焦点 鉄鋼大手が相次いで高炉閉鎖へ 数万規模の解雇と対決を

週刊『前進』02頁(3123号02面03)(2020/04/09)


焦点
 鉄鋼大手が相次いで高炉閉鎖へ
 数万規模の解雇と対決を


 新型コロナウイルスへの感染が爆発的に拡大し、世界経済は2008年のリーマンショックを超える大恐慌に突入した。倒産・解雇・休業が広がり、労働者は今日・明日をどう食いつなぐかという不安の中にたたき込まれている。労働組合の闘いがなければ、労働者の命も生活も守れない。
 厚生労働省は3月31日、コロナによる解雇や雇い止めが1021人に上ると発表した。だが、およそそんな数では済まない。新自由主義のもとで、政府が被解雇者数を把握できなくなるほど、雇用は徹底的に破壊されてきたのだ。
 解雇の波は基盤的な製造業をも飲み込みつつある。
 3月27日、JFEスチールは、2023年度中に川崎市の東日本製鉄所京浜地区の第2高炉を休止すると発表した。JFEスチールは川崎製鉄とNKK(日本鋼管)が03年に統合されて設立されたが、川崎は旧NKKの主力製鉄所だった。
 JFEスチールは、関係する社員1200人は配置転換などで対応するとしているが、配転先は千葉をはじめ全国に及ぶ。全員がこれに応じられるとは限らない。協力会社が雇用する労働者2000人には何の雇用保障もない。取引先など関連企業で働く労働者はさらに膨大な数になる。その人々が、失業にたたき込まれようとしているのだ。
 高炉廃止の発表とともに、持ち株会社のJFEホールディングスは、20年3月期の連結最終損益は1900億円の赤字になるという業績予想を出した。過去最大の赤字への転落だ。
●コロナ以前に矛盾が噴出
 鉄鋼をめぐっては、2月7日、日本製鉄が子会社の日鉄日新製鋼(発表当時)の呉製鉄所の2基の高炉を21年9月までに休止し、和歌山製鉄所の高炉1基も22年9月までに休止すると発表した。呉製鉄所は23年9月には閉鎖する方針だ。和歌山製鉄所の高炉は、09年に稼働した比較的新しい設備だが、それも実質的な廃止に追い込まれた。
 日本製鉄は同時に、19年度の連結最終損益は4400億円の赤字になるとの見通しを発表した。これも過去最大の赤字だ。
 閉鎖・休止となる呉と和歌山製鉄所の社員は1600人だ。日本製鉄は配置転換で対応するというが、ここでも全員が配転に応じられるはずがない。呉の場合は関連会社を含めて3300人が働いていると言われるが、取引先企業も含めれば2万人を超える労働者がいる。その雇用が一気に奪われようとしている。
 日本製鉄が高炉の閉鎖を打ち出したのは、コロナウイルスの影響が本格化する前の段階だ。その時点ですでに、過剰資本・過剰生産力の矛盾は噴出し始めていた。コロナ問題は、それを一挙に露呈させたのだ。
●基幹産業に闘う労組を
 日本国内の鉄鋼設備は、約3割が過剰と言われる。国内鉄鋼業1位の日本製鉄と2位のJFEによる高炉の閉鎖・休止で、2割分の生産設備が廃棄されるが、それでも設備が過剰な状態は解消されない。世界全体でも鉄鋼の生産設備は約3割が過剰だ。
 日本の鉄鋼業は、国際競争での敗退を強いられてきた。特に中国の台頭に追い詰められた。今や世界の鉄鋼生産の50%以上を中国が占める。その中国でも、コロナ問題が起きる以前から、アメリカ帝国主義・トランプ政権による貿易戦争の中で、鉄鋼生産設備の過剰という問題が突き出されていた。あふれた中国製の鉄鋼は低価格で輸出され、日本の鉄鋼業を一層の苦境にたたき込んだ。
 日本国内でも電機や造船業が衰退し、鉄鋼の需要は減少する一方だった。そこをコロナショックが襲った。自動車産業も、コロナへの感染や部品供給の途絶という理由だけでなく、造っても売れないことを理由に生産を休止し始めた。鉄鋼需要は急減しつつある。
 この中で、日本製鉄がさらに国内全6カ所の製鉄所で、労働者を一時帰休させようとしていることが明らかになった。連合が制圧してきた基幹産業の中でこそ、闘う労働組合を取り戻す時が来ているのだ。

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