五輪中止! 命を守ろう 見せかけの「復興」はいらない

週刊『前進』02頁(3115号02面01)(2020/03/12)


五輪中止! 命を守ろう
 見せかけの「復興」はいらない

(写真 2016年、ブラジル・リオデジャネイロでは五輪反対の闘いが激発。警察官と消防士は賃金未払いや社会の崩壊に抗議し、空港で「地獄へようこそ」の横断幕を掲げた)

 見せかけの「復興」のために被災地の人々に被曝を強制する安倍は、新型コロナウイルスの感染拡大への破産しきった対応によって労働者民衆の命を危険にさらしている。さらには「有事」「国難」をあおって改憲攻撃を加速させようとしている。「オリンピックやってる場合か!」という叫びと怒りは、全国・全世界に広がっている。今必要なのは労働者の闘いだ。オリンピックを直ちに中止させ、命を守ろう。

「復興五輪」演出で延命図る安倍

 医療体制の崩壊、労働者の生活破壊——。政府は労働者民衆の命も生活も守らない。新型コロナウイルス問題は、私たちが生きる社会がすでに崩壊しつつあるという現実を暴き出した。
 オリンピックを利用した「挙国一致」「復興」ムードで全国を染め上げるという思惑は吹き飛ばされつつあるが、安倍は自らの延命をかけて、あくまで予定通りの開催を強行しようとしている。
 プログラムのすべてが、福島の「復興」を演出し、原発事故を「終わったこと」にするために組まれたものだ。3月26日に始まる聖火リレーの出発地は、原発事故後に対応拠点となり、「復興のシンボル」と位置づけられたJヴィレッジだ。福島第一原発からは20㌔メートル。リレーは放射能の高汚染区域を通る。原発から60㌔メートルに位置する福島市のあづま球場では、開会式に先駆けて7月22、23日にソフトボールの予選が、そして29日には野球の予選が行われる。
 3月14日に狙われているJR常磐線全線開通は「復興」演出の大きな柱だ。福島県双葉町では3月4日に帰還困難区域など一部区域の避難指示が解除され、駅前が聖火リレーのルートに組み込まれた。聖火は常磐線の臨時列車で双葉駅まで運ばれる計画だという。
 ルート周辺に山と積まれていたフレコンバッグはすべて大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設へと運ばれた。福島第一原発がある大熊町では、事故前の1%余りの約150人しか住民が戻らない中で、東京電力や原発関連企業の社員を動員してリレー沿道の「にぎわい」を演出するという。これが政府の言う「復興」の内実だ。
 2月25日付朝日新聞では、「駅の周りだけ急いで避難指示を解除しても人なんて戻ってこない」「(オリンピックについて)きれいな地点を切り取っている」という被災地の怒りの声が紹介されている。

今も脅かされる住民の命と生活

 政府はオリンピック招致決定後に「福島復興加速化指針」を決め「2020年度までの復興」を掲げた。
 しかし、福島の人々の命と生活は現在も脅かされている。事故は収束などしていない。原子炉内から溶け落ちた核燃料の場所さえ分からず、放射能は子どもたちを始め人々の健康をむしばんでいる。
 被災地の人々は、放射能と闘いながら必死で生活を立て直そうとしている。しかし、古里に帰りたくても帰ることができない人々は4万人以上に上る。その苦しみに寄り添うどころか踏みにじり、政治的な思惑から帰還を強制し、命を脅かしているのが安倍だ。避難者は賠償や住宅提供を打ち切られ、立ち退き訴訟の被告にされようとしている。
 この間、被爆者団体がニューヨークの国連本部で開催する予定の「原爆展」に外務省が介入し、福島第一原発事故の概要を伝えるパネルを変更しなければ後援を取り消すと恫喝していることが明らかになった。
 また、オリンピック・パラリンピックの期間中、ビキニ事件で被爆した漁船・第五福竜丸の展示館(東京・夢の島)が休館になることも決まっている。

全世界の仲間と心一つに闘おう

 核と原発がもたらしてきた惨事を直視することなく原発を再稼働させ、核武装に突き進む安倍を許してはならない。被災者の現実や放射能の危険から目をそらせようとする日本政府に対し、全世界で怒りの声が上がっている。「東京2020―放射能オリンピック」キャンペーンを展開する核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部の医師たちは「オリンピックは被災地に『平常』が戻ったかのように見せようとする試みだ」と弾劾している。
 IPPNWドイツ支部は19年11月、ドイツの反原発市民団体とともに国際的な署名運動を開始した。日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)に対し、福島市での競技中止、福島県の放射能汚染地域での聖火リレー中止を要求するものだ。集まった署名は2月、ドイツとスイスの医師らによってスイスのIOC本部に提出された。この3月には日本政府に直接手渡される予定だ。
 オリンピックはいらない! すべての原発を今すぐなくせ! 全世界の仲間と心を一つに闘い、東京五輪を中止させよう。
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