身」の状態で持ち歩くことなど通常ではありえない。適正な刑事手続きを定めた憲法31条の許す警察権の発動範囲を逸脱したやり方であり、移動の自由を保障した憲法22条への侵害だ。しかも、こうした威圧行為を繰り返す警官が着用しているのは「N95」と呼ばれる最も強力な微粒子用マスクで、日本医師会が医療現場での深刻な不足を連日訴えているものだ。
一般の人々に対しては布マスクしか配らない政府が、警察にだけは貴重な微粒子用マスクを配布し、生活のためにやむなく外出せざるを得ない人々を違法なやり方で威圧させているのだ。こんなことが「緊急事態」を口実に許されていいはずがない。
ネットカフェ難民を自衛隊が勧誘
コロナ危機に乗じた自衛隊の隊員募集活動の強化も始まっている。緊急事態宣言発令に伴うインターネットカフェの営業自粛により寝泊まりの場所を失った利用者を受け入れるため、神奈川県が4月11日から開放していた県立武道館(横浜市港区)に、13日、自衛隊神奈川地方協力本部の広報官が隊員勧誘のために訪れていたことが明らかになった。広報官は避難者一人一人に「直接声をかけたい」などと数分にわたって要求したが、県職員が立ち入りを拒否して帰らせたという(4月14日付神奈川新聞)。隊員不足が深刻化する中で、避難者の窮状に付け込んだなりふり構わぬ「貧困徴兵制」に乗り出してきたのだ。ネットカフェを追い出された人々の寝泊まりの場所すら自治体任せにしているような国が、野垂れ死にが嫌なら自衛隊に入れ、国のために命を捧げろと要求する。腐りきった国家の姿がここでも示されている。
安倍が緊急事態宣言下で狙っているのは、戦後日本の労働運動・階級闘争がかちとってきた力関係の転覆にほかならない。補償を要求する闘いと一体で、5・1メーデーを改憲阻止・緊急事態宣言粉砕の闘いとして断固成功させよう。