チャーター機で難民を強制送還 「送還忌避罪」導入を許すな
チャーター機で難民を強制送還
「送還忌避罪」導入を許すな
3月10日、法務省・出入国在留管理庁は、約4千万円をかけてチャーター機をスリランカに飛ばし、入管施設の被収容者などスリランカ人44人(うち女性は3人)を強制的に集団送還した。入管庁の発表によれば、44人のうち半数以上が6年以上、最長で12年の超過滞在者であり、難民申請却下後に送還した人も含むという。異議申し立ても裁判に訴える権利も奪い、強制送還するという不法非道なやり方だ。絶対に許すことができない。
東日本入国管理センター(通称・牛久入管)で面会など被収容者のサポートを続けている牛久入管収容所問題を考える会の田中喜美子さんは、「牛久からも1名送還されました。前日の午後、自由時間終了間際に『難民のインタビューがある』と呼び出され、戻らなかった。その後、彼の荷物をゴミ袋を持った職員が来てビデオカメラを回しながら回収。『強制送還だ!』と思った同じブロックの被収容者から連絡が入りました」と語っている。
新型コロナウイルス拡大が大問題になっている最中にあえてチャーター機を飛ばすという、人の命より強制送還ありきの入管の姿勢が突き出された。
昨年の難民認定44人
入管庁は3月27日、2019年末現在、在留外国人が過去最高の293万3137人になったという統計とともに、▼昨年の難民認定者数、▼在留資格取消件数、▼入管法違反事件について、さらに▼2020年1月1日現在の不法残留者数について、▼19年12月末現在の送還忌避者の実態について----などを一挙に発表した。
2019年の難民認定申請者数は1万375人だったが、そのうち難民認定者は44人(認定率0・42%)、「人道配慮による在留許可」の37人を合わせてもわずか81人(同0・78%)に過ぎない。
一方、難民と認められなかったことに対する不服申立手続きで難民認定されたのはたった1人! 全国難民弁護団連絡会議は、「不服申立ての棄却率が過去15年で最悪の99・98%となり、不服申立ての機能不全が浮き彫りとなった」と指摘し、「(難民認定制度の)濫用・誤用対策の名のもとで、難民保護を必要とする者が収容や送還の危機に瀕(ひん)している」と警告している。
世界的にも日本の難民認定数は異常だ。18年の難民認定率を見るとカナダ約56%、アメリカ約35%、イギリス約33%、ドイツ約23%となっている。トルコ国籍のクルド人の場合、日本では難民認定率は0%だが、カナダでは89・4%、アメリカでも74・5%が難民認定されている(「収容・送還問題を考える弁護士の会」調べ)。
収容・送還専門部会
昨年5月以降、長期収容に抗議し仮放免を求める被収容者たちのハンガーストライキが広がった。長崎県の大村入管センターではナイジェリア男性が飢餓死するという事態に至った。しかし、法務省・入管庁は「収容・送還に関する専門部会」を設置し、そこでの議論で入管法改悪=「送還忌避罪」新設を画策している。
「送還忌避被収容者の実態」を見ると、昨年末現在、退去強制令書が発付された被収容者は942人、仮放免者は2217人となっている。被収容者のうち送還を忌避する者は649人(69%)。仮放免者2217人のうち難民認定手続中が1412人(64%)、入管関係訴訟係属が189人(9%)いる。重複分を除くと総数は1537人(69%)。また、難民認定申請を繰り返している人は975人(69%、最多6回)だ。この数字には、帰国できない理由を抱えた被収容者や仮放免者たちが、日本で奮闘している姿が浮かび上がってくる。
しかし、入管庁は「もはや採り得る手段はなく、速やかに送還する」以外にないと断定し強制送還しようとしているのだ。
日本の難民認定制度は、全く機能していないも同然だ。被収容者が最後の手段として命をかけたハンストで抗議しても、これに配慮するどころか、さらなる刑罰を加えようというのが安倍政権であり、黙っていたら殺される。
外国人の人権がここまで踏みにじられている入管の現状を変えることこそ、日本の労働運動の課題であり、階級的労働運動をよみがえらせる鍵もここにある。民族・国籍・国境をこえた労働者の団結で、誰もが人間として生きられる世界をつくろう。