国鉄分割・民営化の破産 JR各社の現状 JR東海 地域破壊しリニア建設 2027年開業は絶望的に

週刊『前進』04頁(3106号02面02)(2020/02/10)


国鉄分割・民営化の破産
 JR各社の現状
 JR東海 地域破壊しリニア建設
 2027年開業は絶望的に


 JR東海は2027年の品川―名古屋間の開業を目指してリニア中央新幹線の建設を進めている。だが、2027年開業というもくろみは、ほぼ破産しつつある。国策として強行されているリニアの建設は、地域と自然の徹底的な破壊をもたらす。そのことへの地域住民の抵抗が、リニアの前に立ちはだかっている。

大井川の水奪う工事に怒り噴出

 JR東海はリニア新幹線の建設費を品川―名古屋間で5・5兆円、名古屋―大阪間で3・5兆円と見積もっている。さらに、リニアの大阪までの開業を早めるためとして、3兆円もの財政投融資資金がJR東海に融資された。
 安倍政権や資本家たちは、この巨大事業で「東京、名古屋、大阪を包括したスーパー・メガリージョン(超巨大都市圏)が生まれる」とうそぶく。リニアを、帝国主義間争闘戦での日帝の敗勢を覆す切り札にしようとしているのだ。
 それによって犠牲にされるのは、地域の生活と自然環境だ。
 リニアは、地盤が不安定な赤石山脈(南アルプス)をトンネルでぶち抜いて造られる。静岡県は、トンネル工事により大井川の水量が減ることは認められないと主張してJR東海と対立し、静岡県内での工事はいまだに着手できていない。
 JR東海が2013年に作成した環境影響評価書でも、トンネル建設で大井川の流量は毎秒2㌧減少すると書かれていた。これは、深刻な渇水にたびたび苦しんできた大井川流域の住民にとって死活問題だ。
 18年10月、JR東海は地元住民をなだめるため「トンネル内の湧水はすべて大井川に戻す」と表明した。しかし、19年8月になってJR東海は「全量を戻すとは約束していない」「工事期間中はトンネル内の湧水は静岡県外に流れる」と言い出した。にもかかわらずJR東海は「工事期間中も大井川の水量は減らない」「トンネルができれば水量はかえって増える」とでたらめな主張を繰り返した。
 JR東海はあたかも工事が終了しトンネルが完成すれば、湧水を全量、大井川に戻せるかのように言うが、それ自体、何の根拠もない。
 大井川の水量が減れば、それが地下に浸透して流れる地下水も断たれる。大井川の下流域では井戸が枯渇する懸念もある。しかしJR東海は、大井川上流の水と下流部の地下水とは関係がないと根拠もなく唱えている。この態度にも住民は怒りを深めている。
 影響が及ぶのは大井川流域だけではない。リニア全域でトンネル掘削により発生する残土は東京ドーム46杯分になると言われるが、その処理方法も確定していない。計画されている処理方法の中には、地滑りが起こりやすい山間の沢筋に残土を積むという危険極まりないものもある。
 被害は大都市にも及ぶ。東京や名古屋の人口密集地の地下に、トンネルが掘られる。JR東海は、地表から40㍍以上下の「大深度地下」なら地上の生活に影響はないとして、住民に何の補償もせずにトンネル工事を強行しようとしている。

50歳で定昇抑制60歳で賃下げに

 リニア建設は、JR東海とその関連会社の労働者にも矛盾を押し付けている。
 JR東海は今年4月、新人事・賃金制度を実施に移す。それは、定年を65歳に延長するとともに、50歳以降の定期昇給額をわずか400円に抑え、60歳以降は賃金を25%もカットするという内容だ。高齢者を低賃金でこき使うとともに、4月からの「同一労働同一賃金」の実施を見据え、60歳以降の賃金大幅ダウンを「合理的根拠があるもの」として居直ることがその狙いだ。
 名誉会長としてJR東海の実権を握る葛西敬之は、国鉄分割・民営化による労働者の解雇を国鉄職員局次長として主導した人物だ。

葛西による解雇許さず2・16へ

 動労千葉組合員らをJRから排除するために策定された「不採用基準」は、葛西がJR設立委員長の斎藤英四郎(当時、経団連会長)に組合活動家の解雇を進言したことによって作られ、設立委員会で正式決定された。
 2・16国鉄集会は、分割・民営化と国鉄労働者の解雇を許さない集会だ。
 国鉄分割・民営化で地方は破壊された。葛西が強行するリニア建設は、さらに地域を荒廃させる。リニア建設を労働者人民の力で止めよう。
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