危険な運転強いるJR 駅間5秒短縮を運転士に指示 総武緩行線で無謀な速度増

週刊『前進』04頁(3120号02面01)(2020/03/30)


危険な運転強いるJR
 駅間5秒短縮を運転士に指示
 総武緩行線で無謀な速度増

(写真 1988年12月5日、東中野駅に停車していた電車に後続の電車が衝突し、運転士と乗客2人が死亡、116人が負傷した。民営化による安全破壊を突き出す大事故だった)

 JR東日本は3月14日のダイヤ改定で、総武緩行線の千葉―御茶ノ水の各駅間で、運転時分を5秒ずつ短縮した。千葉―御茶ノ水間の総計で1分50秒の短縮だ。総武緩行線はこれまでも過密ダイヤが組まれ、毎日のように遅れが出ている。これまで以上のスピードアップは、事故を起こせと言わんばかりの暴挙だ。

労組への提案もせず強行

 運転時分短縮は、ダイヤ改定前には労働組合にはまったく提案されていなかった。ダイ改直前の訓練で、JRは突然、運転士にこうした指示を出してきた。
 この問題を団体交渉で追及した動労千葉に対し、JR千葉支社は、御茶ノ水―三鷹駅間の運転時分については「東京支社の管轄だから分からない」と無責任きわまる回答をした。千葉支社管内の習志野運輸区の運転士が、三鷹まで乗り入れているにもかかわらずだ。
 各駅間5秒の短縮を指示しておきながら、JRはどのように運転すればそれが可能になるかを明らかにせず、「運転士の工夫で短縮しろ」と言うだけだ。
 運転士に制限速度ぎりぎりで運転し続ける極限的な技能の発揮を求めながら、他方でJR東日本は、4月1日から運転士と車掌の職名を廃止し、「乗務係」にしようとしている。「いずれは列車の自動運転も可能になる」という口実で、運転士や車掌の職務そのものを否定する攻撃だ。
 運転士や車掌は、日々、乗客の命を預かって安全輸送に努めている。その誇りを奪い、会社の言いなりになる存在に変えてしまおうとしているのだ。これがまかり通ったら、JRのやり方が危険であると分かっていても、現場の労働者はそれに反対の声も上げられなくなる。鉄道の安全は徹底的に破壊される。
 昨年3月のダイヤ改定以降、JR東日本は普段は支社でデスクワークに携わる管理職に、ラッシュ時の列車運転をさせるようになった。その「片手間運転士」も、スピードアップされたダイヤで電車を運転している。これで安全が守れるはずがない。
 JRが総武緩行線で駅間の運転時分を短縮してきたのは、今年6月以降、千駄ケ谷、信濃町、代々木の各駅でホームドアの運用が順次、始まるからだ。

五輪のために命を危険にさらすJR

 ホームドアが設置されれば、駅での停車時間が長くなる。それを、駅間のスピードアップで取り戻せというのだ。
 総武緩行線でこれらの駅に最初にホームドアが設置されるのは、オリンピック会場の国立競技場に近いからだ。JRや東京都は、オリンピック開催時の千駄ケ谷駅の乗降客は普段の約6倍になると見込んでいる。ホームで安全を確認する駅員も減らされた状態で膨大な乗客をさばくためには、ホームドアを造るほかにない。他方、運転時分が長くなれば、その分、列車本数を減らさざるを得ないが、それもできない。こう判断してJRは駅間での運転時分短縮を強行したのだ。
 オリンピックのために乗員・乗客の命を危険にさらしているのがJRだ。オリンピックは延期ではなく中止するしかない。

東中野駅事故くり返すな

 反合理化・運転保安確立へ闘いぬいてきた動労千葉は、このままでは1988年12月5日に起きた東中野駅事故のようなことが再び起こると警告している。
 これは、東中野駅構内に停車していた電車に後続の電車が衝突し、運転士と乗客2人が死亡、乗客116人が重軽傷を負った大事故だった。国鉄分割・民営化から1年8カ月後に起きたこの事故は、民営化がどれだけ鉄道の安全を破壊したかを衝撃的に突き出した。
 この当時も、総武緩行線の運転時分は千葉―三鷹間で3分30秒、千葉―御茶ノ水間で1分50秒短縮されていた。JRは「1分の短縮は1億円の宣伝効果」と叫んで運転士に無理な運転を強制した。しかもJRは、列車が遅れた場合は、赤信号でもATS(自動列車停止装置)のスイッチを切り、信号を越えて徐行で進行しろと指示していた。
 この事故を再び繰り返してはならない。JRは無謀な運転時分短縮を撤回せよ。動労千葉の闘いに連帯し、JRに抗議の声をともにたたきつけよう。
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