国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状 JR四国 運転士不足で列車削減 在来線の分社化が経営陣の狙い

週刊『前進』04頁(3112号02面01)(2020/03/02)


国鉄分割・民営化の破産
 JR各社の現状
 JR四国 運転士不足で列車削減
 在来線の分社化が経営陣の狙い


 JR四国は3月14日のダイヤ改定で、22本の列車運転を取りやめる。過去最大の削減で、運転士がいないことがその理由だ。経営陣は経営難を理由に賃上げに応じず、列車をワンマン化し、車掌の業務を契約社員に行わせることまでした。それがもたらした運転士養成の破綻が、こうした事態を生み出したのだ。

経費削減でトイレも閉鎖

 JR四国の職員数は国鉄時代の半分の2300人。特に国鉄分割・民営化直後の採用停止が、今になって危機の源となっている。2020年代の鉄道業務の中心に立つべき世代がゼロなのだ。
 現場には「職場は定年退職後の再雇用組と高校を出たての若い衆だけ」「こうなるのは10年前からわかっていたこと。人事の責任だ」という怒りがある。
 2019年4月15日、特急うずしおが、車輪検査用の重さ1㌔の鉄板を床下に置き忘れたままの状態で走行し、異音を発する事態が起きた。まさに大事故寸前だった。道具の置き忘れによる事故は、職場の人員不足と強労働が限界を超えている証拠だ。
 鉄道高架や駅舎でのコンクリート片の剥落(はくらく)も相次いでいる。
 経営陣だけでなく、「国鉄時代の労使対立には絶対に戻させない」としてJR四国労組の幹部が、人員削減を認め妥結してきた責任も大きい。
 JR四国はまた、無人駅のトイレ48カ所の閉鎖を始めた。「管理のための人件費の削減」が理由だ。地元紙には「待ち時間にトイレに行きたくなる時もある」という女子高校生の声や、「不採算路線の廃止に向けた布石ではないか」という近隣住民の声が報じられた。国鉄闘争全国運動の街頭署名では「駅のトイレ廃止は困るとJRに言ったら、それは市役所に相談してくれと返された」との声も寄せられた。

赤字のツケ自治体に転嫁

 JR四国の2018年度の連結営業損益は、史上最高の114億円の赤字になった。瀬戸大橋線以外の全路線が赤字だ。経営安定基金2082億円の運用収益も減少する一方だ。
 この危機をめぐり、JR四国社長、四国4県知事、国土交通省らは「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会Ⅱ」を5回開いた。そこでは、「経営安定基金の運用益で損失を補填(ほてん)する現在の国鉄改革のスキーム(枠組み)は機能しなくなっている」(愛媛県)との発言も出た。
 JR四国は、四国新幹線を造ってJRは新幹線だけを経営し、在来線は選別した上で、存続させることになる路線は子会社化して、各県に押し付けることを狙っている。
 地元財界も、四国新幹線は採算がとれないことを承知の上で、数兆円の公共投資に浮足立っている。
 JR四国は、赤字を理由に駅の改修を放置し、地元自治体にその予算を支出させてきた。そのやり方は常態化している。しかも、「鉄道の特別基準」や「今までの鉄道工事の実績」を持ち出して、自治体予算による鉄道施設の工事のほとんどをJR四国の子会社が独占して請け負っている。
 財政危機を宣言した徳島市は、現業部門を削減し、敬老祝い金を減額し、会議でのお茶も廃止した。他方でJR四国に対しては、一番地価の高い徳島駅周辺の設備にかかる固定資産税を大幅に減免している。本来、地域の病院や高齢者福祉、学校の整備に充てられるべき自治体予算が、JR四国に吸いとられている。
 国鉄分割・民営化は地方を崩壊させる一方で、金融資本と富裕層を肥え太らせた。2018年度のJR北海道とJR四国の連結営業損益の赤字は合計532億円。他方、本州JR3社の連結営業利益は合計1兆2985億円だ。本州3社の収益で北海道と四国の赤字分は十分に補える。
 しかし、本州JR3社の巨額の黒字は、主要株主の3大メガバンクや日本生命、第一生命などに配当されてきた。

転籍許さない闘う団結を

 JR四国の労働者2300人の職場と鉄道の安全を守るためには、動労千葉のような闘う労働組合を復活させることが必要だ。
 JR四国では、出先の現業機関が閉鎖され、遠距離を移動しなければ行き着けない現場が増えた。そのためベテラン世代は、体に無理を強いながら、少ない人手での夜勤を担っている。その中で青年層を育成し、安全確保に日々尽力している。若い世代は、ベテランが退職するまでのあと数年で技術を引き継げるのかという葛藤の中で、業務に追われている。
 技術継承ができないまま在来線が4県に分社化されれば、安全は一層解体される。在来線の分社化は、労働者にJRからの転籍や選別・再雇用を強いる。これに団結して反対しよう。
 「国鉄の分割・民営化は悪だ」は地域全体の声でもある。地方自治体の給食、清掃などの現業部門の丸ごと民営化は、JRをモデルにしたものだ。会計年度任用職員制度は、地方自治の根幹まで揺るがす。
 国鉄1047名解雇撤回へ闘う動労千葉―動労総連合とともに、国鉄闘争全国運動に取り組み、JR職場から闘う団結・闘う労組を取り戻そう。
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