被曝強制と改憲攻撃に怒り 3・11福島 「集会自粛」跳ね返し
被曝強制と改憲攻撃に怒り
3・11福島 「集会自粛」跳ね返し
福島原発事故から9年となる3月11日、新型コロナウイルスによる「集会・イベント自粛要請」―集会禁止の暴圧を跳ね返し、3・11反原発福島行動20が郡山市のけんしん郡山文化センターで600人の参加で開催された。集会は2部構成で、1部では福島で奮闘する人たち、2部では福島と沖縄のお母さんなどが密度の濃い報告と議論を交わした。集会後、参加者は市内をデモ行進した。(2面に主な発言と集会宣言)
原発事故は終わってない
新型コロナウイルスを口実に改憲へ向け強権的な政治が狙われる中、今回の福島行動は「安倍政権と闘いぬくためにも、集会中止という選択ではなく、集会・デモについては予定通り行い、福島の怒りの声をあげていくべき」との実行委員会の決断によって実現の運びとなった。そして行動の成功は、政府の緊急事態条項導入策動と対峙し、実行委と福島の怒りを先頭に3・11の原点に立ち、オリンピックと原発再稼働、改憲・戦争を打ち砕く決定的一歩を記すものとなった。
同時に、子どもたちの命と未来をないがしろにする政府への福島と沖縄の怒りと心がつながり、JR常磐線全線開通・被曝と帰還の強制への福島と全国の憤激が沸き立ち、「復興五輪」を許さない国際連帯の場として大成功を実現した。
会場ロビーの一角には、開会前から三春町のカメラマン・飛田晋秀(ひだしんしゅう)さんの写真が展示され、多くの人が3・11直後の被災地などのパネル写真に見入り、大震災・原発事故と被曝強制への衝撃を昨日のことのようによみがえらせ怒りを新たにした。
主催者あいさつを、実行委員長で動労福島委員長を務める橋本光一さんが行い、この1年、福島で運動を進める多くの人たちと語り合い思いを共有してきたと述べたうえで、「今の政権のやり方を絶対に許さないということで、ウイルスに対する万全の態勢をとりながら開催することを決断した」と語った。続いて、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部議長のアレックス・ローゼンさんなどからの、「日本政府は東京オリンピックを利用し、被災地が平常に戻ったかのように見せようとしている」との、東京五輪に反対するビデオメッセージが上映された。
集会の第1部は「『復興五輪』では隠せない原発事故と健康被害」と題する福島の3人の人士によるパネルディスカッションが、それぞれスライド写真を上映しながら行われた。
最初に、ふくしま共同診療所院長で福島市の布施幸彦さんが、関連死、避難者、汚染水、小児甲状腺がん患者の急増など福島の厳しい現状を解説した後、「東京オリンピックは全世界に対する福島原発事故の収束宣言である」と批判した。加えて、新型インフルエンザ特措法の改悪は改憲―緊急事態条項の導入に向けたものだと断じた。
飛田晋秀さんは被災地を回って撮影した写真について説明し、「被災地に130回以上行っているが、雨どいが8・55㍃シーベルトあるところもある。こういうところに帰って住めということなんです。人権を無視している。人間扱いじゃない。これが今の福島の現状です」と訴えた。
小高赤坂病院院長で南相馬市の渡辺瑞也さんは、セシウム137の半減期が30年であるにもかかわらず事故から9年で避難指示範囲が狭められてしまったことへの驚きを語り、「私自身が事故の4年半後に結腸がんの手術を受けましたが、私の身近な人がたくさん病気になったり亡くなったりしている」と報告した。
福島と沖縄の思いは一つ
第2部は「子どもたちの命と未来を守ろう―沖縄と福島のお母さんの訴え」のトークセッション。
福島のお母さんたちの対文科省行動と、沖縄の「チーム緑ケ丘1207」の政府への要請行動や園児たちが遊ぶ様子などのビデオ上映の後、報告と討論となった。最初に福島の佐藤幸子さんが3・11直後の4、5月に行った「20㍉シーベルト基準」撤回を求める対文科省交渉の様子を語り、子どもたちの避難を求めたが政府が拒否し続けたと明らかにし、その結果、どれだけ子どもたちが被曝したか分からないと政府の対応を批判した。
緑ケ丘保育園園長でチーム緑ケ丘の神谷武宏さんは、多くの園児が屋内や園庭で遊んでいた最中に、保育園の屋根に米軍ヘリから部品が落下した17年12月7日の事故について詳細に報告し、「子どもたちの命を守るために、保育園を守るために活動し続けています」と述べた。
チーム緑ケ丘の2人のお母さんは、「米軍ヘリからの部品の落下事故の原因究明と保育園上空の飛行禁止を求めて活動しています」「福島も沖縄も、子どもたちを守りたい思いは同じです。手を取り合っていけたらと思います」と語った。
大地震が起きた午後2時46分、NAZENふくしま代表の椎名千恵子さんが呼びかけ、震災と原発事故によって命を奪われた多くの犠牲者に黙とうを捧げた。
郡山市の稲葉隆一さんのサックス演奏に続き、アピールとなった。最初に全国農民会議共同代表の鈴木光一郎さんが「3万数千の人が帰りたくても帰れない。そのことの重みを、国は絶対に理解しようとしません」と弾劾した。三里塚反対同盟が壇上に登り、萩原富夫さんが「今日の沖縄と福島のお母さんたちのお話を伺ってさらに闘う決意を新たにしています」と力を込めた。星野さんをとり戻そう!全国再審連絡会議共同代表で、家族の星野暁子さんは「文昭はみんなの心の中にいます」と語り、2月21日、星野文昭さんの獄中死の責任を問う国家賠償請求訴訟を東京地裁に提訴したと報告した。
希望の牧場ふくしま代表の吉沢正巳さんは「3・11は終わっていない。オリンピックは中止だ、返上だ」「緊急事態条項をつくろうとする安倍政治に対し、体を張って闘い続けましょう」と声をふり絞った。動労水戸書記長の照沼靖功さんは「常磐線が全線開通すれば労働者の内部被曝は絶対に避けられない。労働者や住民に被曝を強制する全線開通に、動労水戸は絶対反対を貫いて闘っていく」と決意を明らかにした。
終了後、参加者は市内デモを行い、大成功のうちに行動を締めくくった。