イギリス 全産別でスト ジョンソン保守党政権の排外主義と対決 EU離脱テコに激化する新自由主義
イギリス 全産別でスト
ジョンソン保守党政権の排外主義と対決
EU離脱テコに激化する新自由主義
イギリスは1月31日、1973年の欧州共同体(EC)加盟以来入っていた欧州連合(EU)から離脱した。昨年12月の総選挙で与党・保守党が圧勝した議会でEU離脱案が最終的に承認された結果である。
EUは、国内総生産(GDP)がドイツに次いで域内第2位の大国イギリスを失う。通商関係だけでなく、イギリスによるEU予算への拠出金(インフラ整備・農業補助など)がなくなる点でも打撃を受ける。今年12月末までの離脱移行期間に英EU間の関係再構築をめぐる交渉が行われる。英ジョンソンが追求する「イギリスの主権=国益」「関税なしの自由貿易」を独仏などEU側が受け入れず、「合意なき離脱」に至る可能性が高い。
イギリスのEU離脱はEU解体の危機、国際争闘戦の激化をもたらし、大恐慌--世界戦争を引き寄せる。イギリス帝国主義は延命のためにますます新自由主義―緊縮政策を強めている。全産別の労働組合が昨年来、ストライキで反撃に立ち上がっている(表)。
労働党(コービン党首)は、昨年12月の総選挙でEU離脱か残留か明確な態度を打ち出せず、「赤い壁」と呼ばれる労働党の伝統的な拠点、イングランド中西部で敗北した。他方、北アイルランドとスコットランドでは「連合王国(UK)から独立しEU残留を選ぶ」という意思を示した政党が勝利した。しかし、全体では離脱を訴えたジョンソンの保守党が大勝した。
それでも2016年の国民投票以来の「国論二分」状態は依然として続いている。今年1月の世論調査では残留支持が49%で離脱支持を4㌽上回った。
事態の根底にある階級的真実は、新自由主義と差別・排外主義、貧困化に対する労働者階級人民の怒りの決起だ。これに対する大国主義と排外主義の扇動としてジョンソンのEU離脱政策が強行されている。
緊縮政策・貧困に労働者階級が反撃
サッチャー保守党政権(1979~90年)以来、労働党政権時代を挟んで強行されてきた新自由主義政策(「福祉国家」の解体、医療・教育・国鉄・郵政など公共部門の民営化、労働組合・労働運動破壊など)が2007~08年世界金融恐慌の爆発で破産を突きつけられた。09年にGDP成長率がマイナス4・2%に落ち込み、イギリスは世界で第3位の債務国となった。財政赤字のGDP比がEU基準値の3%を超える「財政破綻国」6カ国(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン、イタリア)に連なったのだ。
EUが財政破綻国に課す緊縮政策がイギリスでも強行された。その結果、「イギリスの労働者の5人に1人、700万人が非正規職。ゼロ時間契約労働者の数が急増」(2016年11月15日付ガーディアン)という惨状に陥った。
鉄道、病院、大学などでストライキが爆発した。16年6月23日にEU離脱か残留かを問う国民投票が実施され、52%対48%の僅差で離脱支持が多数を占めた。同年7月21日、「緊縮政策反対、民族差別反対、保守党内閣打倒」を掲げた1万人のデモがロンドンで行われ、EU残留派の保守党キャメロン政権が打倒された。代わった保守党メイは昨年7月、EUとの離脱交渉の行き詰まりと労働者階級人民の怒りのなかで辞任を余儀なくされた。
メイの後を襲った排外主義者ジョンソンは、離脱交渉が本格化する前に、EU内外からの外国人労働者の入国基準を強化するなど、反動的政策を実施しはじめている。EU離脱が、ジョンソンによる内外にわたる排外主義の鼓吹、労働者階級人民への新自由主義攻撃の激化、核保有国としての戦争政策となっている。これへの抗議が「離脱反対」という形で高まっている。
保守党政権に反対し、労働党・体制内労組の壁を突き破り、EU労働者の新自由主義との闘いに連帯する階級的労働運動の強化が急務だ。
------------------------------------------------------------
イギリスで激発するストライキ
2019年9月9〜10日 英国航空(BA)のパイロットが史上初の2日間スト
10月1日 郵便労働者が職制の民族差別に抗議し山猫スト
11月14日 高裁がロイヤルポスト(英国郵政)の労働者11万人の年末ストを禁止
11月19日 ロンドン大学(UCL)の清掃労働者が労働条件の改善を要求してスト。12月4日、再度ピケ
12月2日 鉄道海運労組(RMT)が南西鉄道の1人乗務導入に反対しストに突入。1月1日から年頭波状スト
12月6〜19日 北アイルランドで看護師がスト
2020年2月20日 大学職員数千人が賃金・年金問題で14日間のストに突入
2月21日 ロンドン地下鉄労働者が労働強化に反対して24時間スト