世界で株価大暴落 コロナ・ショックを引き金に資本主義の末期的危機が露呈

週刊『前進』04頁(3116号03面01)(2020/03/16)


世界で株価大暴落
 コロナ・ショックを引き金に資本主義の末期的危機が露呈


 新型コロナウイルスを契機にして世界経済は、2月後半から世界同時株暴落の局面に突入した。
 米国のダウ工業株30種平均は2月24日に1031㌦安、27日には1190㌦安と急落。2月最終週は週間の下げ幅が計3583㌦と、08年のリーマン・ショック後を超えて過去最大を記録した。3月に入っても乱高下を繰り返し、2週間の間に1000㌦前後の急落が5回、1000㌦超の急騰が2回も引き起こされた。そして3月9日にはついに2013㌦安と史上最大の暴落となり、ニューヨーク証券取引所は「サーキットブレーカー」(過度の株価変動に対する一時的停止措置)が発動されて15分間の取引停止に陥る事態となった。
 日経平均株価も2月最終週は週間で2200円の下落、3月9日には1050円の急落で2万円を割り込んだ。

米中貿易戦争で世界経済は分裂

 「コロナ・ショック」は世界経済の脆弱な構造を突き出した。
 第一に、中国―アジアでの生産・物流の停滞が世界的なサプライチェーン(供給連鎖)の崩壊となり、世界的危機へと一気に拡大した。
 中国には世界の電子機器生産が集中しており、世界のスマホの約65%、パソコンの約45%が中国で生産されている。その生産に欠かせない半導体や電子部品は韓国や台湾、日本などから輸入する。そして中国に集積する電子機器の受託製造サービス(EMS)工場から、世界中に最終製品を供給している。こうした生産構造によって莫大(ばくだい)な利益を手にしてきたのがアップルなどのハイテク企業だ。
 さらに中国の巨大市場を頼りに自動車大手などが生産拠点を築いてきた。
 70年代に没落と危機を深めた米国は、中国の改革開放路線、2001年のWTO(世界貿易機関)加盟などを契機としながら中国を世界経済の決定的一角に取り込み、低賃金構造を土台とした「世界の工場」とすることによって延命を図ってきた。
 しかしそれ自身が、一方でアメリカ製造業の衰退をより一層促進し、階級支配の危機を激化させた。他方で生産拠点化を背景にした中国のハイテク技術覇権への挑戦が、米国の世界支配を脅かす存在となった。
 それゆえにトランプ政権は、現在のサプライチェーンの破壊と再編を狙って、非和解的な対中貿易戦争に踏み出した。それは自ら築いてきた世界支配と世界経済の土台を破壊することによってしか延命を図る道がなくなっているということだ。世界経済はすでに対立と分裂の局面に突入していた。そこに「コロナ・ショック」が直撃し、大崩壊の危機を迎えているのだ。
 第二に、原油価格の急落が決定的要因になっている。

原油価格急落し国際協調は崩壊

 世界全体の14%の石油需要をもつ中国経済の停滞が、原油価格の下落をもたらした。国際エネルギー機関(IEA)は2020年の世界の石油需要予測を大幅に引き下げ、前年比で日量9万バレル減少するとした。通年でマイナスとなれば09年以来だ。
 それに加えて3月6日にはOPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟の10カ国が参加する「OPECプラス」の協調減産合意が破産した。OPECの追加減産の提案をロシアが拒否し、現在の日量170万バレルの減産の延長も合意できず決裂し、17年1月から続いてきた協調減産自身が3月末で終了することになった。サウジアラビアも直ちに増産に転じることを表明した。米国の世界一の産油国化、カタールやエクアドルの脱退が相次ぐOPECの求心力の低下の中で、国際協調の枠組みが崩壊し、シェア争いに突き進む以外になくなったのだ。
 これを受けてニューヨーク原油価格は3月9日に、一時3割超の急落で1バレル=30㌦を割り込み、株暴落のさらなる引き金を引いた。
 原油価格の急落は、米シェール関連などエネルギー企業などの低格付け企業の信用リスクに直結している。低金利政策で支えられてきた低格付け企業の社債、6600億㌦もの規模になる低格付け企業向け融資をまとめたローン担保証券(CLO)の破産が現実のものになっていかざるをえない。

超金融緩和策の限界ついに到来

 第三に、ついに中央銀行による金融緩和策の限界が突き出されている。
 FRB(米連邦準備制度理事会)は3月3日、3月中旬に予定されていた定例会合を待たずに0・5%幅の緊急利下げを行った。にもかかわらず同日、株価は一時1000㌦近くも急落し、その後も乱高下と急落を一向に抑えることができない。FRBパウエル議長も「(利下げは)感染率の低下や寸断された供給網の修復につながるものではない」と認めざるをえなかった。
 08年リーマン・ショック以来の超金融緩和策によってかろうじて支えられてきた世界経済は、緩和頼みから抜け出せないまま、限界を迎えてしまったのだ。
 しかもG7(主要7カ国)もG20も「政策総動員」と言いながら、具体的な協調政策は展開できない。すでに政策金利の下げ余地は少なく、国債購入によって中央銀行が資産を膨れ上がらせてしまっているからだ。特に日銀はゼロ金利政策を展開し、490兆円もの国債(昨年9月、発行残高の47%)を保有し、さらに株式を買い入れており、打てる手がほとんどない。
 08年に4兆元の公共事業投資による経済対策で危機を救った中国は、それをてこに世界経済の決定的位置を占めたが、もはや巨額の債務に直面して同じように救済する力もない。米中対立が激化する中で分裂がさらに進行していく。
 コロナ・ショックは世界経済の崩壊と資本主義の末期的危機の現実を突き出した。資本主義に未来はない。労働者の団結した闘いでこの社会を変革しよう。
 一切の矛盾を労働者に押し付けて生き延びようとしている安倍を絶対に許さない。安倍はこの状況を利用して自らの腐敗への追及の手をのがれ、さらに緊急事態法によって戒厳令的状態をつくりだし、改憲・戦争への道筋をつけようとしている。今こそ怒りの声を結集し、安倍を打倒しよう。
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