「送還忌避罪」を許すな 難民認めず刑事罰で追放狙う

発行日:

週刊『前進』04頁(3114号04面01)(2020/03/09)


「送還忌避罪」を許すな
 難民認めず刑事罰で追放狙う

(写真 東京入管前で被収容者を激励【2月29日 東京・港区】)

 安倍政権は東京オリンピックを前にむき出しの在日・滞日外国人弾圧に躍起となっている。入管施設では期限のない長期収容が常態化している。被収容者の命がけのハンガーストライキに対し、人権を配慮するどころか、逆に刑事罰強化=「送還忌避罪」導入へ入管法改悪を狙っている。差別・排外主義による分断を許さず、外国人労働者と団結し、改憲・戦争の安倍政権と闘おう。

難民はともに闘う仲間だ

 昨年10月、法務省は法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」の下に、「送還忌避者の増加や収容の長期化を防止する方策やその間の収容の在り方を検討することは喫緊の課題」として「収容・送還に関する専門部会」(委員には弁護士も参加しているが、大半は検察や入管OB、御用学者ら)を設置した。すでに2月17日まで7回の会合が開かれ、3月に意見書をまとめ、提言を行うといわれている。
 この専門部会の議論の中で、仮放免者を含む難民申請者を「退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、自らの意思に基づき、法律上又は事実上の作為・不作為により日本からの退去を拒んでいる外国人」=「送還忌避者」と断定し、「濫用・誤用的な難民認定申請を行い送還を回避している」として、難民申請制度の厳格な運用で難民認定を限りなくゼロにし、新たに「送還忌避罪」を設けて送還を拒否する場合は刑事罰を科すという方案を示した。
 しかし、法務省がいう「送還忌避者」の約7割が難民認定申請を行ったことがあり、迫害の恐れがあるからこそ帰国できない人々だ。1951年の「難民の地位に関する条約」では、難民は「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた」人々と定義されている。
 2018年の日本の難民認定数は1万6596人中42人、認定率は約0・25%に過ぎない。欧米諸国に比べても極端に少ない。
 専門部会が打ち出した「送還忌避罪」は難民であることそれ自身を罰とするものであり、「難民認定申請を複数回行っている者」を送還対象にするというとんでもない内容だ。狙っているのは、仮放免者を含む難民申請者全員を退去強制処分にするということだ。難民申請者はともに闘う仲間だ。「送還忌避罪」を絶対に許してはならない。

「特定技能」就労者は520人

 昨年4月、安倍政権は非正規職だけの社会づくりのための「働き方改革」の一環として「新たな外国人材受け入れ」のための就労資格の新設(特定技能1号・2号)と、出入国在留管理庁新設を強行した。
 安倍政権にとって深刻なのは、今後5年間で145万人ともいわれる労働力の不足だ。日米争闘戦・国際的な争闘戦の中で日本帝国主義が生き延びることができないという深刻な危機感だ。自らが推し進めた新自由主義攻撃の破産と崩壊に締め上げられている。
 「特定技能」は、労働力不足が著しい介護、外食、建設など14業種への単純労働力の受け入れであり移民政策への転換そのものだ。
 昨年10月末現在、日本で在留資格を持って働いている外国人は過去最高の165万8804人となったが、「特定技能」で働いている外国人はわずか520人。「現代の徴用工」と弾劾されている外国人技能実習制度を見直しもせずに強行した結果である。
 日本の入管攻撃は、徹底的な治安管理・弾圧であり、搾取と収奪、差別と分断だ。それは地域で民族としての誇りをもって生きることを奪うのみならず、一切の階級的なものを一掃し、人間として生きることさえ許さない攻撃だ。
 それは逆に、いかに日帝支配階級が、日本の労働者階級人民と在日・滞日外国人民が結合することに恐怖しているかを示している。

団結し東西入管集会へ

 入管収容所・施設での現実は、「治安維持法よりもひどい人権侵害」(児玉晃一弁護士、19年12月東京新聞)というものだ。
 2年、3年をはるかに超える無期限の長期収容、「制圧」と称した暴力的な弾圧、劣悪な環境と医療放置……。これらに対する抗議と仮放免を求めて、死をも覚悟したハンガーストライキに対し、仮放免を認めたもののわずか2週間後には再収容し、絶望の淵に追い込んでいる。昨年6月、大村入管収容所でナイジェリア人を飢餓死させたにもかかわらず、「対応は問題ない」と正当化している。
 安倍政権は、「拉致(らち)問題」などを口実に、朝鮮学校を高校無償化から排除し、さらに幼保無償化からも各種学校であるとの理由で朝鮮幼稚園や外国人学校の付属幼稚園を排除した。この攻撃と一つになった在特会ら極右勢力による川崎をはじめ全国でのヘイト攻撃は、民族抹殺攻撃以外の何ものでもない。
 こうした攻撃に対し、在日・滞日外国人労働者が「生きさせろ!」と根底的な決起を開始している。
 入管収容所に収容されている在日外国人労働者は、収容所の中から人間としての怒りの声を発し、家族や地域の仲間とともに安倍を弾劾している。こうした決起に応える運動が各地で広がっている。青年・学生たちが、真実を見極めようと入管施設で被収容者に直接面会し、入管収容所包囲行動に取り組んでいる。
 朝鮮学校の卒業生たちは、自らが原告となり「後輩に悔しい思いをさせたくない」と各地で民族学校を守る裁判闘争を闘っている。朝鮮学校無償化を求める街宣行動では、朝鮮学校生徒の呼びかけに応えて多くの日本人高校生が署名に協力している。
 昨年は、関西や川崎において在日朝鮮人を軸とする地域での連帯行動などの取り組みが広がり、これらの動きが、改憲・戦争阻止!大行進運動と結合し、豊かな連帯の輪に発展している。
 今年はさらに在日・滞日外国人労働者との共同闘争を発展させよう。地域労組拠点・合同労組建設を軸に大行進運動を強化しよう。「改憲・戦争阻止!」の闘いで安倍を打倒しよう。
 「送還忌避罪」導入を狙う入管法改悪を阻止しよう。実行委員会が呼びかける4月東西入管集会に外国人労働者と共に集まろう。
このエントリーをはてなブックマークに追加