命を守る労働者の闘いを 「コロナ休校」に怒り拡大 仕事奪い医療崩壊を加速
命を守る労働者の闘いを
「コロナ休校」に怒り拡大
仕事奪い医療崩壊を加速
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済危機、政権支持率の急落、さらには「東京オリンピック中止」まで叫ばれる状況に追い詰められた安倍は2月27日、全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みに入るまで臨時休校にするよう独断で「要請」する暴挙に出た。子どもを持つ共働きの労働者の多くは仕事を休まざるを得なくなり、貧困家庭は学校給食がなくなることでさらなる困窮に襲われるなど、その影響は計り知れない。2月27日から臨時休校措置をとっている北海道では、十勝地方で唯一の感染症指定病院の帯広厚生病院(帯広市)で、子どもを持つ看護師ら170人が出勤できず、外来患者の受け入れ縮小や一部患者の診療休止を余儀なくされている。安倍の「要請」は深刻な医療崩壊を一層加速させるものだ。
さらに安倍は28日、2013年の新型インフルエンザ特措法を参考に法整備をめざす考えを示した。新型インフル特措法は、首相が「緊急事態」を宣言すれば集会の中止命令や物資の強制買い上げも可能になると規定している。自民党が憲法への導入を狙う「緊急事態条項」を、今回の新型コロナウイルスに対する特措法という形で先取りしようとするものだ。
自民党総務会長・鈴木俊一は26日の講演で「予定通り東京五輪を行うことができなければ、すぐ政治責任が持ち上がる」と危機感をあらわにしたが、安倍などが第一に考えているのは人々の命や生活を守ることではなく、五輪開催と自分たちの政権の維持、そしてその先に改憲をやろうということでしかない。突然の「臨時休校要請」もそのための醜悪なあがきだ。そもそも「子どもの感染例は中国でも非常に少ない。学校の一斉閉鎖はあまり意味がない」「子どもが流行の大きな原因になることは少ないことがわかっている」と政府専門家会議のメンバーすら指摘していたのだ。
韓国では29日時点で全国570カ所、1日1万2000件の検査が行われているが、日本政府は東京五輪への影響を恐れていまだに1日900件程度しか検査していない。休業・失業補償などの措置が講じられるか否かは労働者の闘い次第だ。合同・一般労組全国協は全国でコロナウイルス関連の労働相談や街頭宣伝に取り組み、反響が寄せられている。労働組合の闘いで命と生活を守り抜こう。
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医療労働者は訴える
安倍こそ感染拡大の元凶
岡山大学医学部職員組合 矢田 範夫
改憲・緊急事態条項新設のテコ
新型コロナウイルスによる感染者・患者が多発し、死亡例まで出ている。事態の終息に向けた見通しが立たない中で、人々の不安は極点に達している。
政府とその意を受けたマスコミは連日恐怖をあおり、全国各地でイベントの中止や施設の閉鎖が始まった。そして安倍政権は全国のすべての小中高校を3月2日から事実上1カ月以上休校にするよう指示するなど、大混乱の中にある。ウイルスショックによる連日の世界的株安が大恐慌への引き金になりかねないことに震え上がった安倍は、かつての学校でのインフルエンザワクチン接種と同じ「集団免疫」、つまり学校での感染を防いでその親など労働者世代での流行を抑える考え方そのままに、前日の「政府基本方針」にすら盛り込まれていない一斉休校の指示を、混乱を百も承知で大慌てで打ち出した。「子どもたちを守る」などというのは単なる言い訳に過ぎない。
この事態を生み出した一切の責任は、「命よりカネ」の新自由主義的医療再編、医療の民営化・営利化と、「感染症対策」を口実に改憲・緊急事態条項新設に突き進む安倍政権にある。
マスコミは新型コロナウイルスを特に危険な病原体であるかのように大宣伝するが、実はコロナウイルス自体は発熱やせき、くしゃみ、のどの痛みなどを引き起こす風邪症候群の原因となる病原体である。同じコロナウイルス感染症の中には、2002〜03年、2012年にそれぞれ流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)のように重篤な病気を引き起こしたものもあるが、いわゆる普通の風邪でも高齢者などは重症化して肺炎を発症し、死に至るケースがあることと本質的な違いはない。一般に「新型」が流行しやすいのは、ほとんどの人がまだ免疫を持っていないからである。
したがってまず何よりもしなければならなかったのは、高齢者や基礎疾患をもつ人々への感染を予防し、感染しても重症化を防ぐために早期の検査・診断と治療の体制の構築であった。排外主義丸出しで中国からの入国を制限したり、4千人もの人々を清潔エリアと感染エリアの区別もされていないクルーズ船に2週間も強制隔離して、感染の機会を爆発的に拡大するやり方や、高熱があっても厚労省が定めた条件に合致しないとウイルス検査をせず、病院を受診することすら禁止するやり方では絶対になかった。
支配階級は新型コロナウイルスに限らず感染症の問題を一貫して治安問題として位置付けており、今回の事態を改憲・緊急事態条項新設と、そのためのオリンピック強行のテコにしようとしている。だからこそ、意図的に検査も受診も制限したのだ。
治安維持のための「感染症対策」
現在の感染症法は1999年4月に施行された。それまでの伝染病予防法、結核予防法、エイズ予防法は感染症法に統合された。だが感染症対策の基本的考え方が治安問題にあることは、旧伝染病予防法の時代と変わっていない。
1897年に制定された伝染病予防法の目的は、感染症から国民の健康を守ることではなく、病気への恐怖が社会不安を呼び起こし、当時のヨーロッパでの労働者階級の決起と連動して革命の大波が押し寄せてくることに恐怖した支配階級による徹底した治安弾圧にあった。感染症対策は内務省衛生局と府県の警察部が管轄し、強制隔離・強制入院、患者宅への交通路の強制遮断などむき出しの国家暴力が発動された。伝染病予防法が感染症法へと変わっても、その発想が何も変わっていないことは、クルーズ船での「検疫」という名の強制隔離がはっきりと示している。
不安を訴える人々の声に対して、政府・厚労省は2月25日に打ち出した「基本方針」でも、むやみに病院にかかるなと言い放っている。家から外に出るな、仕事は休めと言いながら、一方で経営者には休業補償の必要はないというのだ。だが検査の体制がないという政府発表は大ウソである。ウイルスを物理的に封じ込める設備があり、遺伝子を増幅して配列を調べるPCRをするためのサーマルサイクラーと呼ばれる機器がある所なら、私が働く研究室でもどこでも、4〜5時間もあれば可能だ。
ところが検査を広く行うことによって感染が爆発的に拡大している事実が明らかになり、「東京オリンピックなどやってる場合か」という声がますます大きくなることを避けるために、検査をせずに放置し感染が拡大するに任せた。そして国産の検査キット開発に投資するために海外では広く使われている検査キットの導入を意図的に見送った事実さえ明らかになっている。
医療崩壊に団結して立ち向かう
不安なのに診てもらいたくても診てもらえない現実。これこそ新自由主義の医療破壊によって地域の病院が統廃合され、残った病院も地域医療構想のもとに急性期型や長期療養型といった機能分化が進み、医療の崩壊と地域の崩壊が進んできた姿と一体である。
岡山大学病院を中心に県内の医療機関・介護施設全体を再編し統廃合するメディカルセンター構想は、私たち学内・院内と地域が一つになった闘いでいったん粉砕した。だが医療破壊・社会保障破壊に体制の延命をかける支配階級は、全国424もの公立病院を名指しで統廃合せよと迫る攻撃に出ている。改憲・戦争のために、またこれと一体で医療をカネもうけの道具に変えていくために、人々の命を紙切れ同様にもてあそび危険にさらすブルジョアジーどもとその政府----だがこんな社会はもう終わっている。こんな腐りきった社会は、今すぐにひっくり返さなければならない。団結の中でこそ命を守ることができる。医療職場で働く労働者はその先頭に立ち、団結して命を守るための闘いに立ち上がる。
(2月28日)