国鉄分割民営化の破産 JR各社の現状 JR東 安全壊し保線合理化 IT化を理由に人手を省く

週刊『前進』04頁(3118号02面06)(2020/03/23)


国鉄分割民営化の破産
 JR各社の現状
 JR東 安全壊し保線合理化
 IT化を理由に人手を省く

コロナ対策もせず

 新型コロナウイルスへの感染が拡大する中、JRは車両の消毒などの当然なすべき対策さえ行えていない。鉄道業務が次々と外注化され、JR本体の人員はぎりぎりまで削減された。外注会社は、労働者にまともな賃金も払えず、人員が定着しない。コロナ問題は、乗客を安全に輸送するという鉄道事業の基本的な役割も果たせなくなったJRの姿を突き出している。
 他方でJR東日本は、3月14日のダイヤ改定で常磐線の全線開通を強行した。乗員・乗客と車両の検査・修繕や清掃作業に携わる労働者に、被曝を強いる暴挙だ。JRは人命をとことんないがしろにしている。
 JR東日本では2001年の「設備メンテナンスの再構築」を契機に、保線や信号通信、電気などのメンテナンス部門で大規模な外注化が行われてきた。18年7月にJR東日本が公表した「グループ経営ビジョン『変革2027』」は、それをさらに極限まで進めると打ち出した。

ITでは判断不能

 JR東日本は18年7月、線路の状態を監視するモニタリング装置の本格運用を始めた。これは、線路のゆがみをレーザーで測る「軌道変位モニタリング装置」と、レールと枕木を固定する金具(レール締結装置)やレールとレールをつなぐボルト(継ぎ目板ボルト)の状態を撮影する「軌道材料モニタリング装置」から成り、乗客を乗せた列車に組み込まれている。
 この装置の導入後、JRが「閑散線区」と呼ぶローカル線を対象に、徒歩巡回の周期は延伸され、その作業自体も外注化された。これまでは3カ月に1回、人間の目で線路の状態を監視していたが、ITを使えばその必要はないというのが、JRの考えだ。
 JRは、この装置で「線路の状態を緻密(ちみつ)に把握できるため、タイムリーに補修作業ができる」と言う。しかし、モニタリング装置を搭載した営業列車の運行時に、JRの保線担当者が、線路の状態をリアルタイムで把握できるわけではない。
 線路のゆがみの測定値やカメラがとらえた映像は、モニタリング装置のメモリーに蓄積される。メモリーは列車が検修庫に入った後に取り出され、データはJR東日本の子会社の日本線路技術(NSG)に送られる。NSGがデータを解析し、修繕する必要があるか否かの情報をJRの保線技術センターに伝える、というのが作業の流れだ。
 線路のゆがみは、その大きさによって「発見してから1週間以内に修繕しなければならない」などの基準値が決められている。しかし、NSGからJRにデータが送られてくるまでに、2カ月以上の時間がかかることも頻繁にある。タイムリーに補修が行える状態ではおよそない。
 実際には修繕の必要がないのに、NSGが「必要あり」と「NG判定」する場合も多い。そのため、JRの保線技術センターは、受け取ったデータを再修正して、修繕の要否を判断し直している。逆に、修繕が必要なのに、それがデータとして現れないこともしばしば起こる。
 結局、人間の目で見なければ、修繕の要否は判断できない。しかし、JRの若手職員はパソコン上でデータを扱う作業だけを強いられ、現場の状態を自分で確認する機会を奪われている。「JR社員は設備管理の判断業務に徹し、施工するのはパートナー会社」とJRは言うが、修繕の要否を判断する力は、現場を熟知しなければ培われない。
 線路を補修する作業は、JRが外注会社に発注する。本来ならJRは、発注どおりの作業が行われたかどうかを確認しなければならない。だが、その確認作業(引き継ぎ検査)も外注会社に任せられた。JR社員は確認作業に形式的に立ち会うだけだ。実務の経験がなければ、立ち会っても仕上がり状態をしっかり確認することはできない。

闘う労組が命守る

 JRは、外注会社への業務委託費を徹底的に削って膨大な利益を上げてきた。そのため、外注会社や2次下請け、3次下請けの労働者は、夜間の重作業が連続するきつい労働なのに低賃金を強いられている。青年労働者は将来の見通しが立たずに辞めていく。技術継承などおぼつかない。
 線路内でその補修に当たる労働は、先輩から後輩へ技術や経験がしっかり継承されていなければ、安全には行えない。外注化はこれを破壊した。労働者の命がないがしろにされれば、乗客の命も損なわれる。労働組合の闘いこそが労働者と乗客の命を守る。
 「労組のない社会」づくりを進めるJRと対決し、動労総連合はダイヤ改定を前後して13日に動労水戸、13〜15日に動労千葉、15~16日に動労神奈川、18日に動労西日本がストに立った。これに続き、闘う労組を取り戻そう。
このエントリーをはてなブックマークに追加