介護保険改定に反対 高齢者からこれ以上むしり取るな 介護費自己負担増、医療費2割の「ダブルパンチ」

週刊『前進』04頁(3108号02面02)(2020/02/17)


介護保険改定に反対
 高齢者からこれ以上むしり取るな
 介護費自己負担増、医療費2割の「ダブルパンチ」


 3年ごとに行われる介護保険制度改定が、今通常国会に関連法案として提出されようとしている。介護保険制度発足から20年となる今回の改定は、年金収入しかない高齢者の預貯金から情け容赦なくむしり取るものであり、同時に一定所得以上の後期高齢者(75歳以上)の医療費負担2割以上への引き上げとのダブルパンチで、文字通り命を奪う大改悪だ。

介護施設の食費が月2・2万円増に

 昨年12月27日に行われた社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会で、介護施設等の食費の「補足給付」が見直された。補足給付とは、2005年の改定時に施設の食費・居住費が自己負担にされた際に、低所得者が施設を利用するときの負担分を介護保険から補填(ほてん)するというものだ。
 今回、市町村税非課税の低所得者層を細分化し、年金月額10万(年120万)円超の高齢者の食費の自己負担限度額を月2万2000円増やす(表)。ショートステイ利用者も、所得に応じて負担限度額が1日210円ないし350円上げられる。年金しか収入がない高齢者の命綱である預貯金を取り崩して食費・居住費を払え、急な病気や入院に備えての必要なお金すらも手元に残すなという許しがたいものだ。

高齢者の預貯金を吐き出せと迫る国

 今回の改定では、補足給付の資産要件ラインも見直された。これまで単身者で預貯金1千万円(夫婦世帯で2千万円)以下が補足給付の対象だったが、今後はそれ以下の所得でも段階的に給付が引き下げられる。
 さらに、高額介護サービス費も見直しされた。これまで「現役並み所得」(年収383万円以上)者の自己負担上限額は月4万4400円だったのが、3段階に細分化され、9万3000〜14万100円に上がる。審議会は「医療保険での限度額にそろえる」というが、介護が必要な人は医療保険も利用しており、ダブルでの負担増だ。
 高齢者全体の中で一定の所得があるとしても、一人暮らし、老老介護、引きこもりの子どもの扶養など、それぞれ切実な事情を抱えており、「負担能力」があるとは限らない。これ以上の負担増はもはや限界だ。
 「老後に年金収入以外に2千万円必要」という麻生金融相の暴言は、生活費を削ってためた高齢者の預貯金からもどしどし奪うという安倍政権の本音だ。

死ぬまで働かせる「勤労者皆保険」に

 今回の介護保険制度改定は「2割・3割負担者の拡大」「ケアプラン作成の有料化」など当初検討された案が見送られたことで、「小幅の改定に収まった」との報道もあるがそうではない。安倍政権は、一方で昨年12月19日に出された全世代型社会保障検討会議の中間報告で、一定所得以上の75歳以上の医療費の自己負担を2割に引き上げると打ち出しており、実質的に医療・介護とも負担増のダブルパンチだ。
 安倍政権と財界は、社会保障の全領域を解体しようとしている。全世代型社会保障検討会議の中間報告は、「働き方の変化を中心に据えて、年金、医療、介護、社会保障全般にわたる改革を進める」と言っている。この意味は重大だ。戦後的な社会保障を完全に解体し、高齢者も障害者も死ぬまで働かせる「勤労者皆保険制度」に変えるということだ。保険料を払えない人は給付を受けられず、自己負担額は需給に応じた市場価格になる新自由主義が百%貫徹される社会にする——これが「全世代型社会保障改革」だ。
 そもそも戦後的な社会保障は、憲法25条の「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定のとおり、国の責任において実施しなければならない。安倍政権はこの原則をかなぐり捨て、みな働いて国をあてにせず自己責任で生きていけと言っているのだ。
 介護の民営化=介護保険制度開始から20年。国鉄闘争を軸に、医療・介護・福祉労働者と利用者・高齢者が団結し、生きるための反乱を巻き起こす時がきた。
(黒部敏宏)
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