福島第一汚染水海に流すな トリチウムは染色体異常を起こす
週刊『前進』04頁(3124号04面02)(2020/04/13)
福島第一汚染水海に流すな
トリチウムは染色体異常を起こす
安倍政権と東京電力は福島第一原発で増え続ける放射能汚染水の海洋放出に向け動きを加速させている。これは福島原発事故を「終わったこと」にする攻撃でもある。海を放射能汚染させないために闘う漁民・住民と団結し阻止しよう。
事故を「終わった」とするのが狙いだ
福島第一原発では放射能で汚染された「処理水」が増え続け、現在、約120万㌧に上る。それらは、原発敷地内のタンクに保管され(写真)、その数は1千基を超える。これらの汚染水を海洋に放出する動きが、昨年末から急加速している。昨年12月23日に開催された小委員会で、経産省が「海洋放出」「大気放出」「両者の併用」の3案を提出。2月10日には、政府の小委員会が、海洋放出が「より確実に処分できる」と提言した。それを受ける形で3月9日、安倍首相は「できる限り速やかに決定したい」と語り、3・11から9年となる11日には原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長が「早期に海洋放出するべきだ」と、お墨付きを与える発言を行った。
汚染水タンクは今年末までに約137万㌧分増設する計画だが、それでも22年夏には満杯になる見込みと言われている。実際の処分開始までには規制委による許認可や東京電力の準備工事に2年程度を要するとされ、そこから逆算して、今年夏ごろに処分方法を決定しようしている。
安倍政権の狙いは、3月14日のJR常磐線の全線開通と同じく、福島原発事故を「終わったこと」にすることだ。福島県は帰還困難区域が残る自治体のうち、浪江町・富岡町・飯舘村・葛尾村の避難者に対する住宅の無償提供を3月末で打ち切ったが、これも同様の避難者無視の暴挙だ。断じて許せない。
トリチウム以外の放射性物質も存在
2011年の福島第一原発事故では1〜3号機の核燃料が溶け落ち、デブリ(核燃料やコンクリートなどが熱で溶けて混ざり合い、固まったもの)となって原子炉内に膨大な量が堆積している。デブリは熱を発し続けるため、常に水をかけて冷やさなければならないが、この水は放射能に汚染される。そのため、ALPS(アルプス)という浄化設備を通して放射性物質を「除去」しているが、トリチウムだけは除くことが出来ず、タンクに保管し続けている。この処理水に残っているのはトリチウムだけとされていたが、他の放射性物質も含まれていることが判明した。現在分かっているだけでも、ストロンチウムが「排水基準」の1万4千倍も含まれているものがあるなど、全体で7割が基準を超えていると報じられている。放射能で汚染された水の海洋への放出など絶対に許すことはできない。
地元の漁民・住民と団結して闘おう
政府や東電、御用学者などは事実をねじ曲げ、汚染水に含まれるのはトリチウムだけとした上で、「トリチウムは無害。放出は問題ない」とデマを流している。だが、それは大うそだ。トリチウムは生物の体内に取り込まれ、ある一定の割合で体内組織の水素に置き換わり、人体に影響を与える。すでに1974年の日本放射線影響学会第17回大会(徳島市)で、放射線医学総合研究所の中井斌(さやか)遺伝研究部長らが、ごく低濃度のトリチウムでも人間のリンパ球に染色体異常を起こさせると報告している。同年10月8日付朝日新聞は「トリチウム/染色体異常起こす/放射線研で突き止める」と報じた。
放射線医学総合研究所は1957年に発足した国立の総合研究所(現在は独立行政法人)で「放射線の人体への影響」などを研究している組織であり、そこがトリチウムは有害と表明したことは極めて重大だ。
今月6日に福島市で開かれた政府の、県内各団体などから意見を聴く会合で、秋元公夫県森林組合連合会長が「処理水を大気や海洋に放出することは反対」と表明。野崎哲県漁連会長は「若い世代に将来を約束するためにも海洋放出には反対」と声を上げた。地元の市町議会も反対が多数だ。地元漁民・住民の怒りと結び、海洋放出を阻もう。