トランプ一般教書演説を弾劾する 「偉大なアメリカ」連発し労働者階級の闘いに恐怖
週刊『前進』02頁(3107号01面02)(2020/02/13)
トランプ一般教書演説を弾劾する
「偉大なアメリカ」連発し労働者階級の闘いに恐怖
(写真 ニューヨークでの「ウィメンズ・マーチ」に集まった人々。トランプの戦争政策にも怒りの声【1月18日】)
2月4日、アメリカ大統領トランプが米議会で、過去1年間の「国家の状況」を議会に報告し、今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行った。
今年の演説は、「ウクライナ疑惑」をめぐるトランプ自身の弾劾裁判のただ中で行われた。その上で弾劾裁判自体は、野党・民主党が、トランプが「安全保障を危機にさらした」「国益を損ねた」と訴えたもので、労働者階級の怒りとは無縁の茶番でしかない。
こうした中でトランプは11月の大統領選を強く意識し、演説のテーマを「偉大なアメリカの復活」とした。会場はさながら選挙キャンペーン集会のような雰囲気となった。
「社会主義は国を破壊する」と悲鳴
78分間の演説に貫かれたものは、米労働者階級の闘いに対する支配階級の深い恐怖だ。トランプが就任後に行った大型税制改革は、株価を上げ、一握りの資本や投資家を一層もうけさせる一方で、労働者階級にさらなる貧困と劣悪な労働条件を強制してきた。とりわけ子どもの貧困や無保険の現実は深刻だ。高騰する学費、崩壊する医療、見通せない将来——トランプの語る空疎な「アメリカン・ドリーム」など、社会の崩壊を目の当たりにしている労働者、とりわけ青年には全く通用しない。
こうした状況の中、18年以来全米で教育労働者が地域ぐるみのストライキに立ち上がり、19年にはUAW(全米自動車労組)のGM労働者が12年ぶりのストに立った。トランプは、こうしたアメリカ社会全体を揺るがす闘いに大打撃を受け、まともに見据えることもできていない。「社会主義は国を破壊する」というトランプの悲鳴は、民主党のサンダースらに向けられた言葉ではない。社会の根底的変革をかけて資本主義体制を覆そうとする労働者階級の闘いが、支配階級を追い詰めているのだ。
「経済好調」はうそ格差拡大は極限に
トランプは、「経済は過去最長の好調さ」と胸を張り、「ブルーカラー・ブーム(労働者の好況)」という語を使って、労働者の生活状況が大幅に改善していると主張した。さらに、「私の当選以来、700万の新たな雇用を生み出した」「3年間で350万人が新たに仕事に就いた」と強調した。
しかし、米経済の「好況」など全くのペテンだ。現実には極限的な格差の拡大が進行している。所得格差はこの50年で最悪のレベルに達した。経済協力開発機構(OECD)の16年の統計によれば、米国の上位5%の富裕層が保有する資産の割合は68%だ。米主要企業500社のCEO(最高経営責任者)の18年の平均報酬は約1450万㌦(16億円)で、労働者の平均賃金の実に287倍だ。大資本の経営者や幹部の報酬の激増が、リーマン・ショックからの経済「回復」の内実なのだ。
さらにトランプは「公的医療制度がアメリカの医療を破壊する」とし、一層の医療破壊にのめり込む意思を示した。
核軍拡と排外主義に突進
さらに、破産した多くの課題についてトランプは沈黙を守った。とりわけ、昨年の演説で強調した北朝鮮との交渉については全く言及できなかった。その一方で、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害を「成果」として誇り、外交の破産を大軍拡で乗り切ろうとしている。
トランプの演説と同日、米国防総省は、小型核弾頭を搭載したミサイルを海軍の潜水艦に実戦配備したと発表した。翌5日には、空軍が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を行ったことも発表された。トランプは演説で自らの就任以来、国防費に記録的巨額を投じてきたとし、新たに宇宙軍を創設したことも強調。さらに非合法の移民・難民が犯罪を繰り返しているとしてヘイトをあおり立て、国境に強大な壁の建設を進めると述べた。
こうしたトランプとともに自衛隊の中東派兵を強行し、戦争放火者になろうとしているのが安倍だ。
社会を崩壊させながら排外主義をあおり核戦争に踏み出そうとするトランプと対決し、米労働者階級は歴史的な決起を開始している。この闘いと連帯し、日本でも今こそ闘う労働組合をよみがえらせよう。