ふくしま共同診療所医師 杉井吉彦さんに聞く 安倍は失策の責任とれ コロナ危機とどう闘うか

週刊『前進』02頁(3125号01面01)(2020/04/16)


ふくしま共同診療所医師 杉井吉彦さんに聞く
 安倍は失策の責任とれ
 コロナ危機とどう闘うか


 中国の武漢から発生した新型コロナウイルスの感染がパンデミック(世界的大流行)を起こし、4月13日現在で感染者184万人、死者11万4千人に達している。日本でも感染者8111人、死者149人を数えている。日帝・安倍政権はコロナ危機に対して自らの延命だけを考えて緊急事態宣言を出した。これとどう闘うか。2011年3・11福島原発事故以来、子どもの命と未来を守ろうと、ふくしま共同診療所で奮闘されてきた杉井吉彦医師にお話を伺った。(編集局)

コロナが暴いた社会のもろさ

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大という事態は、現代社会、すなわち資本主義・帝国主義国家がいかに脆弱(ぜいじゃく)であるかを明らかにしました。疫病から人々の健康と命を守るという課題について、ほとんど無防備な状態だったのです。
 アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が2018年5月に、「パンデミック病原体の諸特徴」と題する報告書を発表しています。そこでは「ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性」を予見し、警告しています。そして病原体の特徴として、高い感染力、低い致死率、呼吸器系疾患を引き起こすなど、七つの特徴を列挙しているのです。これらは、ほとんど現在流行中の新型コロナウイルスの特徴と一致しています。
 この報告書、さらにSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の教訓があったにもかかわらず、WHO(世界保健機関)を含め現代社会はまったく対応できていなかった。それどころか、新自由主義は「公的医療」を崩壊させてきた。その結果、イタリアやアメリカのように医療体制がもろくも崩れてしまっているのです。
 予見できたにもかかわらず日本でも医学界を含めてまったく無防備だった。本気になって人間の命を助けようと考えていないから、さまざまなミスを犯し、さらに感染を拡大させています。

感染拡大を招いた権力の失政

 感染防止の基本は「接触しない」ことです。それをちゃんとやれば感染症の拡大は防げるはずなんです。疾病に対して人間は共同の力で克服してきた。その力が人間にはあります。「避けられない災害」とか「運命」では絶対にないのです。
 この状況を招いた日本政府の責任は極めて重い。失政、人災なんだとはっきりさせ、権力者による失策の付けを人民に払わせることを許してはならない。
 韓国ではドライブスルー方式を含め1日1万件のPCR検査を行い、早期治療に結び付けた。なんで日本ではできないのか。日本政府は感染を抑えるというよりは、検査を全然しないことで、患者数を少なく見せようとした。オリンピックを成功させて憲法改正に持ち込むというスケジュールがガタガタになるから患者数を増やしたくなかったのです。
 現在の状況を終わらせ、命と健康を守り生き抜くための運動と行動が求められています。「1%」の連中はどこかに逃げてしまっている。「99%」の労働者人民の命を救わなければいけません。それを人民の共同の力、連帯の力でやり抜く。とりわけ、感染と向き合っている医療労働者に全人民がエールを送って、守り切らないといけません。もちろん完全な感染対策を要求・確保することが大前提です。

補償を求め命と健康を守ろう

 リーマンショックを超えるコロナショックが来ています。2011年3・11東日本大震災で「生き方を変えた」人が多かった。今度は全世界の人々が生き方を問われています。問題はまさに世界的です。
 世界の階級闘争の歴史を見ても、支配者の失政が自分たちの生活を苦しくし、戦争に動員されて人殺しをさせられ、自分も死んでしまうということへの怒りが全人民の決起と連帯の基礎になってきました。まさにインターナショナルな労働者の連帯が問われています。
 現実を直視し、命と健康を守り生き抜く、その運動が今求められている。帝国主義・新自由主義に対して補償を求めなければいけない。1917年ロシア革命も「パンと平和」を求める闘いから始まったではないですか。
 原発事故後、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーだった山下俊一福島医大副学長(当時)は12年8月の新聞インタビューで「日本という国が崩壊しないよう導きたい。チェルノブイリ事故後、ウクライナでは......補償費用が国家予算を圧迫した」などと語った。これは補償を否定し、国家の失策の付けを人民に押しつける最悪の発言であり、怒りに堪えません。
 補償を要求していいんですよ。補償を要求すべきですよ。国家がつぶれるくらいの補償でいいんです。事実、金がないと死んでしまう人がたくさんいるんだから、それはきわめて正しい根本的な要求なんです。
 怒りは満ちていますよ。コロナ解雇で首を切られた労働者がたくさんいます。この怒りはものすごい。医療従事者の怒りはもっとすごいですよ。何も感染対策がないまま現場に突っ込まされているのだから。
 首相官邸も開けろ、皇居も開放しろと。そういうことなんだよ。それくらいの要求と不満があるんですよ。全国労組交流センターのビラの「補償なき緊急事態宣言反対」、このスローガンは大事です。
 安倍政権は、今苦しんでいる人を助けようとはしないで、こんなことを引き起こしている経済体制を守ろうとしている。私たちは今、生活の危機、命の危機に直面している。まさに1929年世界大恐慌以来の状況になると思います。
 「パンと平和」をかちとる力は労働者階級の中にあると信じます。ともに闘いましょう。

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