命と生活かけた「コロナ春闘」 労働組合の真価を発揮する時だ

週刊『前進』04頁(3118号03面01)(2020/03/23)


命と生活かけた「コロナ春闘」
 労働組合の真価を発揮する時だ


 「コロナ春闘」というべき攻防が、日々激化している。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、新自由主義のあらゆる矛盾が噴き出した。安倍政権への怒りが燃え上がり、命と生活をかけた闘いが広がっている。労働組合の真価を発揮する時だ。攻撃に屈する労組幹部の制動をのりこえ、団結を固めて闘おう。

全国の職場で反撃始まる

 コロナをめぐる事態で例外となる労働者はいない。医療・介護施設、保健所や保育所、学校、工場、郵政、交通・運輸をはじめ全産別の職場で、労働者・労働組合の総反撃が始まっている。命と健康、生活を守る切実な闘いだ。
 安倍政権は感染症対策として必要な検査・診断・治療体制の構築を行うどころか制動をかけ続けている。他方で一斉休校やイベントなどの自粛要請を乱発。その結果、保健所や病院、学童保育や児童館はもとより本人の発熱や子育てで労働者が休まざるをえない全ての職場で、すさまじい人員不足と過重労働が強いられている。医療・介護施設で予防物資が不足し、都内の保健所ではマスクが支給されずに自前での調達を余儀なくされたり消毒液が底をついたりしている。民間委託されている学校の給食調理や施設管理、閉鎖された大規模娯楽施設などで、膨大な非正規職やフリーランス・個人請負の労働者の収入が断たれている。
 いつまでこんな状態が続くのか——。社会全体に悲痛な叫びと怒りが満ちている。労働組合の懸命の闘いが繰り広げられている。全てが生きるために団結して闘う取り組みだ。
 病院や介護施設、保育所、学童保育などでは日々の検温と健康管理、マスク・消毒液の給付が組合の緊急の要求とされた。全産別で代替職員の確保、年次有給休暇ではなく日数に上限がない事故欠勤(交通機関など不可抗力の原因による)や特別有休、職務免除を求めて、緊急の団体交渉や安全衛生委員会がもたれ、最低限とはいえ成果を上げている。当局・資本を圧倒する正義の闘いが繰り広げられ、職場の力関係が劇的に変わりつつある。
 自治労本部は政府方針に同調してテレワークや時差出勤、年休消化などを掲げる。しかし保健所などの現場では公務員労組が先頭で担うべき課題が議論され、動こうとしない執行部を乗り越えて闘う組合をつくり出す機運が広がっている。東京都と23区は組合の要求に押されて、職員やその家族が感染した場合や休校に伴う子育てを理由とした欠勤は事故欠勤とするとした。区職では委託された学校給食調理員の休業補償の議論も始まった。動労千葉は3・14ダイヤ改定時のストライキと共に、コロナ対策を行わないJRに対し職場の声を集約して追及する方針を打ち立てた。
 タクシーの労働組合では感染症対策の徹底、衛生委員会の開催、特別有休、窓口・整備担当の人員増、歩合給でなく固定給への転換という切実な要求が資本との緊急交渉の場で出された。業界全体の深刻な状況の中で職場の団結をかけた闘いが始まっている。

大量解雇・賃下げと激突

 コロナを焦点に春闘は終身雇用や定期昇給など「日本型雇用の見直し」を掲げた雇用・賃金制度破壊との激突となっている。自由に首を切れる「正社員ゼロ」の総非正規職化であり、人事評価で労働者を分断し総体を最低賃金水準まで引き下げる攻撃との闘いだ。
 今春闘ではトヨタや鉄鋼大手が先陣を切って、定期昇給とは別に全労働者の賃金を底上げするベアをゼロ化し、企業の枠を越えて一律賃上げを求める春闘そのものを解体する攻撃が本格化した。黒字企業で「希望退職」と称して数千人単位の労働者を追い出し外注化して強搾取する「黒字リストラ」も横行している。
 コロナをめぐって起こっている医療破壊と超過重労働、雇い止めの拡大は例外的一時的なことではない。国や資本のためなら労働者はどうなってもいいという資本主義、新自由主義の本性そのものだ。コロナ感染は拡大し経済の収縮と世界恐慌の情勢はさらに深刻化する。「解雇自由」・賃金破壊の攻撃と闘わなかったら命も生活も守れない。

闘う団結をつくり出そう

 トヨタの預金額は昨年3月で過去最高の4兆7千億円強に達した。資本は有り余るほどの利益を上げている。しかしトヨタ労組をはじめ御用労組幹部は春闘で「賃金を上げ続けることは競争力を失う」という脅しに屈した。コロナ対策と称して春闘決起集会すら取りやめ、ベアゼロを丸呑みして早々と妥結した。労働組合の自己否定であり、産業報国会化の道だ。JRのジョブローテーションや関西生コン支部弾圧を先端とする「労組なき社会」をつくる改憲・戦争の攻撃に棹さすものだ。現場に怒りが充満している。
 3月13日、安倍は「緊急事態」の宣言で独裁的強権を行使できる特別措置法改定案を成立させた。改憲・緊急事態条項の先取りであり、労働者の反乱を恐れて集会も街頭行動も国家暴力で抑え込もうとする治安攻撃だ。しかしもう労働者は黙っていない。職場生産点から命と生活をかけて立ち上がる。世界でストライキが巻き起こっている。春闘の後半戦もこれからだ。労働組合の再生と社会の根底的変革をかけて闘おう。
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